ランニングやクロスカントリースキーなど、パワーメーターを使わないスポーツでは、トレーニング負荷をどのように比較すればよいのでしょうか。その一つの方法が、心拍数をもとに負荷を推定する「hrTSS」です。
hrTSSは、運動時間だけでなく、自分の閾値心拍数に対してどの程度の強度で動いたかを考慮します。ただし、心拍数は暑さや脱水、疲労などにも左右されるため、数値を正しく読むには特徴と限界を知ることが大切です。
この記事では、hrTSSの意味、TSSとの違い、設定時のポイント、向いているトレーニングと注意点を解説します。

hrTSSとは?
hrTSSは「Heart Rate Training Stress Score」の略で、運動中の心拍数と運動時間からトレーニング負荷を推定する指標です。
単に平均心拍数を見るのではなく、設定した乳酸閾値心拍数や心拍ゾーンに対して、どの強度でどれくらい運動したかを数値化します。そのため、同じ1時間でも、低強度のイージーランと閾値付近で走るテンポ走では異なる負荷として記録されます。
パワーメーターを使わないランニング、トレイルランニング、クロスカントリースキーなどでも利用しやすく、異なる時間・強度のセッションを共通の目安で振り返れることがメリットです。
ただし、hrTSSは疲労そのものを測定する値ではありません。心拍データと個人設定に基づく推定値なので、体調や主観的な疲労感と組み合わせて判断します。
hrTSSとTSSの違い
TSS(Training Stress Score)は、運動時間と相対的な強度を組み合わせて負荷を表す考え方です。パワーベースのTSSでは、主にパワー、FTP、運動時間を使用します。一方、hrTSSは心拍数と閾値心拍数を基準に負荷を推定します。
| 比較項目 | hrTSS | パワーベースのTSS |
|---|---|---|
| 主なデータ | 心拍数、閾値心拍数、運動時間 | パワー、FTP、運動時間 |
| 捉えているもの | 運動に対する身体の反応 | 発揮した出力 |
| 得意な場面 | 一定強度の持久系トレーニング | 出力変化の大きい運動やサイクリング |
| 主な注意点 | 心拍反応の遅れや環境・体調の影響 | 正確なパワー計測とFTP設定が必要 |
どちらが常に優れているというものではありません。利用できるセンサーと競技、トレーニング内容に合わせて選びます。
▶︎TSSの種類やSuuntoアプリでの表示については「Tアプリで確認するトレーニングストレススコア(TSS)」をご覧ください。
正確に記録するための設定
閾値心拍数を実力に合わせる
hrTSSの精度を左右する重要な設定が、乳酸閾値心拍数です。実際より低く設定すると負荷が高めに、実際より高く設定すると低めに推定される可能性があります。
年齢から計算した最大心拍数だけに頼らず、対応するテストや過去の高強度トレーニングのデータを参考に、現在の状態に合った値を設定しましょう。体力が変化した場合は定期的に見直します。
心拍ゾーンを確認する
心拍ゾーンは、回復を目的とした低強度から閾値を超える高強度まで、運動強度を段階的に分ける基準です。ゾーンの境界が実力と合っていないと、同じ運動でも負荷の評価が変わります。
Suuntoウォッチを使う場合は、最大心拍数やゾーン設定を確認し、必要に応じてスポーツ別の心拍ゾーンを調整してください。
安定した心拍データを記録する
手首計測では、ウォッチを手首の骨から少し上に、ずれない程度にしっかり装着します。寒い環境、腕の大きな動き、タトゥー、緩い装着などは計測へ影響する場合があります。
高い精度が必要なインターバルトレーニングや、手首で安定したデータを得にくい競技では、対応する胸部心拍センサーの使用も選択肢です。
hrTSSが向いているトレーニング
イージーランやロングラン
比較的一定の強度を保つランニングでは、心拍数が運動強度へ追従しやすいため、hrTSSを継続的な負荷管理に活用できます。同じコースでも、時間や強度が異なるセッションを比較しやすくなります。
テンポ走や持続走
閾値付近の強度を一定時間維持するトレーニングでは、心拍数が安定した後の負荷を反映しやすくなります。ペースだけでなく、その日の身体がどの程度反応したかも振り返れます。
トレイルランニングやクロスカントリースキー
勾配、雪質、路面状態によって速度が大きく変わるスポーツでは、距離やペースだけで強度を比較するのが難しいことがあります。心拍数を基準にすれば、速度に表れにくい上りや不整地での努力を負荷の目安へ反映できます。
hrTSSが実際の負荷とずれる場面
短いインターバルやダッシュ
運動強度を急に上げても、心拍数が上昇するまでには時間差があります。短いダッシュと休息を繰り返すトレーニングでは、実際には大きな出力を発揮していてもhrTSSが負荷を十分に捉えられない場合があります。
暑さや脱水の影響を受けたとき
気温や湿度が高い環境では、同じペースでも心拍数が徐々に上昇することがあります。脱水、睡眠不足、カフェイン、精神的ストレス、蓄積疲労なども心拍反応を変化させます。
この場合、hrTSSが高くなるのは単なる誤差とは限りません。身体へのストレスが増えている可能性があるため、ペースと心拍数の差、体感、気象条件も合わせて確認しましょう。
筋肉や関節への局所的な負担が大きい運動
下り坂のランニング、筋力トレーニング、技術的なトレイルなどでは、心拍数が高くなくても筋肉や関節へ大きな負担がかかる場合があります。hrTSSだけで回復時間を決めず、筋肉痛や動作時の違和感も確認してください。
トレーニングでの活用方法
単発の数字より同条件での推移を見る
hrTSSは、別の人と数値を競うためではなく、自分のトレーニングを継続的に比較するために使います。似た種類のランニングや同じ期間の週間負荷を比べると、急な増加や減少に気づきやすくなります。
トレーニング日誌に体感も残す
同じhrTSSでも、睡眠、補給、路面、累積疲労によって回復に必要な時間は変わります。「楽だった」「脚が重かった」などの主観的運動強度や体調も記録すると、数値の背景を判断しやすくなります。
長期負荷は専用指標で確認する
hrTSSは1回のセッションや一定期間の負荷を把握する材料です。CTL、ATL、TSBなどを使った長期的な負荷管理は、日々のスコアの積み重なりを別の視点から確認します。
▶︎長期的な負荷管理については「トレーニング負荷とは?フィットネス・疲労・フォームで見る負荷管理の基本」をご覧ください。
Suuntoで心拍数と負荷を記録する
Suunto Runは、日々のランニングで心拍数やペースを記録し、トレーニングの流れを振り返りたい人の選択肢です。
Suunto Race Sは、コンパクトなサイズで、ランニングからサイクリングまで複数のスポーツを記録したい人に適しています。
Suunto Race 2は、大きなAMOLEDディスプレイでトレーニングデータを確認し、レースや長時間の持久系トレーニングへ取り組みたい人の選択肢です。
Suunto Vertical 2は、長時間のアウトドアトレーニングやトレイルランニングなどを記録したい人に適しています。
利用できる負荷指標、SuuntoPlusスポーツアプリ、外部サービス連携、対応センサーは、モデルやソフトウェアのバージョンにより異なる場合があります。各製品ページ、ユーザーガイド、Suuntoアプリで最新の対応状況を確認してください。
よくある質問
hrTSSが高ければ効果の高いトレーニングですか?
必ずしもそうではありません。高い値は大きな負荷を示す目安ですが、目的に合った刺激を与え、十分に回復できることが重要です。スコアを増やすこと自体を目的にしないようにしましょう。
ランニングでは毎回hrTSSを使うべきですか?
一定強度のランニングでは役立ちますが、短いインターバルや筋肉への負担が大きいトレーニングでは、負荷を捉えきれない場合があります。ペース、ランニングパワー、体感なども組み合わせてください。
同じトレーニングなのにhrTSSが違うのはなぜですか?
気温、脱水、睡眠、疲労、ストレスなどにより心拍数が変化するためです。また、閾値心拍数や心拍ゾーンを変更した場合も計算結果へ影響します。運動時間と心拍データだけでなく、当日の条件も確認しましょう。
まとめ|hrTSSは心拍数から負荷を読み解くための目安
hrTSSは、心拍数と閾値心拍数、運動時間をもとにトレーニング負荷を推定します。一定強度のランニングや持久系スポーツを継続的に比較するときに役立つ一方、短い高強度運動、暑さや脱水、筋肉への局所的な負担を完全には捉えられません。
正しい個人設定と安定した心拍計測を基本に、ペース、パワー、主観的な疲労感、睡眠や回復状態と組み合わせて活用しましょう。