SUUNTOブログ
メンタルタフネスとは?プロのウルトラランナー・トレイルランナーに学ぶ心の鍛え方
長いレースや厳しいトレーニングでは、体力だけでなく「苦しい状況をどう受け止めるか」が、その後の行動を左右します。ただし、メンタルタフネスとは、痛みや疲労を無視して耐え続けることではありません。状況を見極め、自分にできることへ意識を戻し、納得できる行動を選び直す力です。
山岳ウルトラランナーとして長く活動してきたSuuntoアンバサダー、アントン・クルピチカも、メンタルの強さは一度身につければ終わりではなく、何度も育て直すものだと語ります。この記事では、約563kmのグラベルレース「Unbound XL」と3週間のバイクツアーで得た彼の気づきを、日本のランナーやサイクリストにも取り入れやすい形で紹介します。
Unbound XL 2022のスタート前。Photo: Sami Sauri
目次
メンタルタフネスとは?
力を出し切れなかったUnbound XL 2021
結果から、自分が納得できる努力へ
苦しいときほど「今」に戻る
メンタルの強さは何度でも育て直す
日々のトレーニングで実践する5つの方法
我慢と適切な判断を混同しない
まとめ
メンタルタフネスとは?
メンタルタフネスは、つらさを感じなくなる能力ではありません。疲労、不安、失敗などがある状況でも、感情に飲み込まれず、次に取れる行動を選ぶ力です。
持久系スポーツでは、心の中にある迷いや不安が、短い時間の中で大きく現れます。「まだこんなに距離が残っている」「この登りが終わらなかったらどうしよう」と考え続けるほど、目の前の一歩が重く感じられることもあります。
アントンが経験から見つけたのは、未来の苦しさを先取りするのではなく、現在の状況を受け入れ、その瞬間にできる最善へ意識を戻すことでした。
力を出し切れなかったUnbound XL 2021
2021年、アントンは米国カンザス州で開催される約350マイル(約563km)のグラベルレース、Unbound XLに初めて出場しました。走行時間は約28時間。しかし、フィニッシュしたとき、ウルトラエンデュランスで感じてきた高揚感や達成感はありませんでした。
振り返ると、最初の約402kmは集中して走れていた一方、最後の約161kmでは暑さと眠気に気持ちを支配され、できるだけ無難に進むことへ意識が傾いていました。完走はしたものの、自分の力を出し切らなかった感覚が残ったのです。
ここで彼が学んだのは、順位やタイム以前に、「その場で自分なりの最善を尽くしたか」が体験への満足度を大きく変えるということでした。リスクを無条件に取るという意味ではなく、自分で選んだ挑戦に対して、最後まで主体的に関わることの大切さです。
厳しい状況で、自分がどう行動するかが問われます。Photo: Sami Sauri
結果から、自分が納得できる努力へ
長い競技生活の中で、アントンのレースに対するモチベーションは変化しました。以前は、ほかの選手に勝つことや、トップアスリートとして認められることが大きな原動力だったといいます。
けがや経験を重ねた現在は、レースを「自分のベストを試せる貴重な機会」と捉えています。競い合う選手と同じ困難に向き合い、互いに刺激を受けながら、自分が納得できる努力をする。フィニッシュ順位にかかわらず、その姿勢が成長や満足感、長く残る記憶につながると考えるようになりました。
外からの評価は、自分だけではコントロールできません。一方、「今日の状況で何に集中するか」「どのように振る舞うか」は選べます。走る理由を見失いそうなときは、ランニングのモチベーションを維持する方法も参考にしながら、自分がこの挑戦から得たいものを言葉にしてみましょう。
苦しいときほど「今」に戻る
Unbound XLの約1か月後、アントンは3週間で約3,700kmを自転車で移動しながら、ロッキー山脈の高峰6座を走り、登る旅に出ました。毎日のように、向かい風、荒れた路面、雨、暑さ、長い登りなどに直面する厳しい行程でした。
最初の1週間は、苦しくなるたびに「この坂が早く終われば」「もう次の町に着いていれば」と考えていました。しかし、意識が未来へ飛ぶほど、今の時間は終わりがないように感じられます。
そこで彼は、自分の弱さやその日の状況を否定せず、「今できるのは、その瞬間の最善を尽くすことだけ」と受け止めました。すると不安が少しずつ薄れ、現在の一歩が耐えられるものに変わり、ときには楽しささえ感じられるようになったといいます。
苦しいときの考え方
「いつ終わるのか」ではなく、「今の自分にできることは何か」と問い直す。呼吸を整える、補給する、ペースを落とす、次の曲がり角まで進むなど、行動を小さく具体化します。
計画どおりに進まない日も、長い挑戦の一部です。Photo: Sami Sauri
メンタルの強さは何度でも育て直す
翌年のUnbound XLへ向け、アントンは1日約240kmを3日間走るバイクツアーを計画しました。しかし初日の夜は予想以上に冷え込み、寝袋の保温力も足りず、ほとんど眠れませんでした。翌朝、計画を切り上げて帰宅します。
この失敗から気づいたのは、以前の長旅で得たメンタルの強さが、永久に続くわけではないということでした。困難の中で落ち着きを保つ力は、到達して終わるものではありません。体力と同じように、状況に合わせて繰り返し練習し、育て直す必要があります。
2022年のUnbound XLでは、序盤の転倒、パンク、単独で走る夜、終盤の豪雨など、多くのトラブルが起きました。それでも彼は、一つずつ対処し、泥と雨も「フィニッシュ後に語れる物語になる」と捉え直しながら進みました。前年との違いは、困難が減ったことではなく、困難への向き合い方が変わったことでした。
一度に一つずつ。意識を現在へ戻します。Photo: Sami Sauri
日々のトレーニングで実践する5つの方法
メンタルタフネスは、本番だけで突然発揮されるものではありません。普段のトレーニングから、次の方法を試してみましょう。
目的を自分の言葉にする:順位や周囲の評価だけでなく、「最後まで判断を続ける」「未知の距離に挑む」など、自分が大切にしたい姿勢を決めます。
課題を小さく区切る:ゴールまでの残り距離ではなく、次のエイド、次の登り、次の10分など、今取り組める単位へ分けます。
事実と予測を分ける:「脚が重い」は現在の事実でも、「もう完走できない」は予測かもしれません。補給、ペース、装備、体調を確認してから判断します。
練習後に振り返る:苦しくなった場面、頭に浮かんだ言葉、実際に取った行動、次回変えたいことを記録します。
回復を含めて継続する:疲労が強い日に予定を変えることも、長期的な目標へ向けた判断です。トレーニングで強くなるための回復と適応も確認し、休養まで含めて計画しましょう。
長時間動く中で考え方や補給を試すなら、いきなり極端な距離へ挑むのではなく、ロング走・LSDの実践方法を参考に、現在の運動習慣から段階的に時間を延ばしてください。
我慢と適切な判断を混同しない
メンタルの強さは、すべての痛みや不調を無視して続けることではありません。鋭い痛み、めまい、意識の混乱、低体温症や熱中症が疑われる症状、動作の変化を伴うけがなどがある場合は、競技やトレーニングの中止を含め、安全を優先してください。
また、装備不足や悪天候など、継続することで危険が大きくなる状況では、引き返すことも重要な判断です。「諦めないこと」と「計画に固執すること」は同じではありません。
レース中に心が折れそうな場面で使える具体的な方法は、コートニー・ドウォルターの6つのメンタル術でも紹介しています。
まとめ|メンタルタフネスは「今できること」へ戻る力
アントン・クルピチカの経験が教えてくれるのは、メンタルタフネスは生まれつきの強さでも、一度獲得して終わる能力でもないということです。
結果だけでなく、自分が納得できる努力に目を向ける
未来の苦しさを先取りせず、現在の行動へ戻る
困難を小さな課題に分け、一つずつ対処する
失敗や中断も、次の判断に生かす
危険な痛みや体調不良では、安全を優先する
次のトレーニングでは、苦しいと感じた瞬間に「今の自分が選べる、最も小さな行動は何か」と問いかけてみてください。その繰り返しが、長い挑戦を支える力になっていきます。
挑戦を記録し、次の一歩につなげよう
日々のトレーニングから長時間のレースまで、ペース、心拍数、ルート、標高などを確認できるSUUNTOのスポーツウォッチをご覧ください。
SUUNTOのスポーツウォッチを見る
Suuntoアプリで路面情報を確認する方法|登山・トレイル・サイクリングのルート計画に活用
知らない場所でランニングやサイクリングのルートを計画するとき、「この道は舗装されているのか」「トレイルとして走れるのか」は、地図を見ただけでは判断しにくいことがあります。Suuntoアプリの路面情報を使うと、舗装路、滑らかな未舗装路、荒れた未舗装路を地図上で色分けして確認できます。
この記事では、Suuntoアプリで路面情報を表示し、ランニング、トレイルランニング、グラベルライド、マウンテンバイクなどのルート計画に活用する方法を紹介します。
目次
Suuntoアプリの路面情報とは
3種類の路面と色分け
路面情報を表示してルートを作る方法
スポーツ別の活用例
ヒートマップや3Dマップとの組み合わせ
利用前に知っておきたい注意点
まとめ
Suuntoアプリの路面情報とは
路面情報は、Suuntoアプリの地図に道路やトレイルの表面状態を重ねて表示する機能です。行き先の道が舗装路なのか、砂利道なのか、岩や土を含む荒れた道なのかを事前に把握し、アクティビティに合うルートを検討できます。
路面タイプは複数を同時に選択でき、ルートを作成している途中でも表示を切り替えられます。たとえばロードバイクでは舗装路を中心に、グラベルライドでは滑らかな未舗装路を含めて探すなど、目的に合わせた使い分けが可能です。
3種類の路面と色分け
路面タイプ
表示色
含まれる路面の例
活用しやすいスポーツ
舗装路
ライトブルー
アスファルト、コンクリートなど
ロードランニング、ロードサイクリング、ローラースキー
滑らかな未舗装路
イエロー
砂利道、比較的整ったダートなど
グラベルライド、ランニング、ハイキング
荒れた未舗装路
レッド
土、草、泥、岩などを含む道
トレイルランニング、マウンテンバイク、ハイキング
色は路面の分類を見分けるための目安です。実際の通行可否、道幅、勾配、路面の乾燥状態、技術的な難易度を保証するものではありません。
路面情報を表示してルートを作る方法
Suuntoアプリで地図を開く:ホーム画面の地図プレビュー、またはナビゲーションバーの地図アイコンからマップ画面へ移動します。
路面情報を選ぶ:地図のレイヤーから路面情報を開き、表示したい路面タイプを選択します。複数の路面を同時に表示することもできます。
行きたいエリアを確認する:色分けされた道路やトレイルを見ながら、スポーツや装備に合う候補を探します。
ルートを作成する:スタート地点と経由地点を設定し、距離や高度プロファイルも確認します。必要に応じてウェイポイントを追加します。
保存してウォッチへ同期する:ルート名と対象スポーツを設定して保存し、対応するSuuntoウォッチへ同期します。
アプリの画面名やアイコンの位置は、iOS/Android、アプリのバージョン、端末によって異なる場合があります。利用前にSuuntoアプリを最新バージョンへ更新してください。
GPXファイルの読み込みやウォッチへの同期を含む詳しい手順は、「GPXルートをSuuntoウォッチに入れる方法」も参考にしてください。
スポーツ別の活用例
ロードランニング・ロードサイクリング
舗装路を表示すると、走りやすい道路をつないだルートを検討しやすくなります。ただし交通量や歩道、自転車通行規制までは路面タイプだけで判断できません。現地の交通ルールと安全情報も必ず確認してください。
グラベルライド
舗装路と滑らかな未舗装路を同時に表示すると、アクセス区間とグラベル区間を組み合わせやすくなります。タイヤ幅や車体、経験に合わない荒れた未舗装路が含まれていないかも確認します。
トレイルランニング・マウンテンバイク
荒れた未舗装路は、土や草、泥、岩などを含む可能性があるルートを探す手掛かりになります。一方で、降雨後や季節によって難易度は大きく変わります。立入禁止区間や自転車の進入規制、自然保護区域のルールを優先してください。
登山・ハイキング
路面情報だけでなく、等高線、高度プロファイル、距離、予想行動時間を合わせて確認することが重要です。山での計画全体は「登山ルートの計画方法|距離・標高・天候を確認する7つのポイント」で詳しく紹介しています。
ヒートマップや3Dマップとの組み合わせ
Suuntoアプリでは、路面情報のほかにスポーツ別ヒートマップ、2D/3Dマップ、人気ルート、人気のスタート地点などもルート探しに活用できます。
ヒートマップ:ほかのユーザーがそのスポーツでよく利用しているエリアを探す手掛かりになります。
3Dマップと高度プロファイル:登り下りや地形をイメージし、距離だけでは分からない負荷を確認できます。
人気ルート:土地勘のない場所でルート候補を探すときに役立ちます。
ウェイポイント:分岐、補給地点、山小屋など、行動中に確認したい地点を記録できます。
路面、利用状況、標高を別々に見るのではなく、複数の情報を重ねて判断すると、目的に合うルートを組み立てやすくなります。
利用前に知っておきたい注意点
Suuntoアプリの路面情報は、オープンな地理データベースであるOpenStreetMapのデータを利用しています。情報はコミュニティによって追加・更新されるため、地域によってデータの詳しさや更新時期が異なり、現地の状態と一致しない場合があります。
出発前に確認したいこと
通行止め、私有地、立入禁止、工事、季節閉鎖の有無
当日の天候、降水量、積雪、路面状況
距離、標高差、補給地点、エスケープルート
ルートがウォッチへ同期されているか、バッテリー残量が十分か
必要に応じて紙の地図、コンパス、予備電源を携行しているか
地図やナビゲーションは計画と行動を支えるツールですが、安全を保証するものではありません。現地の標識、管理者の案内、交通規則を優先し、状況に応じて引き返す判断をしてください。
まとめ|路面を確認して、目的に合うルートを選ぼう
Suuntoアプリの路面情報を使うと、舗装路、滑らかな未舗装路、荒れた未舗装路を地図上で見分けながらルートを計画できます。ロードランニングからグラベルライド、トレイルランニング、登山まで、スポーツと装備に合う道を選ぶための便利な判断材料です。
ヒートマップ、3Dマップ、高度プロファイルも組み合わせ、出発前には現地の規制や天候を別途確認しましょう。準備したルートを対応するSuuntoウォッチへ同期すれば、アクティビティ中のナビゲーションにも活用できます。
Suuntoアプリで次のルートを計画しよう
ルート作成、路面情報、ヒートマップ、トレーニング分析など、Suuntoアプリの機能をチェックできます。
Suuntoアプリについて詳しく見る
The athlete-entrepreneur who knows the value of hard work
Talk to Christian Meier for a few minutes and it’s clear the former pro road cyclist who competed in all three European Grand Tours during his career is spilling over with ideas and passion to make good things happen.
Exuding entrepreneurial self-belief and drive, Christian lives in Girona, Spain where he juggles multiple businesses while finding time to ride bikes and train for trail running ultra marathons. He’s currently training for the 101 km Courmayeur-Champex-Chamonix (CCC), one of the flagship races at Ultra-Trail du Mont-Blanc (UTMB).
“Ultra races are like grand adventures where you go through the whole range of emotions while spending the day and sometimes night in nature while pushing yourself to your physical limits,” Christian says. “These types of adventures need equipment that can keep up; tough, accurate and with a battery life that makes the journey - it’s the Suunto 9 Baro for me!”
Christian competing at Salomon Ultra Pirineu.
Building businesses for good
While he’s not preparing for that, riding bikes, overseeing his and his wife’s Espresso Mafia roastery and cafe and specialist cycling cafe La Fabrica, he’s building Chance Running, a revolutionary running apparel brand that prioritizes doing good for the planet. With every purchase, Chance Running plants two trees with its partner Tree Nation and offsets 200 kg of carbon and removes one kilogram of ocean bound plastic.
“Chance is an opportunity to rethink the mission of a company - making it mission driven rather than profit driven,” Christian says. “It has allowed us to try and help the planet we are out enjoying everyday, through the avenue we know best, sport. Being carbon neutral is no longer enough and we want to push the boundaries of what’s possible with a planet first approach.”
Where it began
Christian grew up in a hard-working German-Canadian family in a small rural community in New Brunswick in Canada. The “farm-to-table” family worked a farm and ran a butcher shop and restaurant. His mother worked the farm while his father, a machinist, was a capable craftsman who built the family home.
“We lived from the land and I was exposed to an incredible set of skills and work ethic while the whole time being immersed in nature,” Christian says. “Though at the time it was tough being a kid and my summers weren’t at camp like the other kids, but spent on my grandparents farm working. It shaped me into who I am today.”
Christian competing at the Atlas Mountain Race in Morocco, 2019. © Lian van Leeuwen/Atlas Mountain Race
Falling in love with bikes
That upbringing prepared him for the grind of a competitive cycling career. One day as a kid he picked up a mountain biking magazine and that was it - he got a bike and was 100% committed. Cross-country, downhill, road to track - he lived and breathed bikes. So much so he decided he wanted to make riding his job. Pro road cycling was where the money was so he went to Belgium to test the waters. There, by chance, he met a couple of roadies while out cycling and they invited him to train with their team.
“I got my ass kicked to be honest,” he says. “But rather than quit I went home and trained even harder.”
Hard work pays off
It paid off because Christian eventually raced professionally for the Symmetrics, Garmin-Chipotle, United Healthcare and Orica-GreenEdge teams from 2005 to 2016. He won Canada’s National Road Championships in 2008 and had many more domestic race victories. He also placed 15th on day 11 at the 2012 Giro d'Italia.
Now based in the cycling haven Girona, he’s still crazy about bikes; from road, to gravel to bike packing trips and is a prominent member of the local cycling culture.
“Suunto connected to me on a personal level because they take sustainability seriously,” Christian says. “Manufactured in Finland, using renewable energy, refurbishing returned watches. Besides the performance features these are factors that are quite important to me and I am proud to form a part of their community.”
Lead image: © Ultra Pirineu
誰もがアウトドアを楽しめる場所へ|「アライシップ」から考える4つの行動
山、トレイル、ランニング、キャンプ。アウトドアは誰にでも開かれているように見えますが、すべての人が同じように「ここにいていい」「安心して楽しめる」と感じているとは限りません。アウトドアをより多くの人が楽しめる場所にするために、私たち一人ひとりにできることがあります。
その考え方のひとつが、「アライシップ(Allyship)」です。
アライシップという言葉は、日本では企業や職場におけるDE&I、多様性やインクルージョンの文脈で耳にすることが増えてきました。
しかし、その考え方はオフィスの中だけのものではありません。
同じ山を歩く人。同じトレイルを走る人。同じ岩場を登る人。同じアウトドアコミュニティに参加する人。
自分とは異なる経験を持つ人にも、その場所を楽しめる機会があるか。そう考えることも、アライシップの第一歩です。
SuuntoアスリートでウルトラランナーのRyan Montgomeryは、アウトドアにおける多様性について発信を続けています。この記事では、Ryanの言葉をもとに、アライシップとは何か、そしてアウトドアで私たちに何ができるのかを考えます。
目次
アライシップとは?
なぜアウトドアにもアライシップが必要なのか
1. 気づいたことに声を上げる
2. 自分以外の人に「マイクを渡す」
3. 分かったつもりにならず、学び続ける
4. コミュニティを支える
特別な活動をしなくても、できることはある
誰もがアウトドアを楽しめる場所へ
Photo by Brave Trails, taken at Camp Brave Trails.
アライシップとは?
「アライ(Ally)」は、もともと「味方」「協力者」を意味する言葉です。
アライシップとは、自分とは異なる背景や経験を持つ人が直面している課題を知り、その人たちの声や活動を支えるために行動することを指します。
Ryanは、アライシップを一度何かをして終わるものではなく、「学び、行動し、さらに学び、また行動する」という継続的なプロセスとして捉えています。
そして、そのために使えるものは人によって異なります。
知識
経験
時間
お金
発信力
人とのつながり
道具や場所
大きな影響力を持つ人だけがアライになれるわけではありません。
自分がすでに持っているものを使って、誰かが参加しやすくなるように行動する。
それもアライシップです。
Photo by Latino Outdoors.
なぜアウトドアにもアライシップが必要なのか
自然そのものは、誰かを選んで受け入れたり拒んだりするわけではありません。
しかし、そこへアクセスするまでの環境や、アウトドアコミュニティの中で得られる経験は、人によって異なります。
Ryanは、クィアやLGBTQ+の人々、人種的マイノリティ、障がいのある人などが、アウトドアへ参加するうえでさまざまな壁に直面することがあると指摘しています。
トレイルですれ違った人に「こんにちは」と声をかける。
笑顔を返してもらう。
一人で山へ行っても、その場所で不安を感じない。
多くの人にとっては当たり前に思える体験でも、すべての人にとって同じとは限りません。
外見、肌の色、身体的特徴、性別表現、性的指向、障がいなどを理由に、じろじろ見られたり、不必要なコメントを受けたり、ときには差別的な言動に遭遇したりすることもあります。
「自然が好きなら、誰でも同じように楽しめるはず」と思い込まず、人によって経験が違うことを知る。
そこからアライシップは始まります。
Photo by Brave Trails, taken at Camp Brave Trails.
アウトドアで良いアライになるための4つの行動
「アライシップが大切なのは分かった。でも、実際に何をすればいい?」
Ryanがよく受けるというこの質問に対して、彼は4つの具体的な行動を提案しています。
1. 気づいたことに声を上げる
Speak Up.
問題のある言動を見たり聞いたりしたとき、何も言わずに通り過ぎるのではなく、必要であれば声を上げること。
差別的な発言や誰かを排除するような言動を、その場の「冗談」として終わらせないこともそのひとつです。
もちろん、いつでも大きな議論を始める必要があるわけではありません。
自分が学んだことを友人と話す。
アウトドアにおける多様性についての記事を共有する。
コミュニティの中で「こういう見方もある」と伝える。
小さな声でも、それまで話題になっていなかったことを言葉にすることで、次の会話が始まることがあります。
2. 自分以外の人に「マイクを渡す」
Pass the Microphone.
自分が話すことだけが支援ではありません。
ときには、自分とは異なる経験を持つ人の話を聞き、その声が届く場所を増やす方が重要です。
アウトドアの世界にも、さまざまなアスリート、ガイド、ランナー、登山者、コミュニティリーダーがいます。
いつも同じような人だけが紹介され、同じような人だけがイベントで話しているなら、まだ知られていない人の活動に目を向けてみる。
Ryanはこれを「マイクを渡す」と表現しています。
実際のマイクを持っていなくても構いません。
席をひとつ増やす。誰かを紹介する。発言するスペースを作る。
それも同じ考え方です。
3. 分かったつもりにならず、学び続ける
Learn, Don’t Assume You Know Everything.
Ryanが特に大切だと考えているのが、「学ぶこと」です。
自分とは違う経験について、すべて理解していると思わない。
質問する。
好奇心を持つ。
そして、まず相手の話を聞く。
誰かの経験を理解しようとするとき、自分自身の経験だけを基準にしてしまうと、見えないことがあります。
本を読むこともできます。
当事者が発信している記事やSNSを見ることもできます。
アウトドアコミュニティがどんな活動をしているのか知ることもできます。
Ryanは、自身の学びに役立った資料や発信者として、Carolyn Finneyの『Black Faces, White Spaces』、Robin Wall Kimmererの『Braiding Sweetgrass』、ランナーでエクイティ・アドボケイトのAlison Désirなどを紹介しています。
アライシップに「全部理解した」というゴールはありません。
学んだことによって考えが変わることも、そのプロセスの一部です。
4. コミュニティを支える
Donate to Support Community Groups.
時間や資金に余裕があるなら、アウトドアへのアクセスを広げる活動をしている団体やコミュニティを支援する方法もあります。
Ryanは、若いLGBTQ+の人々にアウトドア体験を提供するBrave Trails、黒人コミュニティと自然とのつながりを広げるOutdoor Afro、ラテン系コミュニティのアウトドア活動を支えるLatino Outdoorsなどを紹介しています。
支援は寄付だけではありません。
イベントに参加する。
活動を知る。
発信をフォローする。
周囲の人へ紹介する。
ボランティアとして時間を使う。
自分にできる形でコミュニティとつながることができます。
Photo by Brave Trails, taken at Camp Brave Trails.
特別な活動をしなくても、できることはある
「アライシップ」と聞くと、社会運動に参加したり、大きな発信をしたりしなければならないように感じる人もいるかもしれません。
しかし、Ryanが伝えているのはもっと日常的なことです。
例えば、アウトドアの場でもこんな行動が考えられます。
初めて参加した人が一人になっていたら声をかける
コミュニティ内で差別的な発言があれば、そのままにしない
自分と違う背景を持つアウトドア愛好家の話を聞く
イベントを企画するとき、誰が参加しやすく、誰が参加しにくいかを考える
自分が知らないことについて、決めつける前に尋ねる
さまざまな人がアウトドアを楽しんでいる姿を紹介する
どれも、小さなことに見えるかもしれません。
しかし、アウトドアコミュニティは、そこにいる一人ひとりによって作られています。
誰かが「ここなら参加しても大丈夫」と感じられるかどうかは、設備やルールだけでなく、その場にいる人の言葉や態度によっても変わります。
誰もがアウトドアを楽しめる場所へ
Ryanは自然界そのものを例に挙げ、多様性が生態系を豊かにすると話しています。
アウトドアコミュニティも同じかもしれません。
山を速く走る人。
ゆっくり歩く人。
初めてキャンプをする人。
何十年も山に通っている人。
異なる文化や背景、経験を持つ人。
アウトドアを楽しむ理由も、そこで感じることも、人それぞれです。
だからこそ、誰か一人の経験を「アウトドアとはこういうもの」と決めつける必要はありません。
自分が楽しんでいるこの場所を、ほかの人も楽しめる場所にするために何ができるだろう。
声を上げること。
場所を譲ること。
話を聞くこと。
学び続けること。
誰かの活動を支えること。
その一つひとつが、アウトドアをより開かれた場所にしていきます。
アライシップは、誰かの代わりに話すことではありません。
同じ場所を楽しむ仲間として、必要なときに隣に立ち、声が届くように支えること。
アウトドアを愛する私たち一人ひとりに、できることがあります。
By Ryan MontgomeryLead images by Latino Outdoors. Additional images courtesy of Brave Trails and Latino Outdoors.
MTBバイクパッキングでカナダの秘境へ|200km・8日間の山岳遠征
MTBバイクパッキングと聞くと、荷物を積んだマウンテンバイクでトレイルを走り続ける旅を想像するかもしれません。しかし、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の山奥へ向かった5人の旅では、4日目までに自転車へ乗れた時間はわずか約10%。残りの90%は、MTBを押すか、担いで進むことになりました。
岩場、氷河、藪、雨、そして地図上では分からなかった地形。
約200kmを8日間かけて進むはずだったこの旅は、単なるMTBライドというより、バイクパッキング、登山、ハイク、フリーライドを組み合わせた山岳遠征と呼ぶ方が近いものになっていきます。
計画通りに進めないとき、どこまで前へ進み、どこでルートを変えるのか。
カナダの秘境で繰り広げられた、少し常識外れなMTBアドベンチャーを紹介します。
目次
これはMTBの旅なのか、それとも山岳遠征なのか
約200km・8日間。Niut Valleyへ
乗車10%、ハイク90%
「進む」より重要だったルート変更の判断
フリーライド・バイクパッキングという旅のスタイル
氷河と岩場を越える“近道”
その先で待っていた最高のライド
山岳アドベンチャーではナビゲーションも装備のひとつ
まとめ|予定通りに進まないからこそ、冒険になる
これはMTBの旅なのか、それとも山岳遠征なのか
Kevin Landry、JF Newton、Margus Riga、Kenny Smith、Peter Wojnarの5人が向かったのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州に広がるチルコティン山脈。
目的は、まだ知られていないフリーライドラインを求めて、MTBとともに山深くへ入ることでした。
しかし、彼らが選んだ場所は「MTBで走れるトレイルをつなぐ旅」と呼ぶには、あまりにも過酷でした。
歩くだけでも難しい地形を、自転車を持って越えていく。
彼ら自身も、この旅を単なる“アドベンチャー”より、“エクスペディション=遠征”と呼ぶ方がふさわしいと感じるほどでした。
約200km・8日間。Niut Valleyへ
舞台となったのは、ブリティッシュコロンビア州北部のNiut Valley。
コースト山脈とチルコティン高原がぶつかるこの地域には、整備されたトレイルネットワークがほとんどありません。
経験豊富なハイカーですらめったに入らない場所を、彼らはMTBを携えて約200km、8日間かけて進む計画を立てました。
通常のバイクパッキングなら、道の状態や水場、距離、累積標高などを確認しながらルートを組み立てます。
しかし、地図の上で線を引けても、その線を現実に通過できるとは限りません。
特に人の少ない山岳地帯では、衛星画像や地形図から想像した以上に、岩、藪、斜面、雪、氷河などが進行を難しくすることがあります。
▶︎ バイクパッキング初心者ガイド|装備・ルート・荷物を準備する9つのポイント
乗車10%、ハイク90%
遠征4日目。
彼らが記録した数字は、「Biking 10:Hiking 90」。
ここまで自転車に乗れたのは全体の10%にも満たず、残りはMTBを押すか、担いで進んでいました。
目の前には、切り立った花崗岩、崩れやすいガレ場、そして古い氷河。
自転車のための道などありません。
それでも、自転車を持ってきたことに意味がないわけではありません。
この旅の目的は、「最初から最後までペダルをこぐこと」ではなく、人の少ない山岳地帯を越え、その先にある走れる斜面を探すことだったからです。
走れる区間が少ないからこそ、最高の一本にたどり着いたときの価値も大きくなります。
「進む」より重要だったルート変更の判断
旅の途中、彼らの前に現れたのが、複雑な地形が入り組んだ谷でした。
それまでにも厳しいルートを越えてきたメンバーでしたが、このとき初めて、予定していたルートそのものを変更することを真剣に考えます。
地形の難しさだけではありません。
気圧は徐々に低下し、Suunto 9のストームアラームも悪天候の接近を示していました。
もし雪が20cm積もった状態で複雑な谷底へ入れば、脱出そのものが難しくなる可能性があります。
そこで彼らは、当初計画したルートをそのまま進むことをやめました。
アウトドアでは「計画通り進むこと」より、「状況が変わったときに計画を変えられること」の方が重要になる場面があります。
ルート、天候、時間、疲労、装備。
複数の情報を合わせて判断し、必要なら引き返す、迂回する、目的地を変更する。
それも山でのナビゲーションの一部です。
フリーライド・バイクパッキングという旅のスタイル
彼らは2016〜2017年ごろから、この独特なスタイルの遠征を続けてきました。
仲間内では「フリーライド・バイクパッキング」と呼ばれるスタイルです。
一般的なバイクパッキングとは少し違います。
大きな山でのMTBフリーライド、スキーツーリング、ロングトレイルのハイク、バイクパッキング、登山。
それらを混ぜ合わせ、山の稜線やシュートをつなぎながら、できるだけ走れる場所を探していきます。
谷底を避けるのにも理由があります。
標高の低い場所では藪が濃くなり、自転車を押すことすら難しくなるからです。
そのため、ときには遠回りに見える稜線の方が、結果的には進みやすいこともあります。
地図上の最短距離と、現地で最も進みやすいルートは、必ずしも同じではありません。
氷河と岩場を越える“近道”
予定していた谷を避けるため、彼らが選んだのは峠を越えて元のルートへ戻る迂回路でした。
地図上では“近道”に見えます。
しかし実際には、氷河、その下に続く不安定なガレ場、さらに急なスクランブリングが待っていました。
片手で岩をつかみ、もう片方でバックパックに載せたMTBを支える。
そんな場所を登り切った先では、横殴りの雨と冷たい風が待っていました。
ルートを変更したからといって、楽になるとは限りません。
それでも、悪化する天候の中でより危険な谷へ入るより、状況を把握したうえで別の選択肢を取ることが重要でした。
その先で待っていた最高のライド
寒さに震えながら稜線へ到達した時点では、この旅が成功するのか、彼ら自身にもまだ分かりませんでした。
ところが、その先に待っていたのは、谷へ向かって延びる素晴らしい下降ルートでした。
周囲にはMTBで走りたくなるようなシュートがいくつも並んでいます。
メンバーはそこにベースキャンプを設け、2日間かけて一本ずつラインを走りました。
天候も回復し、路面の状態も良好。
キャンプの近くの湖で泳ぎ、夜には焚き火を囲む時間もありました。
もちろん、これで簡単に帰れるわけではありません。
最後に残っていた“穏やかな15kmのトレイル”は、実際には約25kmに及ぶ藪だらけの道でした。
藪があまりにも密集していたため、MTBのペダルを外さなければ前へ進めない場所すらあったといいます。
最後まで、計画通りにはいかない旅でした。
山岳アドベンチャーではナビゲーションも装備のひとつ
人の少ない山岳地帯では、「現在地が分かる」だけでは十分ではありません。
予定していたルートを確認しながら、地形や天候に応じて次の選択肢を考える必要があります。
Suuntoアプリでは、事前にルートを作成したり、GPXルートを取り込んだりできます。
作成したルートを対応するSuuntoウォッチへ同期しておけば、スマートフォンの通信が届きにくい環境でも、ウォッチ上でルートやオフラインマップを確認できます。
▶︎ Suuntoアプリで登山・トレイルのルートを作る6つの方法|GPX・ヒートマップも解説
長時間の登山、バイクパッキング、トレイルランニングなど、山でのアドベンチャーを重視するなら、Suunto Vertical 2はルートナビゲーション、オフラインマップ、高度・気圧情報などをひとつのウォッチで確認できる選択肢です。
もちろん、ウォッチが安全を保証してくれるわけではありません。
地図、天候、現在地、自分たちの体力と時間を確認しながら、判断するための情報を増やす。
それが山岳アドベンチャーでナビゲーションツールを持つ意味です。
Suunto Vertical 2を見る
まとめ|予定通りに進まないからこそ、冒険になる
約200km、8日間。
MTBを持って山へ入ったにもかかわらず、旅の大部分は自転車を押したり担いだりする時間になりました。
予定したルートを変更し、氷河や岩場を越え、ようやく最高のフリーライドラインへたどり着く。
効率だけを考えれば、もっと簡単な場所でMTBを楽しむこともできたはずです。
それでも彼らがこうした遠征を続けるのは、走ることだけでは得られない体験がそこにあるからでしょう。
ルートを考え、自然の変化を読み、ときには予定を捨てながら、自分たちの力で進む。
バイクパッキングの魅力は、目的地へ最短距離で着くことだけではありません。
予定していた線と現実の山との間で、どんな選択をするか。
その過程そのものが、旅になります。
All images © Margus Riga
バイクパッキング初心者ガイド|装備・ルート・荷物を準備する9つのポイント
バイクパッキングは、自転車に必要な荷物を積み、旅やキャンプを楽しむスタイルです。徒歩より広い範囲を移動でき、舗装路だけでなく、グラベルや林道を組み合わせたルートも楽しめます。
一方、普段のサイクリングとは違い、荷物を積んだ自転車の操作、パンクなどの修理、補給、宿泊場所、バッテリー管理まで自分で準備する必要があります。
この記事では、初めてのバイクパッキングで失敗しにくくするために、装備、積載、ルート、修理、補給、安全面で確認したい9つのポイントを紹介します。
目次
バイクパッキングとは?
1. 手持ちの自転車で短く試す
2. 走る路面に合う自転車を選ぶ
3. 荷物は少なく、バランスよく積む
4. 必要な装備を事前に試す
5. パンクと基本修理を練習する
6. 初回は1泊・短距離にする
7. 補給・水・宿泊場所からルートを作る
8. 天候と通信・交通状況を確認する
9. ルートと行動予定を共有する
Suuntoでルートを記録する
装備チェックリスト
よくある質問
まとめ
バイクパッキングとは?自転車旅との違い
バイクパッキングは、バックパッキングのように必要な装備をコンパクトにまとめ、自転車で移動する旅のスタイルです。明確な定義はありませんが、フレームバッグ、サドルバッグ、ハンドルバーバッグなどを使い、比較的軽量な装備で未舗装路を含むルートへ出かけるスタイルがよく知られています。
従来の自転車ツーリングでは、キャリアとパニアバッグへ多くの荷物を積み、舗装路を中心に長距離を旅する場合があります。一方、バイクパッキングは荷物を絞り、グラベル、林道、トレイルなどへ入りやすい構成を重視する傾向があります。
ただし、どちらが優れているというものではありません。宿泊方法、路面、日数、持ち運ぶ荷物に合わせて選びましょう。
1. 高価な装備を買う前に、手持ちの自転車で試す
元記事に登場するアントン・クルピチカは、「最もよい自転車は、すでに持っている自転車」と話しています。最初から専用バイクや高価なバッグをすべて購入する必要はありません。
現在の自転車が安全に整備され、予定する路面へ対応できるなら、まずは日帰りや近距離の1泊旅行で試します。必要な荷物が入るか、積載した状態で安全に操作できるか、長時間乗って痛みが出ないかを確認しましょう。
初回の目的は長距離を達成することではなく、自転車・荷物・宿泊の仕組みを試すことです。レンタル用品や手持ちのドライバッグなどを活用すれば、必要な装備を見極めてから購入できます。
2. 走る路面に合う自転車とタイヤを選ぶ
自転車選びは、「バイクパッキング用」という名前より、実際に走る路面、荷物、身体との相性が重要です。
舗装路中心:ロードバイク、ツーリングバイク、クロスバイクなど
舗装路とグラベル:太めのタイヤを装着できるグラベルバイクなど
荒れた林道やトレイル:マウンテンバイクなど
タイヤ幅、空気圧、ブレーキ、ギア比は、路面と荷物の重さに合わせます。荷物を積むと加速・制動・コーナリングが変わるため、本番前に同じ重量で走行してください。
長時間乗る場合は、サドル、ハンドル位置、シューズなど身体との接点も重要です。痛みやしびれが続く場合は、無理に距離を伸ばさず、自転車店などでポジションを相談しましょう。
3. 荷物は少なく、バランスよく積む
バイクパッキングでは、荷物を増やすほど安心とは限りません。重量が増えると上り坂が厳しくなり、制動距離や操作性にも影響します。
装備を「必須」「状況により必要」「なくても対応できる」に分け、使わない可能性が高いものを減らします。ただし、防寒着、雨具、ライト、修理用品、救急用品など、安全に関わる装備は省かないでください。
積載の基本
重い物はできるだけ低く、車体の中央に近づける
左右の重量差を小さくする
走行中に必要な食料や雨具は取り出しやすい場所へ入れる
バッグやストラップがタイヤ、チェーン、ブレーキへ触れないようにする
防水袋を使い、寝具や着替えを濡らさない
出発前に段差や坂道を含む短いコースを走り、バッグの揺れ、異音、ストラップの緩みを確認します。
4. 必要な装備を事前に試す
新品のウェア、シューズ、バッグ、テントを本番で初めて使うと、擦れ、浸水、取り付け不良などに気づけないまま出発することになります。
元記事のサミ・サウリも、長い旅へ出る前に、実際に使う装備をすべて試すことを勧めています。
ヘルメットとグローブ
自転車用ライトとテールライト
レインウェア、防寒着、着替え
寝袋、マット、テントなどの宿泊用品
バッグと固定用ストラップ
ボトル、給水バッグ、調理用品
スマートフォン、GPS機器、モバイルバッテリー
キャンプ用品は、暗くなる前に設営と撤収を練習します。宿泊施設を利用する場合も、営業時間、チェックイン時刻、自転車の保管方法を確認してください。
5. パンクと基本修理を出発前に練習する
人里から離れた場所でパンクすると、修理できないだけで行動を続けられなくなります。道具を持っているだけでなく、自分の自転車で使えることが重要です。
最低限練習したい作業
ホイールの着脱
チューブ交換またはパンク修理
携帯ポンプでの空気補充
チェーン外れへの対応
緩んだボルトの確認と締め直し
基本的な修理用品
自転車とタイヤに合う予備チューブ
パッチキットまたはチューブレス修理用品
タイヤレバー
携帯ポンプ
対応する六角レンチを含むマルチツール
チェーン用クイックリンクなど、必要に応じた予備部品
チューブレスの場合も、修理できない損傷に備えてチューブを携行するなど、使用しているシステムに合う準備をします。工具の使い方に不安がある場合は、自転車店の講習などで練習しましょう。
6. 初回は1泊・短距離・余裕のある季節にする
最初の旅は、自宅や交通機関から遠く離れすぎない1泊コースがおすすめです。荷物を積んだ自転車で走り、食事を取り、宿泊し、翌日に再び走る一連の流れを確認できます。
距離を伸ばすより、明るいうちに目的地へ着き、落ち着いて宿泊準備ができる計画にします。暑さや寒さが厳しい時期、大雨や強風が予想される日は避けましょう。
初回の計画例:
普段の日帰りライドより短い距離にする
途中で鉄道やバスを利用できるルートを選ぶ
補給できる店舗や水場を複数確認する
整備されたキャンプ場または自転車保管可能な宿を予約する
日没より十分前に到着する計画にする
7. 補給・水・宿泊場所からルートを作る
走りたい道だけをつなぐのではなく、水、食料、宿泊、トイレ、交通手段を含めてルートを作ります。山間部では、地図上にある店舗や施設が営業していない場合もあります。
次の地点を事前に確認しましょう。
食料と水を補給できる場所と営業時間
キャンプ場や宿泊施設の予約・利用条件
自転車通行が禁止されている道路や遊歩道
工事、通行止め、季節閉鎖の情報
鉄道駅、バス停、自転車店、医療機関
途中で短縮できる地点と代替ルート
野営や火気の使用が自由にできるとは限りません。土地の管理者、自治体、キャンプ場のルールを確認し、私有地や立入禁止区域へ入らないでください。
▶︎距離・標高・撤退方法を含む計画の考え方は「登山ルートの計画方法|距離・標高・天候を確認する7つのポイント」も参考にしてください。
8. 天候と通信・交通状況を確認する
出発前に、全行程の天気、気温、風、降水、日没時刻を確認します。自転車では向かい風によって進行が大きく遅れ、雨や落ち葉、凍結で制動とコーナリングが難しくなる場合があります。
山間部では携帯電話がつながらない場所もあります。オフラインで使える地図を準備し、スマートフォンとGPS機器の電池消費を抑える方法、モバイルバッテリーの容量を確認してください。
長い下りやトンネルでは体温が下がりやすく、ライトと高い視認性も必要です。反射素材を取り入れ、昼間でもトンネルへ入る前にライトを点灯します。
9. ルートと行動予定を共有する
単独でもグループでも、走行ルート、宿泊地、出発・到着予定、連絡方法を家族や知人へ共有します。計画を変更した場合も、通信できるうちに知らせましょう。
グループでは、次の内容を全員で確認します。
先頭と最後尾を誰が担当するか
分岐や下り坂での待ち合わせ方法
最も遅い人に合わせるペース
機材トラブルや体調不良時の中止基準
緊急連絡先と保険の内容
交通ルールを守り、無理な速度や夜間走行を避けます。疲労で操作が不安定になった場合は、予定距離より休憩や中止を優先してください。
Suuntoでバイクパッキングのルートを記録する
Suuntoアプリのルート作成機能やヒートマップは、ほかの利用者がアクティビティを記録している場所を参考にしながら、ルートを検討する材料になります。作成したルートは、対応するSuuntoウォッチへ同期できます。
Suunto Vertical 2は、長時間のアウトドア活動で地図とルートナビゲーションを活用したい人の選択肢です。
Suunto Race 2は、大きなAMOLEDディスプレイでルートやトレーニングデータを確認し、サイクリングから複数の持久系スポーツまで記録したい人に適しています。
Suunto Race Sは、コンパクトなサイズで日帰りライドからトレーニングまで幅広く記録したい人の選択肢です。
対応するセンサー、スポーツモード、地図、ナビゲーション機能は、モデルやソフトウェアのバージョンによって異なります。出発前にルート同期、地図表示、バッテリー残量を確認してください。
ヒートマップ上に記録がある場所でも、通行できるとは限りません。私有地、通行禁止、季節閉鎖、道路交通法や地域のルールを現地情報で確認しましょう。
▶︎ルートの作成・同期方法は「GPXルートをSuuntoウォッチに入れる方法」をご覧ください。
▶︎サイクリング用の表示項目は「Suuntoアプリでスポーツモードをカスタマイズする方法」で解説しています。
バイクパッキング装備チェックリスト
走行・安全
整備済みの自転車
ヘルメット、グローブ、アイウェア
フロントライト、テールライト、反射素材
ルートを記録したGPS機器・スマートフォン
修理
予備チューブまたはチューブレス修理用品
パッチ、タイヤレバー、携帯ポンプ
マルチツール、必要な予備部品
衣類・宿泊
レインウェア、防寒着、着替え
寝袋、マット、テントなど予約・気象条件に合う装備
防水袋と固定用ストラップ
補給・緊急用品
水、食料、予備の補給食
救急用品、常用薬、身分証明書、現金
モバイルバッテリーと充電ケーブル
緊急連絡先と共有済みの行動計画
よくある質問
バイクパッキング専用の自転車は必要ですか?
必須ではありません。手持ちの自転車が予定する路面へ対応し、安全に整備されていれば、短い旅から試せます。荷物を積載できるか、タイヤとブレーキが条件に合うかを確認してください。
最初は何km走ればよいですか?
一律の距離はありません。荷物を積むと普段より速度が下がり、休憩やトラブル対応にも時間が必要です。普段の日帰りライドより短くし、明るいうちに余裕を持って到着できる距離を選びましょう。
バックパックだけでも始められますか?
短い試走なら可能ですが、重いバックパックは肩や腰への負担になり、汗もたまりやすくなります。重量を減らし、慣れてきたら車体側のバッグへ分散することを検討してください。
どこでもキャンプできますか?
できません。土地の所有・管理、自治体、国立公園、施設ごとにルールが異なります。許可されたキャンプ場や宿泊施設を利用し、予約、火気、自転車の持ち込みなどの条件を確認してください。
まとめ|最初の目的は「仕組みを試すこと」
初めてのバイクパッキングでは、専用装備をそろえることや長距離を走ることより、自転車、積載、修理、補給、宿泊、ルート確認の仕組みを一度通して試すことが重要です。
手持ちの自転車で短い1泊旅行から始め、荷物を減らし、基本修理を練習しましょう。ルートは走りたい道だけでなく、水、食料、宿泊、交通、代替手段まで含めて計画します。経験を重ねながら少しずつ距離と日数を伸ばせば、自分に合う旅のスタイルが見えてきます。
次の自転車旅を、地図に描こう
Suuntoアプリと対応ウォッチで、バイクパッキングのルートとアクティビティを記録しましょう。
Suuntoウォッチを見る