スキーモ(スキーマウンテニアリング)で登りを速くしたいとき、急斜面を毎回全力で登るだけでは、持久力も技術も伸びにくくなります。大切なのは、低強度の運動で土台をつくり、筋力と高強度トレーニングを目的に合わせて組み合わせることです。
この記事では、スポーツ科学者でコーチのスージー・クラフトによる原文のアドバイスをもとに、登りの持久力と効率を高める6つの方法を紹介します。雪山での速さは安全判断を置き換えるものではありません。天候、雪崩情報、ルート、技術、装備を確認したうえで、無理のない計画を立てましょう。

スキーモで「速くなる」とは
スキーモは、スキーにシールを装着して雪山を登り、滑走して下るスポーツです。持久力だけでなく、登りと滑走の技術、寒さへの対応、補給、装備の扱い、雪崩を含む山岳リスクの判断など、多くの能力が求められます。
登るペースが上がれば、同じ時間でより長い行程をこなせる可能性があります。しかし、「速ければ安全」という意味ではありません。雪面や天候は刻々と変化し、体力があってもリスクをなくすことはできません。ここで目指す速さは、急いで行動することではなく、無理のない強度で効率よく登り、判断に使える体力と時間の余裕を残すことです。
登りを速くする6つのトレーニング方法

1.低強度のトレーニングを土台にする
スキーモは装備を背負って斜面を登るため、本人は楽に動いているつもりでも心拍数が上がりやすいスポーツです。高い強度の練習ばかり続けると、疲労が抜けにくくなり、トレーニングの質が下がることがあります。
原文では、持久系アスリートが練習時間の多くを低強度に充てる「80/20」の考え方が紹介されています。ただし、80対20はすべての人に当てはまる絶対的な比率ではありません。まずは会話できる程度の楽な強度を中心にし、体調や経験、練習時間に応じて高強度を少量加えましょう。
心拍数を使う場合は、推定最大心拍数だけでなく、普段の運動記録や主観的なきつさも合わせて確認します。疲労、気温、標高、脱水などでも心拍数は変わるため、一つの数値だけで強度を判断しないことが大切です。
2.必須装備を守りながら重量を見直す
登りでは、足元や背中の重量が増えるほど身体への負担も大きくなります。スキー、ブーツ、バックパックの中身を見直すと、同じペースでも余裕を保ちやすくなる場合があります。
ただし、軽量化のために防寒着、予備の手袋、行動食、水分、救急用品、ヘッドライト、ナビゲーション用品などを安易に削ってはいけません。雪崩地形へ入る場合のビーコン、プローブ、ショベルを含め、行程と地域に必要な安全装備を優先します。軽量化は「不要な重複を減らす」「目的に合う装備を選ぶ」範囲で考えましょう。
3.緩斜面や平地で低強度を身につける
急斜面では、ゆっくり動いても心拍数が上がりがちです。基礎持久力を養う日は、傾斜の緩い安全なコースを選ぶと、強度を抑えながら長く動きやすくなります。
雪上で低強度を保ちにくい場合は、平地のランニング、サイクリング、室内バイクなども有効です。スキーモの技術練習とは別に、強度を管理しやすい運動で持久力の土台をつくりましょう。
4.異なる運動を組み合わせる
スキーモだけで必要な体力をすべて養おうとすると、雪の状態や移動時間に左右され、同じ部位へ負担が集中しやすくなります。ランニング、サイクリング、ハイキングなどを組み合わせると、季節や環境に応じてトレーニング量を調整できます。
クロストレーニングは、スキーモ特有のキックターンやシール歩行、滑走技術の代わりにはなりません。雪上では技術を、平地では基礎持久力を、というように目的を分けると取り入れやすくなります。
5.脚と体幹の筋力を高める
脚と体幹の筋力は、斜面で姿勢を保ち、長い登りで動作を安定させる助けになります。スクワット、ランジ、デッドリフト、ヒップスラスト、プランクなどから、自分の経験に合う種目を選びましょう。
筋力トレーニング初心者は、自重や軽い負荷で動作を覚えることから始めます。回数や重量を増やす前にフォームを確認し、可能であれば専門家の指導を受けてください。ジャンプ系の種目は着地の負担が大きいため、基礎筋力をつけてから段階的に行います。
6.高強度インターバルは少量から
十分な持久力の土台ができたら、高強度インターバルトレーニング(HIIT)を少量加えると、登りで強度が上がったときの対応力を養えます。たとえば、ウォームアップ後に2〜4分の高強度運動と同程度のゆっくりした回復を3〜5回繰り返します。
高強度セッションは疲労が大きいため、連日行わず、翌日以降の回復も含めて計画してください。トレーニング歴が浅い人や疲労が続いている人は、まず低強度運動を継続することを優先しましょう。痛み、めまい、強い息苦しさなどが出た場合は中止し、必要に応じて医療専門家へ相談してください。
1週間のトレーニング例
次の例は、基礎的な運動習慣があり、週末に雪上へ出られる人を想定したものです。競技レベル、体調、積雪、仕事や生活の予定に合わせて、時間と回数を調整してください。初心者は休養日を増やし、各セッションを短くするところから始めましょう。
| 曜日 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 月 | 休養または軽いモビリティ | 週末の疲労回復 |
| 火 | 低強度のランニングまたはバイク 45〜60分 | 基礎持久力 |
| 水 | 筋力トレーニング 30〜45分 | 脚・体幹の強化 |
| 木 | インターバルまたはテンポ運動 30〜50分 | 高強度への対応 |
| 金 | 休養またはごく軽い運動 | 週末に向けた回復 |
| 土 | 安全な環境での雪上技術練習 60〜120分 | シール歩行・切り返し・滑走 |
| 日 | 低強度中心の長めのセッション | 持久力と補給の練習 |
高強度の日と長時間の日を近づけすぎないことがポイントです。睡眠不足や強い疲労がある日は予定に固執せず、低強度へ変更するか休養に切り替えましょう。
速さより優先したい雪山の安全

トレーニングで体力が向上しても、雪崩、天候の急変、ホワイトアウト、低体温症、道迷いなどのリスクは残ります。入山前には地域の雪崩情報と気象情報を確認し、経験に合うルートと引き返す基準を決めてください。
- 単独行を避け、計画と帰着予定を第三者へ共有する
- 雪崩地形へ入る場合は、必要な教育を受け、救助装備を携行して使い方を練習する
- 地図、コンパス、GPSなど複数のナビゲーション手段を用意する
- 防寒着、予備の手袋、ライト、補給、水分、救急用品を行程に合わせて携行する
- 予定より遅れていなくても、雪や天候、体調が悪化したら引き返す
GPSウォッチやスマートフォンは便利ですが、バッテリー切れや故障、受信状況の変化も想定し、電子機器だけに依存しない準備が必要です。
Suuntoでトレーニングを振り返る
登りのトレーニングでは、速さだけでなく、心拍ゾーン、運動時間、獲得標高、登高速度、トレーニング負荷などを継続して見ると、同じ強度でどれだけ余裕を保てるようになったかを振り返りやすくなります。対応するSuunto Vertical 2などのGPSスポーツウォッチとSuuntoアプリを使い、雪上とクロストレーニングの記録を一つにまとめることができます。
表示できる指標やスポーツモードはモデルやソフトウェアによって異なります。運動前にバッテリー残量と記録設定を確認し、必要なデータを見やすくしたい場合は、「Suuntoで記録できるスポーツ一覧|115種類以上のスポーツモードを解説」も参考にしてください。
山中ではウォッチの数値を追い続けず、地形、雪面、天候、同行者の状態を優先します。記録は安全を保証するものではなく、計画と振り返りを支える材料として活用しましょう。
まとめ
スキーモの登りを速くする近道は、毎回追い込むことではありません。低強度の運動で持久力を育て、異なる運動と筋力トレーニングを組み合わせ、十分な土台ができてから高強度を少量加えることが基本です。装備の重量は見直しても、必須の安全装備は削らないようにします。
SuuntoのGPSスポーツウォッチなら、心拍ゾーン、時間、標高、トレーニング負荷などを記録し、雪上トレーニングと日々の運動をまとめて振り返れます。数値と身体の感覚を照らし合わせながら、山で余裕を持って動ける体力を段階的に育てていきましょう。