トレイルランニングで速く、強くなるために必要なのは、ただ走る距離を増やすことではありません。心拍による強度管理、登坂力、筋力、テクニカルな下りへの対応、栄養、回復まで、さまざまな要素を組み合わせることが重要です。
中国を代表するトレイルランナーのひとり、Yao Miaoも、以前は感覚や経験を頼りに走っていました。
しかし現在は、コーチや専門家とともに、ひとつひとつのトレーニングに明確な目的を持たせています。
彼女の考え方を象徴するのが、次の言葉です。
「レースに挑むことでしか、より強い自分には出会えない。」
この記事では、Yao Miaoがどのようにトレーニングを変えてきたのかを通して、トレイルランニングをより計画的に鍛えるためのヒントを紹介します。

「もっと走る」から「より良く鍛える」へ
Yao Miaoは、もともと走る能力に恵まれたアスリートでした。
しかし、トップレベルでさらに成長するためには、「走れる」ということだけでは十分ではありません。
この1年で彼女が大きく変えたのは、トレーニングへの考え方です。
以前は自分の感覚や経験を頼りに走ることが多かったのに対し、現在ではコーチとともに計画を立て、筋力、栄養、回復などの専門家からもサポートを受けています。
目標はトレーニングを厳しくすることではなく、トレーニングの質を高めること。
これはエリートランナーだけの考え方ではありません。
週に数回走る一般のトレイルランナーでも、「今日は何を鍛えるために走るのか」を決めるだけで、練習の意味は変わります。
トレランでは複数の能力を鍛える必要がある
ロードランニングに比べ、トレイルランニングでは環境が常に変化します。
急な登り。
長い下り。
岩や木の根。
泥。
標高。
長時間の運動。
そのため、単純に平地で速く走れるだけでは対応できません。
Yaoのトレーニングでは、主に次のような能力をバランスよく鍛えています。
- 有酸素持久力
- 登坂力
- スピード
- 脚と体幹の筋力
- テクニカルな下りへの対応力
- 長時間運動のための持久力
- 栄養と補給
- 回復
トレイルランニングは、ひとつの能力だけで成立するスポーツではありません。
自分の得意な部分を伸ばしながら、弱点を少しずつ補っていくことが重要です。
▶︎ トレイルランニングの練習方法|初心者向けトレーニングメニューと大会準備

ペースだけでなく心拍を見る理由
トレーニングを始めたころ、Yaoが主に見ていたのはペースと距離でした。
しかし現在では、心拍数がトレーニングやレース戦略を考えるうえで重要な指標になっています。
トレイルでは、1kmあたりのペースだけで運動強度を判断するのが難しいからです。
例えば平地を6分/kmで走るのと、急な登りを10分/kmで進むのでは、後者の方が心拍数が高くなることがあります。
逆に長い下りではペースが速くても、心肺への負荷より脚への衝撃が大きくなる場合もあります。
そのためYaoは、心拍を使って「どれだけ速く進んでいるか」だけではなく、「身体にどれくらい負荷がかかっているか」を確認します。
感覚は重要です。しかし、疲労やレース中の高揚感によって、自分が感じている強度と実際の負荷がずれることもあります。
心拍データは、その感覚を補うもうひとつのフィードバックになります。
登りはペースだけでは判断できない
トレイルランニングで特に心拍が役立つのが登りです。
勾配が急になると、走るスピードが落ちていても運動強度は高くなります。
その状態で「ペースが遅いからもっと頑張ろう」と無理にペースを上げると、レース前半で必要以上にエネルギーを消費してしまうことがあります。
長いトレイルレースでは、登りでどれだけ速く進めるかだけではなく、その後も走り続けられる強度に抑えられるかが重要です。
トレーニングでも、すべての坂を全力で登る必要はありません。
低強度で長く登る日、短い坂で強度を上げる日、パワーハイクを使う日など、目的によって使い分けます。
▶︎ トレランの登りを速くするには?持久力・筋力・テクニックを鍛える方法
テクニカルな下りもトレーニングする
レースでは、登りで大きな差がつくと思われがちです。
しかしトレイルでは、下りの技術もパフォーマンスを左右します。
岩や木の根がある下りでは、心肺能力だけでは速く走れません。
足を置く場所を瞬時に判断する。
身体のバランスを保つ。
スピードをコントロールする。
そして長い下りでも脚を残す。
こうした能力は、ロードでのランニングだけでは十分に鍛えられません。
Yaoのトレーニングでも、テクニカルな下りへの対応は重要な要素のひとつです。
ただし、難しい下りを最初から全力で走る必要はありません。
まずは安全にコントロールできるスピードから始め、地形を読む力や足さばきを少しずつ身につけていきます。
筋力トレーニングを走力につなげる
Yaoの現在のトレーニングには、ランニングだけでなく筋力トレーニングも含まれています。
登りでは、一歩ごとに身体を上へ持ち上げる力が必要です。
下りでは、着地の衝撃を脚で受け止め続けます。
さらに不安定な路面では、体幹を使って身体を安定させなければなりません。
そのため、
- 臀部
- 大腿四頭筋
- ハムストリングス
- ふくらはぎ
- 体幹
などをバランスよく鍛えることが重要です。
筋力は、速く走るためだけではなく、レース後半までフォームを保つためにも必要です。
特に長い下りでは、心肺には余裕があっても脚が耐えられなくなることがあります。
走行距離だけではなく、走る身体そのものを作ることもトレーニングの一部です。
栄養と回復もトレーニングの一部
強くなるためには、練習することと同じくらい回復することも重要です。
Yaoは現在、栄養と回復についても専門家のサポートを受けています。
トレーニングによって身体へ刺激を与えても、十分に回復できなければ次の質の高いセッションにつながりません。
特にトレイルランニングでは、距離だけでは負荷を判断しにくい点に注意が必要です。
同じ20kmでも、平坦なロードと累積標高1,500mの山岳コースでは身体への負担が大きく異なります。
走った距離に加えて、
- 運動時間
- 累積標高
- 心拍
- トレーニング負荷
- 睡眠
- 疲労感
などを見ながら、必要に応じてトレーニングを調整します。
▶︎ ランニングのトレーニング負荷を管理する方法|疲労・進歩をチェック
レースは「答え合わせ」ではなく課題を見つける場所
Yaoにとって、レースは自分の強さを証明するためだけの場所ではありません。
自分に何が足りないのかを見つける場所でもあります。
強いライバルと走る。
苦手な登りに直面する。
予想以上に難しい下りを走る。
補給がうまくいかない。
終盤でペースを維持できない。
レースでは、トレーニングだけでは気づかなかった課題が見えてきます。
そして、その課題を次のトレーニングへ持ち帰ります。
レースを「成功か失敗か」だけで判断するのではなく、次に強くなるための情報を集める機会として考える。
それがYaoの成長を支える考え方です。

データは判断を助けるために使う
YaoのトレーニングでSuuntoウォッチが果たしている役割は、答えを決めることではありません。
心拍、ペース、距離、運動時間などのデータを手元で確認し、身体がどう反応しているのかを理解するための材料を増やすことです。
原文で表現されているように、「データは戦略を支え、決断するのはYao自身」です。
これは、一般のランナーがスポーツウォッチを使うときにも大切な考え方です。
数字が高いからもっと走る。
数字が低いから必ず休む。
そう単純に判断するのではなく、身体の感覚や練習の目的と合わせて考えます。
例えば、
- 今日は低強度で走る予定なのに心拍が高い
- いつもの登りで以前より余裕がある
- 数週間トレーニング負荷が上がり続けている
- レース後半で心拍とペースの関係が変化した
といった傾向を振り返ることで、次のトレーニングを考えるヒントになります。
トレイルランニングやレースを中心に、心拍、トレーニング負荷、オフラインマップなどを活用したいランナーには、Suunto Race 2があります。
レースだけでなく日々のトレーニングを継続して記録し、Suuntoアプリと組み合わせて長期的な変化を振り返ることができます。
まとめ|ハードに走るより、目的を持って走る
Yao Miaoが変えたのは、走ることへの情熱ではありません。
変わったのは、より強くなるためのトレーニング方法です。
ただ距離を増やすのではなく、心拍を確認する。
登りを鍛える。
下りの技術を磨く。
筋力をつける。
栄養と回復を整える。
そしてレースで見つかった課題を、次のトレーニングへ戻す。
こうした一つひとつの積み重ねが、より完成度の高いトレイルランナーを作っていきます。
「今日はどれだけ追い込めたか」ではなく、「今日は何を鍛えることができたか」。
次のトレーニングでは、その視点から自分の走りを振り返ってみてください。