複数日にわたるトレイルレースを走り切るには、1日だけ速く走れること以上に、「翌日もまた走れる身体」を作ることが重要です。走行距離や累積標高への対応だけでなく、本番に近い地形での練習、装備のテスト、補給、そしてレース前に疲労を残さない計画まで含めて準備する必要があります。
ステージレースでは、1日目を走り終えてもレースは終わりません。
翌朝、疲労した脚で再びスタートラインに立ち、何日も続けて走ることになります。
カナダのコーチRene Unserは、アルプスを舞台に複数日を走るGORE-TEX Transalpine Runに何度も出場し、同大会のトレーニングプランも作成してきました。
彼女が最初に伝えるのは、シンプルな言葉です。
「レースにコミットする前に、まずトレーニングにコミットすること。」
この記事ではReneのアドバイスをもとに、連日のトレイルレースやステージレースに向けて準備しておきたい5つのポイントを紹介します。

Photo: Carrie Karsgaard
1. レースより先に「トレーニングを続けられるか」を考える
Reneが最初に挙げるポイントは、レースへのエントリーそのものではありません。
そのレースへ向けたトレーニングを継続できるかどうかです。
長距離トレイルやステージレースへの参加を決めると、急に走行距離を増やしたくなるかもしれません。
しかしReneは、成功するためには少しずつ負荷を積み上げ、継続的にトレーニングすることが重要だと話します。
例えば、
- 週に何日走れるか
- 週末に長時間のトレイルへ行けるか
- 登り・下りを含むトレーニング環境があるか
- トレーニング後に十分な回復時間を確保できるか
- 仕事や家庭と両立できるか
まで含めて計画します。
トレーニングプランは「理想的なメニュー」ではなく、自分の生活の中で継続できるものであることが大切です。
まずは低強度で長く動ける土台を作る
複数日を走るレースでは、毎日高強度で走るわけではありません。
長時間動き続ける有酸素能力を作るため、普段のトレーニングでは低強度のランニングやロングトレイルを取り入れます。
ゾーン2のような低強度トレーニングを活用すると、強度を抑えながら持久力の土台を積み上げることができます。
▶︎ ゾーン2ランニングとは?心拍数の目安・効果・やり方を解説
2. 本番に近い地形と累積標高で練習する
Reneが次に重視するのが、レース本番の地形をできるだけ再現することです。
トレイルレースといっても、コースによって特徴は大きく異なります。
- 長い登りが続く山岳コース
- 急な登りと下りを何度も繰り返すコース
- 走りやすい林道が中心のコース
- 岩場やテクニカルなトレイル
- 標高の高いエリア
平地だけでトレーニングしていても、長い登りや急な下りに必要な筋力や足さばきは十分に身につかないことがあります。
目標レースが決まったら、まずコースプロフィールを確認し、
- 1日あたりの距離
- 累積標高
- 登りの長さ
- 下りの長さ
- 路面や地形
を把握しましょう。
近くに山がない場合でも、Reneは可能な範囲で山岳エリアへ足を運び、本番に近い環境を経験しておくことをすすめています。

Photo: Schneider Outdoor Vision
登りと下りは別々の能力として鍛える
累積標高の大きいレースでは、登りだけでなく下りへの対応も重要です。
長い下りでは脚への衝撃が積み重なり、翌日に筋肉痛や疲労が残りやすくなります。
登りでは有酸素能力や筋力、パワーハイク。
下りではフォーム、足さばき、衝撃への耐性。
それぞれ違う能力をトレーニングしておきましょう。
▶︎ トレランの登りを速くするには?持久力・筋力・テクニックを鍛える方法
▶︎ トレランの登りを速くするインターバル練習|VO2max・乳酸閾値の鍛え方
3. 装備は本番と同じ状態でテストする
ステージレースでは、装備の小さな問題が何日にもわたって積み重なることがあります。
Reneは、本番で使用するバッグを、本番と同じようにパッキングして走ることをすすめています。
例えば、
- ランニングベストやバックパック
- シューズ
- ソックス
- 防寒着・レインウェア
- ソフトフラスク
- 補給食
- トレッキングポール
などです。
数十分のランニングでは問題がなくても、数時間走ると擦れたり、肩が痛くなったり、補給食を取り出しにくいことがあります。
本番当日に初めて使う装備をできるだけ減らす。
これは長距離レースで重要な原則のひとつです。
ポールを使うなら「持つ」だけでなく練習する
レースでトレッキングポールを使う予定なら、事前に使い方を練習しておきましょう。
ポールは登りを助けてくれる一方、慣れていないとリズムが崩れたり、腕だけが疲れてしまったりします。
登りだけでなく、平坦区間での収納や取り出しも含めて、本番に近い状況で確認しておくと安心です。
4. 補給もトレーニングの一部として練習する
長距離レースでは、体力だけでなくエネルギーを補給し続ける能力も重要になります。
Rene自身も、普段のトレーニングから本番で使う補給食を試し、レースでエイドステーションに用意される食べ物も事前に確認していました。
ステージレースでは、1日の補給だけでなく、ステージ終了後に翌日へ向けてエネルギーを戻すことも重要です。
トレーニング中から、
- 何を食べると胃腸に合うか
- どのくらいの頻度なら食べ続けられるか
- 固形物とジェルをどう使い分けるか
- 暑い日・寒い日で何を変えるか
- 長時間走った後に何を食べられるか
などを試しておきましょう。
補給はレース当日に突然うまくなるものではありません。
長時間のロングランで、自分に合う方法を探しておくことが大切です。
エイドステーションの食事も事前に確認する
海外のステージレースなどでは、日本のレースとは異なる食べ物が提供される場合があります。
Reneも、目標レースのエイドステーションで提供される食事を事前に確認し、それをトレーニング中に試していました。
大会情報が公開されたら、必携品だけでなく、エイドステーションの内容も確認しておきましょう。
5. 本番前にレースを詰め込みすぎない
目標のステージレースに50kmのステージがあると、
「その前に50kmレースを何本か走っておいた方がいいのでは?」
と考えるかもしれません。
しかしReneは、シーズン後半にレースを詰め込みすぎないことをすすめています。
レースは良いトレーニングになる一方、通常のトレーニングとは違います。
レース前にはテーパリングが必要になり、レース後には回復期間も必要になります。
つまりレースを1本増やすたびに、実際にはその前後を含めて何週間ものトレーニング計画へ影響する可能性があります。
「距離を経験すること」と「良いトレーニングを継続すること」のどちらが今必要かを考えましょう。
目標レースの直前までレースを続けるより、十分なトレーニングと回復を積み上げ、本番にフレッシュな状態で立つ方が重要な場合があります。
ステージレースでは「連日走る練習」も必要?
複数日レースに向けたトレーニングで特徴的なのが、疲労が残った状態でもう一度走る経験です。
例えば、土曜日に長めのトレイルを走り、日曜日にも低〜中強度で走る「バック・トゥ・バック」のトレーニングを取り入れる方法があります。
目的は、2日間とも限界まで追い込むことではありません。
1日目の疲労が残る状態で、
- どのくらい脚が動くか
- どのくらいペースを落とす必要があるか
- 食事や睡眠でどこまで回復できるか
- 装備の擦れや痛みが翌日にどう影響するか
を確認することに意味があります。
ただし、バック・トゥ・バックのロングランは身体への負荷も大きいため、毎週行う必要はありません。
トレーニング歴や回復状態に合わせて取り入れましょう。
翌日も走るために回復をどう考える?
ステージレースでは、フィニッシュした瞬間から翌日の準備が始まります。
1日目を走り終えた後に重要なのは、追加のトレーニングをすることではありません。
- 水分を補給する
- 食事をとる
- 身体を冷やさない
- 必要な装備を整える
- 足や擦れなどの状態を確認する
- できるだけ睡眠時間を確保する
といった基本的な回復行動です。
また、ステージ終了後に「今日のペースは速すぎなかったか」「翌日に余裕を残せたか」を振り返ることも重要です。
ステージレースでは、今日の最高タイムより、明日も走れるペースの方が重要になる場面があります。
長距離レース後の回復については、こちらの記事も参考にしてください。
▶︎ ウルトラマラソン後の回復方法|翌日から1か月のリカバリーと練習再開の目安
HRVや睡眠もひとつの判断材料に
複数日レースでは、毎朝完全に回復した状態になることは期待できません。
それでも、自分の疲労状態を把握しておくことには意味があります。
普段のトレーニングでは、HRV、睡眠、トレーニング負荷、主観的な疲労感などを継続的に確認し、どの程度の負荷なら翌日も動けるのかを理解しておきましょう。
▶︎ HRV(心拍変動)とは?正常値の見方と回復・トレーニングへの活かし方
Suuntoでステージレースの準備を管理する
ステージレースへ向けた準備では、1回のランニングだけを見るのではなく、数週間から数か月のトレーニング全体を振り返ることが重要です。
SuuntoウォッチとSuuntoアプリでは、
- 距離
- 累積標高
- 心拍
- トレーニング負荷
- 睡眠
- HRV
- 長期的なトレーニング履歴
などを確認できます。
例えば、目標レースの各ステージに大きな累積標高があるなら、普段のトレーニングでも「距離」だけでなく何m登ったかを継続的に確認すると、レース特異的な準備につなげやすくなります。
長時間の山岳レースならSuunto Vertical 2
Suunto Vertical 2は、長時間のアウトドアアクティビティや山岳レースで、ルートナビゲーションやオフラインマップを活用したいランナー向けの選択肢です。
ステージごとのルートを事前に確認したり、長時間の行動データを記録したりする用途にも活用できます。
ただし、ウォッチのナビゲーションだけに頼るのではなく、大会の公式コース情報や現地のマーキング、運営からの案内を優先してください。
トレーニング全体を振り返るならSuunto Race 2
Suunto Race 2は、トレイルランニング、インターバル、ロングランなどを含めて、トレーニング負荷や回復を長期的に振り返りたいランナーに向いています。
ステージレースの準備では、「今日たくさん走れたか」だけでなく、数週間にわたって無理なくトレーニングを積み上げられているかを見ることが大切です。
Suunto Vertical 2を見る Suunto Race 2を見る
まとめ|1日だけではなく、翌日も走れる身体を作る
ステージレースや複数日にわたるトレイルレースでは、1日だけ良い走りをしても十分ではありません。
必要なのは、何日も続けて走れる身体と、そのための準備です。
- 自分が継続できるトレーニング計画を作る
- 本番の距離・累積標高・地形を確認する
- レースに近い地形で練習する
- 本番装備を事前にテストする
- 補給もロングランで練習する
- 本番前にレースを詰め込みすぎない
- 必要に応じて連日走る練習も取り入れる
- 毎日の回復まで含めてレースを考える
ステージレースの難しさは、「今日のゴール」が本当のゴールではないことです。
今日走り終えた後にも、翌日のスタートがあります。
だからこそ、速く走る能力だけでなく、疲労を残しすぎず、食べ、眠り、また走れる能力までトレーニングする。
それが、複数日のトレイルレースを最後まで楽しむための準備になります。
トレイルランニング関連記事
- ゾーン2ランニングとは?|心拍数の目安・効果・やり方を解説
- トレランの登りを速くするには?|持久力・筋力・テクニックを鍛える方法
- 登りを速くするインターバル練習|VO2max・乳酸閾値の鍛え方
- ウルトラマラソン後の回復方法|翌日から1か月のリカバリーと練習再開
- HRV(心拍変動)とは?|回復・トレーニングへの活かし方
- トレイルランニングで速くなるには?|心拍・筋力・登り・下りを鍛える
Photos: Carrie Karsgaard / Schneider Outdoor Vision