SUUNTOブログ
累積標高10,000mを1日で。100kmのアルプス越えから学ぶ登りの持久力
トレイルランニングや登山でよく使われる「累積標高」。100kmで累積標高約10,000mとなると、どれほど過酷なのでしょうか。山岳アスリートのフランソワ・デンヌ(François D'Haene)とフィリップ・ライター(Philipp Reiter)は、アルプスの山岳スキールート「Hoch Tyrol」を、通常約6日かけて進むところを1日で越える挑戦に臨みました。
距離は約100km。累積標高は約10,000m。
ルートには急斜面や露出感のある山岳地帯が続き、オーストリア最高峰のグロースグロックナー(Grossglockner/3,798m)も越えていきます。
しかし、この挑戦から見えてくるのは単なる「体力のすごさ」だけではありません。
長時間登り続けるための持久力、ペース配分、補給、睡眠、そして山岳地帯でのルート判断。
登山やトレランで累積標高の大きいルートに挑む人にも通じる、山を長く動き続けるためのヒントがあります。
目次
累積標高10,000mとはどのくらい?
Hoch Tyrol|通常約6日かかる100kmの山岳ルート
100km・累積標高10,000mを1日で越える
悪天候とホワイトアウトの中でのナビゲーション
想定以上に必要だったエネルギー補給
30歩ごとに止まるほどの疲労
登りの持久力を高めるために学べること
累積標高の大きいルートほど事前計画が重要
まとめ|登る力は「速さ」だけではない
累積標高10,000mとはどのくらい?
登山やトレイルランニングでルートの難易度を考えるとき、距離と並んで重要なのが累積標高です。
累積標高とは、ルートの中で登った標高差を合計したもの。
例えば100m登って50m下り、さらに200m登れば、累積標高は300mになります。
そのため「距離100km」といっても、ほぼ平坦な100kmと、累積標高10,000mを伴う100kmでは負荷がまったく違います。
累積標高10,000mは、単純な数字だけで考えれば富士山の標高差を何度も繰り返し登るような規模です。
しかもHoch Tyrolでは、その登りを標高の高いアルプスで、長い下りやテクニカルな地形を挟みながら繰り返します。
必要なのは最大スピードよりも、長時間にわたって登る力を維持する持久力です。
Hoch Tyrol|通常約6日かかる100kmの山岳ルート
Hoch Tyrolは、南チロルのKasernからスタートし、山小屋をつなぎながらアルプスを横断していく山岳スキールートです。
ルートは約100km、累積標高約10,000m。
途中には急な登りや露出感のあるセクションがあり、山岳技術も求められます。
そしてルートの後半には、オーストリア最高峰である標高3,798mのグロースグロックナーが待っています。
一般的には約6日間かけて山小屋から山小屋へと進むようなルートです。
フランソワとフィリップは、この壮大なアルプス横断を一度も長い休息を挟まず、ワンプッシュで進むことを選びました。
© Martina Valmassoi
100km・累積標高10,000mを1日で越える
フランソワ・デンヌとフィリップ・ライターは、ともに山岳地帯で長時間行動する経験を積んできたアスリートです。
それでも、100km・累積標高約10,000mを一度に越える挑戦は別次元でした。
登りでは心肺と脚力を消耗し、下りでは筋肉へ大きな衝撃が加わります。
さらに標高、気温、雪質、天候など、山では常に条件が変化します。
つまり、単に「登りが速い」だけでは最後まで進めません。
登りで使い切らず、下りで脚を壊さず、次の登りでも動き続けられるペースを維持する。
この「出力を抑えながら長く続ける力」が、大きな累積標高を攻略するうえで重要になります。
悪天候とホワイトアウトの中でのナビゲーション
スタート直後から、天候は二人に味方してくれませんでした。
視界の悪い状況の中、クーロワールを滑り降りる場面もありました。
雪山では、ホワイトアウトによって地形の凹凸や方向感覚がつかみにくくなることがあります。
元記事では、二人がGPSウォッチのナビゲーションを活用しながらルートを確認した様子が紹介されています。
現在のSuuntoウォッチでも、事前に作成したルートやオフラインマップを利用して、現在地や進行方向を確認できます。
ただし、GPSウォッチや地図は安全を保証するものではありません。
特に雪山や高山では、天候、雪崩リスク、地形、体力、撤退判断などを総合的に考える必要があります。
ナビゲーション機能は、その判断を支えるためのひとつのツールです。
▶︎ Suuntoの地図・ナビゲーション画面の見方|登山・トレイルのルート案内を解説
想定以上に必要だったエネルギー補給
長時間の山岳活動では、心肺能力や脚力と同じくらい重要になるのが補給です。
二人はHoch Tyrolを進む中で、想定していた以上に多くのエネルギーが必要になりました。
そこで途中の山小屋では、大きな皿いっぱいのパスタを注文してエネルギーを補給します。
これはウルトラトレイルや長時間登山にも共通するポイントです。
身体のエネルギーが不足すると、ペースが落ちるだけでなく、判断力や集中力にも影響します。
累積標高が増えるほど登りでの消費エネルギーも大きくなるため、「空腹になってから食べる」のではなく、動き続けるために計画的に補給することが重要です。
また、高強度で動き続けると食欲が落ちたり、胃腸が受け付けにくくなったりすることもあります。
レースや大きな山岳チャレンジの前には、トレーニング中から自分に合う補給方法を確認しておく必要があります。
30歩ごとに止まるほどの疲労
日が落ちる頃には、二人のエネルギーはほとんど残っていませんでした。
そして最後に待っていたのが、オーストリア最高峰グロースグロックナーへの登りです。
フィリップは後に、この最後の登りについて「これほど消耗したことはなかった」と振り返っています。
身体に歩き続けるよう言い聞かせても、30歩ほど進むたびに身体が止まってしまう。
原因として彼が挙げているのは、約10,000mに及ぶ登りの身体的疲労だけではありません。
事前準備によるストレスや、十分でなかった睡眠も重なっていました。
これは、持久系スポーツで忘れられがちなポイントです。
パフォーマンスは、その日の体力だけで決まるわけではありません。
睡眠や回復状態、精神的な疲労も、長時間の運動では大きく影響します。
登りの持久力を高めるために学べること
もちろん、100km・累積標高10,000mを1日で越える必要はありません。
しかし、この挑戦から登山やトレランの「登る力」について学べることがあります。
1. 登りは毎回全力で走らない
急な登りでは心拍数が上がりやすく、知らないうちに高強度になりがちです。
長時間動き続けるなら、序盤から全力で登るよりも、余裕を残して一定の強度を維持することが重要です。
2. ベースとなる持久力を育てる
登りを速くするには坂道トレーニングだけを繰り返せばいいわけではありません。
低〜中強度の持久系トレーニングによって、長時間効率よく動ける身体を作ることが土台になります。
▶︎ スキーモを速くする6つのトレーニング方法|登りの持久力と効率を高めるコツ
3. 筋力も「登り続ける力」の一部
長い登りでは脚だけでなく、体幹や上半身の安定性も重要です。
身体を安定させることで一歩ごとの動作を効率化し、長時間の登りで無駄なエネルギー消費を減らせます。
4. トレーニングだけでなく回復を見る
今回フィリップを苦しめた要因のひとつが睡眠不足でした。
練習量を増やすだけでなく、睡眠やHRV、トレーニング負荷などを継続的に見ながら、回復とのバランスを取ることも重要です。
▶︎ HRV(心拍変動)とは?正常値の見方と回復・トレーニングへの活かし方
累積標高の大きいルートほど事前計画が重要
距離が長く、累積標高が大きくなるほど、ルート計画の重要性も高まります。
確認したいのは距離だけではありません。
累積標高と登りの位置
標高の高い区間
補給できる場所
水を確保できる場所
天候が悪化した場合の撤退ルート
日没までにどこまで進めるか
こうした情報を事前に確認することで、「100km」という数字だけでは見えなかったルートの難しさがわかってきます。
Suuntoアプリでは、ルート作成時に距離や標高プロファイルを確認しながら計画できます。
GPXファイルのインポートやヒートマップを使ってルートを準備する方法はこちらで紹介しています。
▶︎ Suuntoアプリで登山・トレイルのルートを作る6つの方法|GPX・ヒートマップも解説
長時間の登山やトレイルランニングで、オフラインマップやルートナビゲーションを使いながら行動したい場合は、Suunto Vertical 2も選択肢のひとつです。
山で重要なのは、ウォッチに判断を任せることではありません。
地図、天候、自分の体力、残り時間を確認しながら、自分自身で判断し続けること。
ウォッチは、その判断に必要な情報を手元で確認するためのツールです。
Suunto Vertical 2を見る
まとめ|登る力は「速さ」だけではない
100km、累積標高約10,000m。
通常約6日かけて進むHoch Tyrolを、フランソワ・デンヌとフィリップ・ライターはワンプッシュで越えました。
しかし、この挑戦で印象的なのは、圧倒的なスピードそのものではありません。
悪天候の中でルートを確認し、必要なエネルギーを補給し、疲労と睡眠不足を抱えながら、それでも最後まで一歩ずつ進み続けたことです。
登りの強さとは、坂道を速く駆け上がる能力だけではありません。
無理のない強度を選ぶこと。
エネルギーを補給すること。
疲労を管理すること。
そして、必要なら引き返す判断ができること。
次に累積標高の大きな登山やトレイルランニングへ挑むときは、距離だけでなく「どれだけ登るのか」にも目を向けてみてください。
その数字を理解することが、より良いルート計画とペース配分の第一歩になります。
Lead images © Philipp Reiter / Photo © Martina Valmassoi
スキーモを速くする6つのトレーニング方法|登りの持久力と効率を高めるコツ
スキーモ(スキーマウンテニアリング)で登りを速くしたいとき、急斜面を毎回全力で登るだけでは、持久力も技術も伸びにくくなります。大切なのは、低強度の運動で土台をつくり、筋力と高強度トレーニングを目的に合わせて組み合わせることです。
この記事では、スポーツ科学者でコーチのスージー・クラフトによる原文のアドバイスをもとに、登りの持久力と効率を高める6つの方法を紹介します。雪山での速さは安全判断を置き換えるものではありません。天候、雪崩情報、ルート、技術、装備を確認したうえで、無理のない計画を立てましょう。
目次
スキーモで「速くなる」とは
登りを速くする6つのトレーニング方法
1週間のトレーニング例
速さより優先したい雪山の安全
Suuntoでトレーニングを振り返る
まとめ
スキーモで「速くなる」とは
スキーモは、スキーにシールを装着して雪山を登り、滑走して下るスポーツです。持久力だけでなく、登りと滑走の技術、寒さへの対応、補給、装備の扱い、雪崩を含む山岳リスクの判断など、多くの能力が求められます。
登るペースが上がれば、同じ時間でより長い行程をこなせる可能性があります。しかし、「速ければ安全」という意味ではありません。雪面や天候は刻々と変化し、体力があってもリスクをなくすことはできません。ここで目指す速さは、急いで行動することではなく、無理のない強度で効率よく登り、判断に使える体力と時間の余裕を残すことです。
登りを速くする6つのトレーニング方法
1.低強度のトレーニングを土台にする
スキーモは装備を背負って斜面を登るため、本人は楽に動いているつもりでも心拍数が上がりやすいスポーツです。高い強度の練習ばかり続けると、疲労が抜けにくくなり、トレーニングの質が下がることがあります。
原文では、持久系アスリートが練習時間の多くを低強度に充てる「80/20」の考え方が紹介されています。ただし、80対20はすべての人に当てはまる絶対的な比率ではありません。まずは会話できる程度の楽な強度を中心にし、体調や経験、練習時間に応じて高強度を少量加えましょう。
心拍数を使う場合は、推定最大心拍数だけでなく、普段の運動記録や主観的なきつさも合わせて確認します。疲労、気温、標高、脱水などでも心拍数は変わるため、一つの数値だけで強度を判断しないことが大切です。
2.必須装備を守りながら重量を見直す
登りでは、足元や背中の重量が増えるほど身体への負担も大きくなります。スキー、ブーツ、バックパックの中身を見直すと、同じペースでも余裕を保ちやすくなる場合があります。
ただし、軽量化のために防寒着、予備の手袋、行動食、水分、救急用品、ヘッドライト、ナビゲーション用品などを安易に削ってはいけません。雪崩地形へ入る場合のビーコン、プローブ、ショベルを含め、行程と地域に必要な安全装備を優先します。軽量化は「不要な重複を減らす」「目的に合う装備を選ぶ」範囲で考えましょう。
3.緩斜面や平地で低強度を身につける
急斜面では、ゆっくり動いても心拍数が上がりがちです。基礎持久力を養う日は、傾斜の緩い安全なコースを選ぶと、強度を抑えながら長く動きやすくなります。
雪上で低強度を保ちにくい場合は、平地のランニング、サイクリング、室内バイクなども有効です。スキーモの技術練習とは別に、強度を管理しやすい運動で持久力の土台をつくりましょう。
4.異なる運動を組み合わせる
スキーモだけで必要な体力をすべて養おうとすると、雪の状態や移動時間に左右され、同じ部位へ負担が集中しやすくなります。ランニング、サイクリング、ハイキングなどを組み合わせると、季節や環境に応じてトレーニング量を調整できます。
クロストレーニングは、スキーモ特有のキックターンやシール歩行、滑走技術の代わりにはなりません。雪上では技術を、平地では基礎持久力を、というように目的を分けると取り入れやすくなります。
5.脚と体幹の筋力を高める
脚と体幹の筋力は、斜面で姿勢を保ち、長い登りで動作を安定させる助けになります。スクワット、ランジ、デッドリフト、ヒップスラスト、プランクなどから、自分の経験に合う種目を選びましょう。
筋力トレーニング初心者は、自重や軽い負荷で動作を覚えることから始めます。回数や重量を増やす前にフォームを確認し、可能であれば専門家の指導を受けてください。ジャンプ系の種目は着地の負担が大きいため、基礎筋力をつけてから段階的に行います。
6.高強度インターバルは少量から
十分な持久力の土台ができたら、高強度インターバルトレーニング(HIIT)を少量加えると、登りで強度が上がったときの対応力を養えます。たとえば、ウォームアップ後に2〜4分の高強度運動と同程度のゆっくりした回復を3〜5回繰り返します。
高強度セッションは疲労が大きいため、連日行わず、翌日以降の回復も含めて計画してください。トレーニング歴が浅い人や疲労が続いている人は、まず低強度運動を継続することを優先しましょう。痛み、めまい、強い息苦しさなどが出た場合は中止し、必要に応じて医療専門家へ相談してください。
1週間のトレーニング例
次の例は、基礎的な運動習慣があり、週末に雪上へ出られる人を想定したものです。競技レベル、体調、積雪、仕事や生活の予定に合わせて、時間と回数を調整してください。初心者は休養日を増やし、各セッションを短くするところから始めましょう。
曜日
内容
目的
月
休養または軽いモビリティ
週末の疲労回復
火
低強度のランニングまたはバイク 45〜60分
基礎持久力
水
筋力トレーニング 30〜45分
脚・体幹の強化
木
インターバルまたはテンポ運動 30〜50分
高強度への対応
金
休養またはごく軽い運動
週末に向けた回復
土
安全な環境での雪上技術練習 60〜120分
シール歩行・切り返し・滑走
日
低強度中心の長めのセッション
持久力と補給の練習
高強度の日と長時間の日を近づけすぎないことがポイントです。睡眠不足や強い疲労がある日は予定に固執せず、低強度へ変更するか休養に切り替えましょう。
速さより優先したい雪山の安全
トレーニングで体力が向上しても、雪崩、天候の急変、ホワイトアウト、低体温症、道迷いなどのリスクは残ります。入山前には地域の雪崩情報と気象情報を確認し、経験に合うルートと引き返す基準を決めてください。
単独行を避け、計画と帰着予定を第三者へ共有する
雪崩地形へ入る場合は、必要な教育を受け、救助装備を携行して使い方を練習する
地図、コンパス、GPSなど複数のナビゲーション手段を用意する
防寒着、予備の手袋、ライト、補給、水分、救急用品を行程に合わせて携行する
予定より遅れていなくても、雪や天候、体調が悪化したら引き返す
GPSウォッチやスマートフォンは便利ですが、バッテリー切れや故障、受信状況の変化も想定し、電子機器だけに依存しない準備が必要です。
Suuntoでトレーニングを振り返る
登りのトレーニングでは、速さだけでなく、心拍ゾーン、運動時間、獲得標高、登高速度、トレーニング負荷などを継続して見ると、同じ強度でどれだけ余裕を保てるようになったかを振り返りやすくなります。対応するSuunto Vertical 2などのGPSスポーツウォッチとSuuntoアプリを使い、雪上とクロストレーニングの記録を一つにまとめることができます。
表示できる指標やスポーツモードはモデルやソフトウェアによって異なります。運動前にバッテリー残量と記録設定を確認し、必要なデータを見やすくしたい場合は、「Suuntoで記録できるスポーツ一覧|115種類以上のスポーツモードを解説」も参考にしてください。
山中ではウォッチの数値を追い続けず、地形、雪面、天候、同行者の状態を優先します。記録は安全を保証するものではなく、計画と振り返りを支える材料として活用しましょう。
まとめ
スキーモの登りを速くする近道は、毎回追い込むことではありません。低強度の運動で持久力を育て、異なる運動と筋力トレーニングを組み合わせ、十分な土台ができてから高強度を少量加えることが基本です。装備の重量は見直しても、必須の安全装備は削らないようにします。
SuuntoのGPSスポーツウォッチなら、心拍ゾーン、時間、標高、トレーニング負荷などを記録し、雪上トレーニングと日々の運動をまとめて振り返れます。数値と身体の感覚を照らし合わせながら、山で余裕を持って動ける体力を段階的に育てていきましょう。
山でのトレーニングを記録しよう
長時間のアウトドア活動とトレーニングの振り返りに対応するSuuntoスポーツウォッチをチェックしてください。
Suuntoスポーツウォッチを見る
トレランの登りを速くするには?持久力・筋力・心拍を鍛えるトレーニング方法
トレイルランニングや登山で「登りをもっと速く、楽に進みたい」と思ったら、坂道を全力で登るトレーニングばかり繰り返すのは逆効果になることがあります。登りでは心拍数が上がりやすく、知らないうちに高強度トレーニングへ偏ってしまうからです。
登坂力を高めるために必要なのは、坂道ダッシュだけではありません。
低強度で有酸素持久力の土台を作ること、筋力を高めること、効率よく身体を動かすテクニックを身につけること。
これらをバランスよく組み合わせることで、長い登りでもペースを維持しやすくなります。
この記事では、スポーツ科学者でスキーマウンテニア、トレイルランナーでもあるSusi Kraftのアドバイスをもとに、トレランや登山の登りを速くするためのトレーニング方法と、レベル別の週間プランを紹介します。
目次
なぜ登りを速くするトレーニングは難しい?
1. まずは有酸素持久力の土台を作る
2. 登りを速くしたいなら平地も走る
3. 脚と体幹の筋力を鍛える
4. 疲れる前に登りのフォームを身につける
5. 登りではトレーニング強度を上げすぎない
6. 登坂力は短期間では完成しない
初心者・中級者・上級者向け週間トレーニング例
まとめ|速く登るためには、ゆっくり鍛える時間も必要
なぜ登りを速くするトレーニングは難しい?
坂道を登ると、平地を走っているときより心拍数が急激に上がります。
身体が持久運動に十分慣れていない場合、勾配が急になるだけで運動強度が大きく上がり、乳酸の蓄積も増えていきます。
すると呼吸が苦しくなり、脚も動かしにくくなります。
「登りを速くなりたいなら、毎回きつい坂を全力で登ればいい」と考えたくなりますが、これは注意が必要です。
高強度の坂道トレーニングは短期的には効果を感じやすいものの、そればかり続けると疲労が蓄積し、長期的なパフォーマンス向上を妨げることがあります。
登りを速くするためには、高強度トレーニングを増やす前に、それを支えられる有酸素持久力の土台を作る必要があります。
Susi trains in the mountains around Salzburg. © Berghasen
1. まずは有酸素持久力の土台を作る
速く登れるランナーを見ると、「もっと坂道インターバルを増やさなければ」と考えがちです。
しかしSusiが最も重視しているのは、低強度トレーニングによる有酸素持久力の向上です。
長い登りでは、数分だけ強いパワーを出せても十分ではありません。
30分、1時間、あるいはそれ以上、効率よく身体を動かし続ける必要があります。
低強度のランニング、サイクリング、ハイキングなどを継続すると、長時間運動するための基礎を作ることができます。
有酸素ベースが強くなるほど、同じ登りでも身体への負担を抑えながら進めるようになり、高強度トレーニングにも耐えやすくなります。
速く登るための第一歩は、必ずしも速く登ることではありません。
2. 登りを速くしたいなら平地も走る
「登りを速くしたいのに、なぜ平地を走るの?」と思うかもしれません。
しかし平地トレーニングには大きなメリットがあります。
運動強度を低く保ちやすいことです。
急な坂では、ゆっくり走っているつもりでも心拍数が上がり、低強度の範囲を維持するのが難しくなります。
平地ならペースを調整しやすいため、有酸素ベースを鍛えるトレーニングを行いやすくなります。
Susiは、平地と丘陵地を組み合わせることをすすめています。
世界トップレベルの持久系アスリートでも、基礎トレーニングをやめることはありません。
低強度の日と強度を上げる日を組み合わせながら、長期的に身体を作っています。
3. 脚と体幹の筋力を鍛える
登りを速くするには、心肺能力だけでなく筋力も重要です。
急な登りでは、平地よりも一歩ごとに大きな力が必要になります。
特に鍛えたいのは、脚だけではありません。
大腿四頭筋
ハムストリングス
臀筋
ふくらはぎ
体幹
上半身
体幹や上半身が安定すると、脚や腕をより効率よく使えるようになります。
トレイルランでは急勾配になるほど上半身も使いますし、登山やスキーモでポールを使う場合には、腕や背中の力も重要になります。
身体全体を安定させ、一歩ごとのエネルギーロスを減らすことが、長い登りでの効率につながります。
4. 疲れる前に登りのフォームを身につける
登りでは「もっと頑張る」ことだけに意識が向きがちですが、身体の動かし方も重要です。
Susiがすすめるのは、疲れていない状態でテクニックを練習することです。
すでに息が上がり、脚が疲れ切った状態では、フォームを細かく修正する余裕がありません。
まず平地や緩い登りで、効率的な身体の動かし方を確認します。
例えば、
上半身を必要以上に左右へ振らない
急な登りでは無理にストライドを伸ばさない
勾配に合わせて歩きと走りを使い分ける
体幹を安定させる
腕振りを登りの推進力として使う
といったポイントです。
少ないエネルギーで同じスピードを出せるフォームを身につけることが、長い登りでは大きな差になります。
5. 登りではトレーニング強度を上げすぎない
登りトレーニングで特に注意したいのが、予定より強度が高くなりやすいことです。
平地なら楽に走れるペースでも、急な坂に入るだけで心拍数は大きく上昇します。
そのため、低強度の日なのに毎回坂で頑張ってしまうと、「楽な日は少し速すぎ、ハードな日は疲れて十分追い込めない」という状態になりやすくなります。
▶︎ イージーランが速すぎる?ランニングの「トレーニング・ブラックホール」とは
低強度トレーニングでは、心拍数や呼吸の感覚を確認しながら、無理なく継続できる強度を維持しましょう。
心拍ベルトを使用している場合は、心拍ゾーンを確認する方法もあります。
さらにSuunto ZoneSenseを利用すれば、運動中の心拍変動から、その日の身体が有酸素・無酸素・VO2maxのどの強度領域にいるかを確認できます。
ただし、重要なのは特定の機能を使うことではありません。
「今日は低強度の日なのか、高強度の日なのか」というトレーニングの目的を明確にすることです。
6. 登坂力は短期間では完成しない
登りの強さは、数週間の坂道トレーニングだけで完成するものではありません。
Susiは、有酸素ベースを育てるには長い時間が必要だと話しています。
数か月だけでなく、1年、5年、それ以上。
長期間トレーニングを積み重ねることで、身体はより効率的にエネルギーを使えるようになります。
有酸素ベースが強くなると、高強度の坂道トレーニングにも耐えやすくなります。
そして回復も早くなり、次のトレーニングの質も上げやすくなります。
「今すぐ速くなりたい」と高強度を増やすより、長期的にトレーニングを継続できる身体を作ること。
それが結果として、登りを速くする近道になります。
初心者・中級者・上級者向け週間トレーニング例
ここからは、Susiが提案するトレーニングプランを、日本のランナーにも取り入れやすい形に整理して紹介します。
基本的には2週間続けたあと、3週目は休養日を1〜2日増やして負荷を落とします。
同じパターンを数週間続け、身体が慣れてきたらセッション時間を少しずつ伸ばしていきましょう。
初心者向け
曜日
トレーニング
月
休養
火
体幹・モビリティトレーニング
水
低強度ラン 30分
木
休養
金
脚+上半身の筋力トレーニング
土
低強度ラン 30分 またはサイクリング 40分
日
サイクリング90分 またはハイキング・スキーモ2時間を低強度で
初心者では、まず低強度の有酸素運動を継続することを優先します。
坂道トレーニングを急いで増やすより、ランニングやサイクリング、ハイキングを組み合わせて長時間動ける身体を作りましょう。
中級者向け
曜日
トレーニング
月
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
火
ファルトレク:低強度1km+高強度1kmを5セット、最後に10分のイージージョグ
水
低強度ラン 45分
木
休養
金
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
土
低強度ラン 60分 またはサイクリング2時間
日
サイクリング2時間30分 またはハイキング・スキーモ3時間を低強度で
中級者では、低強度トレーニングを中心にしながら、週1回程度の高強度セッションを加えます。
「高強度の日を増やす」のではなく、低強度と高強度の差をはっきりさせることがポイントです。
上級者向け
曜日
トレーニング
月
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
火
ファルトレク:低強度1km+高強度1kmを5セット、最後に10分のイージージョグ
水
低強度ラン 50分
木
休養
金
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
土
低強度ラン 80分 またはサイクリング2時間
日
サイクリング2時間30分 またはハイキング・スキーモ3時間+3分高強度×5本
上級者でも、トレーニングの大部分は低強度です。
長時間の有酸素運動に短い高強度区間を組み合わせることで、疲労した状態でも登りの出力を高める能力を鍛えます。
高強度区間の間には十分に強度を落とし、次のセットに備えましょう。
トレーニングプランは自分のレベルに合わせる
上のプランはあくまで一例です。
現在の運動習慣、年齢、トレーニング歴、回復状態によって適切な負荷は異なります。
特に、これまで週2〜3回しか運動していなかった人が、いきなり上級者プランを始めるのはおすすめできません。
トレーニング量は少しずつ増やし、疲労が強いときは休養を優先してください。
まとめ|速く登るためには、ゆっくり鍛える時間も必要
トレランや登山で登りを速くしたいとき、最初に思いつくのは坂道トレーニングかもしれません。
しかし、本当に登坂力を高めるためには、それだけでは不十分です。
低強度トレーニングで有酸素持久力を作る
平地も使って強度をコントロールする
脚・体幹・上半身の筋力を鍛える
疲れていない状態で効率的なフォームを練習する
低強度の日と高強度の日を明確に分ける
短期間の結果を求めず、長期的にトレーニングを続ける
速く登る能力は、坂を全力で登った回数だけで決まりません。
長時間効率よく動ける身体を作り、その土台の上に筋力と高強度トレーニングを積み重ねる。
そのバランスが整ってくると、以前は息を切らして登っていた坂でも、少しずつ余裕を持って進めるようになります。
次の坂道トレーニングで大切なのは、「今日はどこまで追い込めるか」だけではありません。
今日のトレーニングは何を鍛えるためなのか。
その目的を明確にすることが、長期的に登りを速くする第一歩です。
Image © Berghasen
登りのトレーニングをデータで振り返る
登りを速くするには、感覚だけでなく、心拍数、累積標高、運動時間、トレーニング負荷などを継続的に振り返ることも役立ちます。
Suuntoウォッチなら、登山やトレイルランニングのアクティビティを記録し、Suuntoアプリで距離、標高、心拍、トレーニング負荷などを確認できます。
山でのナビゲーションや長時間のアクティビティを重視するならSuunto Vertical 2、日々のトレーニングやレースパフォーマンスを重視するならSuunto Race 2という選び方もできます。
重要なのは、数字を増やすことではなく、「今日は何を鍛えるトレーニングだったのか」をデータと一緒に振り返ることです。
Suunto Vertical 2を見る Suunto Race 2を見る
6 keys to planning your training year
The Austrian management guru Peter F. Drucker said it well: “Unless commitment is made, there are only promises and hopes; but no plans.”
Put another way, without a clear plan, there’s no real commitment. It’s the same with training. We need a goal and a plan to reach it. Otherwise, the risk is we keep on doing the same old thing. If we do aim to improve our performance, we must know where we’re going and how to get there.
“A training plan doesn’t have to start directly at the beginning of a year, but it’s a good time for making plans and setting new goals,” says Austrian sport scientist, coach and athlete Susi Kraft.
Susi is one half of the Berghasen, an awesome German-language blog covering everything you need to know about ski touring: training tips, tours, gear and so on. We caught up with the passionate mountain lover and asked what goes into a good training plan. Read on for Susi’s six tips.
Susi works and plays in the stunning mountains around Salzburg. © Berghasen
Take the long view
You might be wondering whether you really need to have a plan for the whole year. The answer is yes if you want to have an optimal training year and achieve your goals. Susi explains why:
“When designing a training plan you normally define one or two personal highlights in the training year,” she says. “At those events your physical performance should be at the highest level.”
Once the highlights are decided you then distribute every single workout/training session across your calendar. Sport scientists like Susi call this process training periodization, which has three phases:
1. Base period2. Pre-competition period3. Competition period
“A smart training periodization is only possible if you have an overview of the whole year and the athlete highlights factored in,” Susi says. “Besides that you also have to factor in your personal life, like family, holidays, work, weddings, kids and so on.”
Select your highlights
Without a goal, it’s easy to lose direction. When thinking about your next goal, use the acronym as a guide, SMART: specific, measurable, achievable, realistic and timely.
Specific: Well defined, clear, and unambiguousMeasurable: With specific criteria that measure your progress toward the accomplishment of the goalAchievable: Attainable and not impossible to achieveRealistic: Within reach, realistic, and relevant to your life purposeTimely: With a clearly defined timeline, including a starting date and a target date. The purpose is to create urgency.
“The training plan itself should always be orientated around a goal you want to achieve,” Susi says. “That goal could be a trail running competition, finishing your first triathlon, climbing Mont Blanc or losing weight. Setting new goals and working with a specific training plan keeps motivation high. That’s what I see when working with my athletes.”
Consider this
“The no pain, no gain approach to training is really outdated, “ Susi says. “30 years ago experts in sports science didn’t always know how to train right. What we know now is that the best endurance athletes don’t train so hard – most of their training is at low intensity.”
Take a moment to think about that before creating a plan to achieve your goal. This is especially important if you have a tendency to push yourself hard. A gentler approach may serve you better.
“A lot of people I see try to get better really fast,” Susi says. “They train really hard, really long distances. You may get better quickly, but in the long term that’s really bad for the body and for the training programme. Some people actually get worse, become overtrained or are prone to injuries.”
Don’t copy and paste
Oh, the internet. We can find countless training plans and make them our own. Thing is, cutting corners like that might not give you the results you wish for.
“If you just copy last year’s or someone else’s training plan it won’t account for possible improvements in your training status,” Susi says. “Your plan should always be built on your current endurance, strength and other skills. That’s why it is so important to do performance diagnostics regularly and before you start working with a new training plan or coach.”
Avoid these classic mistakes
Susi says people tend to fall into two camps. Those that go overboard and do too much high intensity training too soon, and those that like routine and do the same workouts every week.
“Really think about intensity distribution in your plan,” Susi says. “The risk is, that you do the same stuff every week. That mistake may lead to slower progress, monotony or even overtraining because you didn’t consider rest day and rest weeks. Most people tend to train too hard over several weeks or months. Over a whole year this may lead to chronic exhaustion.”
Don’t be that guy.
Follow this planning flow
Set goals / highlights
Analyze your current physical status – endurance, strength, stability, speed, balance – by doing physical performance tests. The outcome is influenced by your training history. Also consider how much experience a person has and determine your training age, meaning how many years of endurance training, strength training you’ve done and how many years of specific training in the sport you want to compete in.
How often and what exactly is your training programme (hours, km, what kind of sports etc.)
Which weaknesses do you have? What are the main factors we need to approve?
How much time do you have to achieve your goal?
Determine the training periodization over the time window you have available.
Carefully and realistically distribute the training intensity across the calendar
Plan single blocks or training sessions
Lead images: © Berghasen
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Happy training!
This freerider is going after 30 remote Arctic lines, each one on foot
Suunto athlete and pro Finnish snowboarder Antti Autti is on a new freeriding mission: to ride 30 lines above the Arctic Circle in the northern Scandinavian wilds. Antti’s crew are filming the 30 adventures, which will feature as a web series on Suunto.com here.
Each approach will be done on foot to minimize fossil fuel use, something Antti and many adventure athletes – including Suunto’s Greg Hill and Kilian Jornet – are becoming increasingly conscious of.
Watch the first three episodes of Arctic Lines here!
Antti Autti lives in Rovaniemi, the capital of the Finnish Lapland.
The Arctic Lines project is different from Antti’s previous adventures. “I’ve done a lot of films that are a little bit based on illusion, you know, creating great powder, stories about perfect days in the mountains,” Antti says. “That’s part of my job and the lifestyle I live, but to me it started to feel like there’s much more stuff I can do to inspire people. So I decided to do raw documentary style films that really showcase the things and responsibilities that we have to take care of out in the mountains. This is the idea behind Arctic Lines.”
To get a raw, unsanitized picture of what goes into these kinds of adventures Antti recommends to follow each of the 30 episodes. “You won’t see everything in the few episodes,” he says. “But if you keep following along, you will get more into it and understand what we’re trying to do, which is important.”
The 30 lines are located in northern Finland, Sweden and Norway, and not easy to get to. Approaches from the road end range from eight to 20 km through harsh Arctic conditions, and during winter through the long Polar Night. “The weather is going to be the most tough for us,” Antti says. “In social media and the media generally you will see all these great photos of the Arctic, with amazing sunrises on the horizon in a white landscape and trees filled with snow. But the reality is that we’re up against hard wind, it’s really freaking cold, and it’s more of a mountain and wilderness activity rather than just riding.”
Antti is more used to these conditions than many. He was born and raised in Rovaniemi, the capital of Lapland, and his family home neighbouring Ounasvaara ski resort. As a kid he tried team sports, but didn’t fit in. Out skiing one day when he was nine, he watched in awe as a snowboarder did tricks. When he tried himself a year later, he was hooked.
Read more about Antti Autti here!
Since then Antti has travelled the world – Japan, New Zealand, Europe and elsewhere – competing at snowboarding events and chasing pow on freeriding missions. While he loves to travel and find new lines, his approach to the sport has changed as his awareness around climate change and his real responsibilities as an ambassador for the sport has matured.
“I started to feel that as a professional athlete I have a responsibility to tell what goes into riding some scary line or even riding a nice looking decline that many people could do, but in a way that's safe and responsible,” he says. “So this is a responsibility as an athlete that I’m caring about. I don’t want to do crazy things anymore without actually fulfilling that responsibility and explaining to people why and how I do things like avalanche awareness and being secure in the mountains.”
Watch the Arctic Lines online series here!
All images: © Jaakko Posti Photography