山、トレイル、ランニング、キャンプ。アウトドアは誰にでも開かれているように見えますが、すべての人が同じように「ここにいていい」「安心して楽しめる」と感じているとは限りません。アウトドアをより多くの人が楽しめる場所にするために、私たち一人ひとりにできることがあります。
その考え方のひとつが、「アライシップ(Allyship)」です。
アライシップという言葉は、日本では企業や職場におけるDE&I、多様性やインクルージョンの文脈で耳にすることが増えてきました。
しかし、その考え方はオフィスの中だけのものではありません。
同じ山を歩く人。同じトレイルを走る人。同じ岩場を登る人。同じアウトドアコミュニティに参加する人。
自分とは異なる経験を持つ人にも、その場所を楽しめる機会があるか。そう考えることも、アライシップの第一歩です。
SuuntoアスリートでウルトラランナーのRyan Montgomeryは、アウトドアにおける多様性について発信を続けています。この記事では、Ryanの言葉をもとに、アライシップとは何か、そしてアウトドアで私たちに何ができるのかを考えます。

Photo by Brave Trails, taken at Camp Brave Trails.
アライシップとは?
「アライ(Ally)」は、もともと「味方」「協力者」を意味する言葉です。
アライシップとは、自分とは異なる背景や経験を持つ人が直面している課題を知り、その人たちの声や活動を支えるために行動することを指します。
Ryanは、アライシップを一度何かをして終わるものではなく、「学び、行動し、さらに学び、また行動する」という継続的なプロセスとして捉えています。
そして、そのために使えるものは人によって異なります。
- 知識
- 経験
- 時間
- お金
- 発信力
- 人とのつながり
- 道具や場所
大きな影響力を持つ人だけがアライになれるわけではありません。
自分がすでに持っているものを使って、誰かが参加しやすくなるように行動する。
それもアライシップです。

Photo by Latino Outdoors.
なぜアウトドアにもアライシップが必要なのか
自然そのものは、誰かを選んで受け入れたり拒んだりするわけではありません。
しかし、そこへアクセスするまでの環境や、アウトドアコミュニティの中で得られる経験は、人によって異なります。
Ryanは、クィアやLGBTQ+の人々、人種的マイノリティ、障がいのある人などが、アウトドアへ参加するうえでさまざまな壁に直面することがあると指摘しています。
トレイルですれ違った人に「こんにちは」と声をかける。
笑顔を返してもらう。
一人で山へ行っても、その場所で不安を感じない。
多くの人にとっては当たり前に思える体験でも、すべての人にとって同じとは限りません。
外見、肌の色、身体的特徴、性別表現、性的指向、障がいなどを理由に、じろじろ見られたり、不必要なコメントを受けたり、ときには差別的な言動に遭遇したりすることもあります。
「自然が好きなら、誰でも同じように楽しめるはず」と思い込まず、人によって経験が違うことを知る。
そこからアライシップは始まります。

Photo by Brave Trails, taken at Camp Brave Trails.
アウトドアで良いアライになるための4つの行動
「アライシップが大切なのは分かった。でも、実際に何をすればいい?」
Ryanがよく受けるというこの質問に対して、彼は4つの具体的な行動を提案しています。
1. 気づいたことに声を上げる
Speak Up.
問題のある言動を見たり聞いたりしたとき、何も言わずに通り過ぎるのではなく、必要であれば声を上げること。
差別的な発言や誰かを排除するような言動を、その場の「冗談」として終わらせないこともそのひとつです。
もちろん、いつでも大きな議論を始める必要があるわけではありません。
自分が学んだことを友人と話す。
アウトドアにおける多様性についての記事を共有する。
コミュニティの中で「こういう見方もある」と伝える。
小さな声でも、それまで話題になっていなかったことを言葉にすることで、次の会話が始まることがあります。
2. 自分以外の人に「マイクを渡す」
Pass the Microphone.
自分が話すことだけが支援ではありません。
ときには、自分とは異なる経験を持つ人の話を聞き、その声が届く場所を増やす方が重要です。
アウトドアの世界にも、さまざまなアスリート、ガイド、ランナー、登山者、コミュニティリーダーがいます。
いつも同じような人だけが紹介され、同じような人だけがイベントで話しているなら、まだ知られていない人の活動に目を向けてみる。
Ryanはこれを「マイクを渡す」と表現しています。
実際のマイクを持っていなくても構いません。
席をひとつ増やす。誰かを紹介する。発言するスペースを作る。
それも同じ考え方です。
3. 分かったつもりにならず、学び続ける
Learn, Don’t Assume You Know Everything.
Ryanが特に大切だと考えているのが、「学ぶこと」です。
自分とは違う経験について、すべて理解していると思わない。
質問する。
好奇心を持つ。
そして、まず相手の話を聞く。
誰かの経験を理解しようとするとき、自分自身の経験だけを基準にしてしまうと、見えないことがあります。
本を読むこともできます。
当事者が発信している記事やSNSを見ることもできます。
アウトドアコミュニティがどんな活動をしているのか知ることもできます。
Ryanは、自身の学びに役立った資料や発信者として、Carolyn Finneyの『Black Faces, White Spaces』、Robin Wall Kimmererの『Braiding Sweetgrass』、ランナーでエクイティ・アドボケイトのAlison Désirなどを紹介しています。
アライシップに「全部理解した」というゴールはありません。
学んだことによって考えが変わることも、そのプロセスの一部です。
4. コミュニティを支える
Donate to Support Community Groups.
時間や資金に余裕があるなら、アウトドアへのアクセスを広げる活動をしている団体やコミュニティを支援する方法もあります。
Ryanは、若いLGBTQ+の人々にアウトドア体験を提供するBrave Trails、黒人コミュニティと自然とのつながりを広げるOutdoor Afro、ラテン系コミュニティのアウトドア活動を支えるLatino Outdoorsなどを紹介しています。
支援は寄付だけではありません。
イベントに参加する。
活動を知る。
発信をフォローする。
周囲の人へ紹介する。
ボランティアとして時間を使う。
自分にできる形でコミュニティとつながることができます。

Photo by Brave Trails, taken at Camp Brave Trails.
特別な活動をしなくても、できることはある
「アライシップ」と聞くと、社会運動に参加したり、大きな発信をしたりしなければならないように感じる人もいるかもしれません。
しかし、Ryanが伝えているのはもっと日常的なことです。
例えば、アウトドアの場でもこんな行動が考えられます。
- 初めて参加した人が一人になっていたら声をかける
- コミュニティ内で差別的な発言があれば、そのままにしない
- 自分と違う背景を持つアウトドア愛好家の話を聞く
- イベントを企画するとき、誰が参加しやすく、誰が参加しにくいかを考える
- 自分が知らないことについて、決めつける前に尋ねる
- さまざまな人がアウトドアを楽しんでいる姿を紹介する
どれも、小さなことに見えるかもしれません。
しかし、アウトドアコミュニティは、そこにいる一人ひとりによって作られています。
誰かが「ここなら参加しても大丈夫」と感じられるかどうかは、設備やルールだけでなく、その場にいる人の言葉や態度によっても変わります。
誰もがアウトドアを楽しめる場所へ
Ryanは自然界そのものを例に挙げ、多様性が生態系を豊かにすると話しています。
アウトドアコミュニティも同じかもしれません。
山を速く走る人。
ゆっくり歩く人。
初めてキャンプをする人。
何十年も山に通っている人。
異なる文化や背景、経験を持つ人。
アウトドアを楽しむ理由も、そこで感じることも、人それぞれです。
だからこそ、誰か一人の経験を「アウトドアとはこういうもの」と決めつける必要はありません。
自分が楽しんでいるこの場所を、ほかの人も楽しめる場所にするために何ができるだろう。
声を上げること。
場所を譲ること。
話を聞くこと。
学び続けること。
誰かの活動を支えること。
その一つひとつが、アウトドアをより開かれた場所にしていきます。
アライシップは、誰かの代わりに話すことではありません。
同じ場所を楽しむ仲間として、必要なときに隣に立ち、声が届くように支えること。
アウトドアを愛する私たち一人ひとりに、できることがあります。
By Ryan Montgomery
Lead images by Latino Outdoors. Additional images courtesy of Brave Trails and Latino Outdoors.