「バックヤードウルトラ」とは、1時間ごとに約6.7kmを走り、最後の1人になるまで同じ形式を繰り返すウルトラランニングです。決められたゴール距離はなく、走り続けられる限りレースも終わりません。
では、いつまで続くか分からないレースで、選手はどのようにペース、補給、睡眠を管理するのでしょうか。この記事では基本ルールを整理し、2025年に95周・約637kmの女子世界記録を達成したSuuntoアンバサダー、サラ・ペリーの実例から、長時間走り続けるための戦略を紹介します。

バックヤードウルトラとは?

バックヤードウルトラは、1周4.1667マイル(約6.706km)のコースを1時間以内に走り、毎正時に次の周回をスタートするレースです。制限時間内に戻れなかった選手や、次のスタート地点に立てなかった選手は競技終了。最後に1人だけ残り、その選手がさらに1周を完走すると勝者になります。
1周を40分で走れば、次のスタートまで約20分。55分かかれば休めるのは約5分です。速く走るほど休憩時間は増えますが、その分だけ脚を消耗します。遅すぎれば、補給、着替え、トイレ、睡眠に使える時間がなくなるため、自分に合った一定のペースを刻むことが重要です。
「yard(ヤード)」とは:バックヤードウルトラでは、距離の単位ではなく「完走した1周」を指します。サラの95 yardsは95ヤード(約87m)ではなく、約6.7kmを95周したという意味です。
サラ・ペリーが達成した95周・637km
バックヤードウルトラの戦い方を具体的に知る事例が、サラ・ペリーの女子世界記録です。英国カンブリア出身のサラは、数学教師として働きながら、山岳救助のボランティアにも参加するウルトラランナー。Big Dog's Backyard Ultraへの挑戦は、彼女にとって6回目でした。
95周という記録は、フルマラソン約15回分に相当する約637km。競技は4日近く続きました。暑さ、吐き気、腸脛靱帯周辺の痛み、背中のトラブルなど、長時間レースならではの問題に直面しながらも、それぞれをひとつずつ対処して周回を重ねました。
従来の女子世界記録を更新したあとも、サラは100周を目標に走り続けました。最終的には背中の問題で競技を終えましたが、女子世界記録を8周伸ばす95周に到達しました。
鍵は「今の1周」に集中すること
サラが重視したのは、残りの時間や最終距離を考え続けるのではなく、目の前の1周だけに集中することでした。95時間先を想像すれば、どれほど経験のあるランナーでも圧倒されます。「いま走っている周回を終える」「小さな問題を処理する」という短い単位へ意識を戻すことで、精神的な負担を抑えられます。
バックヤードウルトラでは、最速ラップを競う必要はありません。サラの最速ラップは39分53秒、平均ラップは51分13秒でした。平均すると各周回の合間に約9分を確保し、補給や休息へ使っていたことになります。
数分の睡眠を積み重ねる
競技が数日間に及ぶと、睡眠戦略もパフォーマンスを左右します。サラは夜間の周回を終えるたび、食事や水分補給などを済ませ、残ったわずかな時間で眠りました。1回あたり数分でも、周回ごとに休息を積み重ねることが助けになったと振り返っています。
短時間で必要なことを終えるには、クルーとの連携も欠かせません。食べ物、飲み物、着替え、防寒、シューズ、ライトなどをあらかじめ整理し、戻ってから次のスタートまでの動きを簡潔にする必要があります。
Suuntoで周回と残り時間を管理
レース中、サラはSuunto Vertical 2とSuuntoPlusスポーツアプリ「Backyard Ultra」を使用しました。このスポーツアプリでは、現在の周回状況や、次のスタートまでに残された時間をウォッチ上で確認できます。
バックヤードウルトラでは、総距離の大きさよりも「この周回を時間内に終えられるか」「次のスタートまで何分あるか」が重要です。必要な情報を手元ですぐ確認できれば、ペースを上げすぎたり、休憩終了のタイミングを逃したりするリスクを減らせます。
スポーツアプリをウォッチへ追加する手順は、「SuuntoPlusスポーツアプリの追加方法とおすすめ機能」で解説しています。利用できるアプリや機能はモデルとソフトウェアバージョンによって異なるため、事前にSuuntoアプリで対応状況を確認してください。

記録を数字で見る
| 完走周回数 | 95周(女子世界記録) |
|---|---|
| 総距離 | 約637km(395.8マイル) |
| 競技時間 | 95時間 |
| 実走時間 | 81時間7分8秒 |
| 最速ラップ | 39分53秒 |
| 平均ラップ | 51分13秒 |
| 歩数 | 822,107歩 |
| 使用ウォッチ | Suunto Vertical 2 |
| 終了時のバッテリー残量 | 13% |
記録は2025年Big Dog's Backyard Ultra終了時のデータです。
まとめ
バックヤードウルトラは、約6.7kmを1時間以内に走るというシンプルな形式のなかで、走力、ペース配分、補給、睡眠、トラブル対応のすべてが試される競技です。速さだけを追うのではなく、次のスタートまでに回復できる余裕を残すことが重要になります。
サラ・ペリーの95周は、これらの判断を95時間にわたって積み重ねた実例です。どれほど長い挑戦でも、実際に進められるのは目の前の一歩、ひとつの周回だけ。その考え方は、ウルトラランニングだけでなく、長期的なトレーニングや自分自身の目標へ向き合う際にも役立ちます。