トレランの登りを速くするには?持久力・筋力・心拍を鍛えるトレーニング方法

SuuntoClimb, SuuntoRide, SuuntoRun, SuuntoSkiFebruary 23 2021

トレイルランニングや登山で「登りをもっと速く、楽に進みたい」と思ったら、坂道を全力で登るトレーニングばかり繰り返すのは逆効果になることがあります。登りでは心拍数が上がりやすく、知らないうちに高強度トレーニングへ偏ってしまうからです。

登坂力を高めるために必要なのは、坂道ダッシュだけではありません。

低強度で有酸素持久力の土台を作ること、筋力を高めること、効率よく身体を動かすテクニックを身につけること。

これらをバランスよく組み合わせることで、長い登りでもペースを維持しやすくなります。

この記事では、スポーツ科学者でスキーマウンテニア、トレイルランナーでもあるSusi Kraftのアドバイスをもとに、トレランや登山の登りを速くするためのトレーニング方法と、レベル別の週間プランを紹介します。

なぜ登りを速くするトレーニングは難しい?

坂道を登ると、平地を走っているときより心拍数が急激に上がります。

身体が持久運動に十分慣れていない場合、勾配が急になるだけで運動強度が大きく上がり、乳酸の蓄積も増えていきます。

すると呼吸が苦しくなり、脚も動かしにくくなります。

「登りを速くなりたいなら、毎回きつい坂を全力で登ればいい」と考えたくなりますが、これは注意が必要です。

高強度の坂道トレーニングは短期的には効果を感じやすいものの、そればかり続けると疲労が蓄積し、長期的なパフォーマンス向上を妨げることがあります。

登りを速くするためには、高強度トレーニングを増やす前に、それを支えられる有酸素持久力の土台を作る必要があります。

山岳トレイルの急な登りを走るトレイルランナー

Susi trains in the mountains around Salzburg. © Berghasen

1. まずは有酸素持久力の土台を作る

速く登れるランナーを見ると、「もっと坂道インターバルを増やさなければ」と考えがちです。

しかしSusiが最も重視しているのは、低強度トレーニングによる有酸素持久力の向上です。

長い登りでは、数分だけ強いパワーを出せても十分ではありません。

30分、1時間、あるいはそれ以上、効率よく身体を動かし続ける必要があります。

低強度のランニング、サイクリング、ハイキングなどを継続すると、長時間運動するための基礎を作ることができます。

有酸素ベースが強くなるほど、同じ登りでも身体への負担を抑えながら進めるようになり、高強度トレーニングにも耐えやすくなります。

速く登るための第一歩は、必ずしも速く登ることではありません。

2. 登りを速くしたいなら平地も走る

「登りを速くしたいのに、なぜ平地を走るの?」と思うかもしれません。

しかし平地トレーニングには大きなメリットがあります。

運動強度を低く保ちやすいことです。

急な坂では、ゆっくり走っているつもりでも心拍数が上がり、低強度の範囲を維持するのが難しくなります。

平地ならペースを調整しやすいため、有酸素ベースを鍛えるトレーニングを行いやすくなります。

Susiは、平地と丘陵地を組み合わせることをすすめています。

世界トップレベルの持久系アスリートでも、基礎トレーニングをやめることはありません。

低強度の日と強度を上げる日を組み合わせながら、長期的に身体を作っています。

3. 脚と体幹の筋力を鍛える

登りを速くするには、心肺能力だけでなく筋力も重要です。

急な登りでは、平地よりも一歩ごとに大きな力が必要になります。

特に鍛えたいのは、脚だけではありません。

  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス
  • 臀筋
  • ふくらはぎ
  • 体幹
  • 上半身

体幹や上半身が安定すると、脚や腕をより効率よく使えるようになります。

トレイルランでは急勾配になるほど上半身も使いますし、登山やスキーモでポールを使う場合には、腕や背中の力も重要になります。

身体全体を安定させ、一歩ごとのエネルギーロスを減らすことが、長い登りでの効率につながります。

4. 疲れる前に登りのフォームを身につける

登りでは「もっと頑張る」ことだけに意識が向きがちですが、身体の動かし方も重要です。

Susiがすすめるのは、疲れていない状態でテクニックを練習することです。

すでに息が上がり、脚が疲れ切った状態では、フォームを細かく修正する余裕がありません。

まず平地や緩い登りで、効率的な身体の動かし方を確認します。

例えば、

  • 上半身を必要以上に左右へ振らない
  • 急な登りでは無理にストライドを伸ばさない
  • 勾配に合わせて歩きと走りを使い分ける
  • 体幹を安定させる
  • 腕振りを登りの推進力として使う

といったポイントです。

少ないエネルギーで同じスピードを出せるフォームを身につけることが、長い登りでは大きな差になります。

5. 登りではトレーニング強度を上げすぎない

登りトレーニングで特に注意したいのが、予定より強度が高くなりやすいことです。

平地なら楽に走れるペースでも、急な坂に入るだけで心拍数は大きく上昇します。

そのため、低強度の日なのに毎回坂で頑張ってしまうと、「楽な日は少し速すぎ、ハードな日は疲れて十分追い込めない」という状態になりやすくなります。

▶︎ イージーランが速すぎる?ランニングの「トレーニング・ブラックホール」とは

低強度トレーニングでは、心拍数や呼吸の感覚を確認しながら、無理なく継続できる強度を維持しましょう。

心拍ベルトを使用している場合は、心拍ゾーンを確認する方法もあります。

さらにSuunto ZoneSenseを利用すれば、運動中の心拍変動から、その日の身体が有酸素・無酸素・VO2maxのどの強度領域にいるかを確認できます。

ただし、重要なのは特定の機能を使うことではありません。

「今日は低強度の日なのか、高強度の日なのか」というトレーニングの目的を明確にすることです。

6. 登坂力は短期間では完成しない

登りの強さは、数週間の坂道トレーニングだけで完成するものではありません。

Susiは、有酸素ベースを育てるには長い時間が必要だと話しています。

数か月だけでなく、1年、5年、それ以上。

長期間トレーニングを積み重ねることで、身体はより効率的にエネルギーを使えるようになります。

有酸素ベースが強くなると、高強度の坂道トレーニングにも耐えやすくなります。

そして回復も早くなり、次のトレーニングの質も上げやすくなります。

「今すぐ速くなりたい」と高強度を増やすより、長期的にトレーニングを継続できる身体を作ること。

それが結果として、登りを速くする近道になります。

初心者・中級者・上級者向け週間トレーニング例

ここからは、Susiが提案するトレーニングプランを、日本のランナーにも取り入れやすい形に整理して紹介します。

基本的には2週間続けたあと、3週目は休養日を1〜2日増やして負荷を落とします。

同じパターンを数週間続け、身体が慣れてきたらセッション時間を少しずつ伸ばしていきましょう。

初心者向け

曜日 トレーニング
休養
体幹・モビリティトレーニング
低強度ラン 30分
休養
脚+上半身の筋力トレーニング
低強度ラン 30分 またはサイクリング 40分
サイクリング90分 またはハイキング・スキーモ2時間を低強度で

初心者では、まず低強度の有酸素運動を継続することを優先します。

坂道トレーニングを急いで増やすより、ランニングやサイクリング、ハイキングを組み合わせて長時間動ける身体を作りましょう。

中級者向け

曜日 トレーニング
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
ファルトレク:低強度1km+高強度1kmを5セット、最後に10分のイージージョグ
低強度ラン 45分
休養
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
低強度ラン 60分 またはサイクリング2時間
サイクリング2時間30分 またはハイキング・スキーモ3時間を低強度で

中級者では、低強度トレーニングを中心にしながら、週1回程度の高強度セッションを加えます。

「高強度の日を増やす」のではなく、低強度と高強度の差をはっきりさせることがポイントです。

上級者向け

曜日 トレーニング
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
ファルトレク:低強度1km+高強度1kmを5セット、最後に10分のイージージョグ
低強度ラン 50分
休養
体幹+全身の筋力トレーニング+柔軟性
低強度ラン 80分 またはサイクリング2時間
サイクリング2時間30分 またはハイキング・スキーモ3時間+3分高強度×5本

上級者でも、トレーニングの大部分は低強度です。

長時間の有酸素運動に短い高強度区間を組み合わせることで、疲労した状態でも登りの出力を高める能力を鍛えます。

高強度区間の間には十分に強度を落とし、次のセットに備えましょう。

トレーニングプランは自分のレベルに合わせる

上のプランはあくまで一例です。

現在の運動習慣、年齢、トレーニング歴、回復状態によって適切な負荷は異なります。

特に、これまで週2〜3回しか運動していなかった人が、いきなり上級者プランを始めるのはおすすめできません。

トレーニング量は少しずつ増やし、疲労が強いときは休養を優先してください。

まとめ|速く登るためには、ゆっくり鍛える時間も必要

トレランや登山で登りを速くしたいとき、最初に思いつくのは坂道トレーニングかもしれません。

しかし、本当に登坂力を高めるためには、それだけでは不十分です。

  • 低強度トレーニングで有酸素持久力を作る
  • 平地も使って強度をコントロールする
  • 脚・体幹・上半身の筋力を鍛える
  • 疲れていない状態で効率的なフォームを練習する
  • 低強度の日と高強度の日を明確に分ける
  • 短期間の結果を求めず、長期的にトレーニングを続ける

速く登る能力は、坂を全力で登った回数だけで決まりません。

長時間効率よく動ける身体を作り、その土台の上に筋力と高強度トレーニングを積み重ねる。

そのバランスが整ってくると、以前は息を切らして登っていた坂でも、少しずつ余裕を持って進めるようになります。

次の坂道トレーニングで大切なのは、「今日はどこまで追い込めるか」だけではありません。

今日のトレーニングは何を鍛えるためなのか。

その目的を明確にすることが、長期的に登りを速くする第一歩です。


Image © Berghasen

登りのトレーニングをデータで振り返る

登りを速くするには、感覚だけでなく、心拍数、累積標高、運動時間、トレーニング負荷などを継続的に振り返ることも役立ちます。

Suuntoウォッチなら、登山やトレイルランニングのアクティビティを記録し、Suuntoアプリで距離、標高、心拍、トレーニング負荷などを確認できます。

山でのナビゲーションや長時間のアクティビティを重視するならSuunto Vertical 2、日々のトレーニングやレースパフォーマンスを重視するならSuunto Race 2という選び方もできます。

重要なのは、数字を増やすことではなく、「今日は何を鍛えるトレーニングだったのか」をデータと一緒に振り返ることです。

Suunto Vertical 2を見る Suunto Race 2を見る

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