世界最高峰エベレストと同じ8,848mを、自分の近くにある坂で登る——それが「エベレスティング」です。同じ坂を何度も往復し、1回のチャレンジで累積標高8,848m以上を目指します。
サイクリングから始まった挑戦として知られていますが、現在はランニングや徒歩を含むさまざまな方法でも取り組まれています。シンプルなルールに見えて、実際には長時間の登り、下り、補給、天候、夜間行動を管理する必要がある大きな挑戦です。
この記事では、エベレスティングの基本ルール、坂の選び方、周回数の計算、トレーニング、SUUNTOで累積標高を管理する方法を紹介します。
エベレスティングとは
エベレスティングは、選んだ坂や山を繰り返し登り、エベレストの標高に相当する累積標高8,848m以上を、一度の挑戦で積み上げるエンデュランスチャレンジです。
1994年、登山家ジョージ・マロリーの孫George Malloryが、オーストラリアのMount Donna Buangを自転車で繰り返し登った挑戦が起源として紹介されています。その後、オーストラリアのサイクリストAndy van Bergenらによって形式が整えられ、世界へ広がりました。
レースの順位を競うというより、自分で坂とペースを選び、長い時間をかけて一つの目標を達成するのが魅力です。
基本ルールと公式認定の違い
個人のチャレンジとして楽しむ場合は、自分の目標や安全に合わせてルールを設定できます。一方、Everesting公式のHall of Fameへ申請する場合は、公式サイトが定める現行ルールを満たす必要があります。
Full Everestingの基本は次のとおりです。
- 累積標高8,848m以上を達成する
- 一度の連続したアクティビティとして行う
- 睡眠を挟まずに完了する
- 食事などの休憩は可能だが、経過時間に含まれる
- Original Everesting(同じ登りを繰り返す基本形式)では、一つの坂・山を中心に往復する
- 公式認定では、指定された方法でアクティビティを記録・提出する
競技方法や認定条件は更新される場合があります。公式認定を目指す場合は、挑戦前にEveresting公式ルールを必ず確認してください。
Quarter・Halfから始める選択肢
いきなり8,848mへ挑む必要はありません。公式チャレンジには、次のような累積標高の目標もあります。
| チャレンジ | 累積標高 | 位置づけ |
|---|---|---|
| Quarter Everesting | 2,212m | 初めて長い登りへ挑戦する目標にしやすい |
| Half Everesting | 4,424m | 補給や装備を含む長時間行動のテストになる |
| Full Everesting | 8,848m以上 | 十分な経験と長期的な準備が必要 |
まずQuarterや、自分で決めた1,000〜2,000mの目標を試すと、坂の適性、所要時間、補給、身体への負担を確認できます。
一度に大きな累積標高へ挑む前に、1週間の登りを積み重ねるSUUNTOのVertical Weekから始める方法もあります。エベレスティングが一度の連続した挑戦であるのに対し、Vertical Weekは1週間の累積標高を楽しむコミュニティチャレンジです。
SUUNTOで累積標高を確認する
エベレスティングでは、現在の累積標高を把握しながら進めることが重要です。SUUNTOウォッチでは、使用するスポーツモードの運動画面に「上昇」(累積上昇)を表示しておくと、アクティビティ開始後からの登りの合計をウォッチ上で確認できます。
必要なデータ項目が表示されない場合は、Suuntoアプリでカスタムスポーツモードを作成し、運動画面のデータフィールドに「上昇」を追加して、事前にウォッチへ同期しておきましょう。挑戦後は、ウォッチの運動サマリーと、同期されたSuuntoアプリのアクティビティ概要でも上昇量を確認できます。
ルートナビゲーションを使う場合は、高度プロファイルやクライムガイダンスで、すでに登った上昇量と残りの上昇量も確認できます。ただし、公式認定を申請する場合は、ウォッチの表示値だけで判断せず、公式ルールに沿って記録データを提出してください。
必要な周回数を計算する
必要な登りの回数は、1回の登坂で獲得できる標高差から計算します。
必要回数 = 8,848 ÷ 1回の獲得標高
端数が出た場合は切り上げます。
| 1回の獲得標高 | 8,848mを超える目安 |
|---|---|
| 200m | 45回 |
| 300m | 30回 |
| 500m | 18回 |
| 1,000m | 9回 |
地図上の標高差と実際のGPS計測には差が生じる可能性があります。公式認定を目指す場合は、余裕を持って8,848mを超える計画にします。
挑戦する坂を選ぶ7つのポイント
- 勾配:急すぎず、長時間でも安定したフォームを保てる
- 下り:疲労後も安全に下れる路面と斜度である
- 交通:車や自転車、登山者との接触リスクが低い
- 補給拠点:水、食料、着替え、予備装備を置ける
- 退出手段:途中で中止しても安全に帰れる
- 夜間:照明を使っても安全に行動できる
- 利用ルール:道路・トレイルの規則、私有地、通行時間を守れる
登りの効率だけで選ばず、下りと補給拠点を重視します。マウンテンバイクでは、登りより下りの技術的負担が大きくなるルートもあります。
エベレスティングへ向けた準備
エベレスティングは、思いついた週末に試すような挑戦ではありません。長時間の持久力、登坂力、下りへの耐性、補給、睡眠を含め、段階的に準備します。
- 低〜中強度の長時間トレーニングで有酸素能力を作る
- 坂の反復で登りのフォームとギア選択を確認する
- 連続する下りに備え、脚・腕・体幹の疲労を経験する
- QuarterやHalf相当の累積標高で装備と補給を試す
- 大きな練習の後に十分な回復期間を設ける
長時間トレーニングの考え方は、ロング走・LSDトレーニングの効果と取り入れ方も参考になります。
ペースと心拍数を管理する
序盤は身体が軽いため、予定より速く登りがちです。しかし、最初の数周のオーバーペースは、後半の大きな失速につながります。
最初から会話できる程度の余裕を残し、ラップタイム、心拍数、パワー、主観的なきつさを記録します。同じ出力なのに心拍数が上がり続ける、フォームが崩れる、下りの判断が遅れる場合は、休憩や中止を検討します。
エネルギーの使われ方を理解したい場合は、運動の3つのエネルギー供給機構をご覧ください。
補給・休憩・サポートを計画する
挑戦時間が長くなるため、行動中に食べられる糖質、水分、電解質に加え、気分転換になる食べ物も準備します。本番で初めて試す食品は避け、トレーニング中に胃腸との相性を確認してください。
ベース地点には、周回ごとに取りやすい形で補給を並べ、予備のウェア、ライト、バッテリー、工具、救急用品を置きます。サポートする人がいる場合は、周回数、食事、体調、装備交換を一緒に確認してもらいます。
吐き気、意識の混乱、胸の痛み、強いめまい、動作を変える痛みなどがある場合は、達成より中止と医療対応を優先してください。
下りと夜間の安全対策
累積標高8,848mを登るということは、同じ登りを繰り返す基本形式では、同程度を下ることにもなります。疲労した状態の下りでは、転倒、ブレーキ操作の遅れ、筋肉や関節への負担が高まります。
- 下りでスピードを出しすぎない
- 路面が濡れた場合の中止基準を決める
- 自転車はブレーキ、タイヤ、ライトを事前点検する
- ランニングは足元とフォームが崩れていないか確認する
- 夜間用の主照明と予備ライトを準備する
- 一人だけで実施せず、現在地と状況を共有する
天候悪化に備え、SUUNTOで天気と気圧の変化を確認する方法も事前に確認しましょう。
SUUNTOで累積標高と登りを管理する
Suunto Vertical 2は、累積標高、現在の高度、心拍数、経過時間、ルートなどを記録できます。長時間の登りに役立つ機能を、挑戦の場面と結びつけて使います。
| 機能 | 活用方法 |
|---|---|
| 累積標高・高度 | 8,848mまでの進捗と1周あたりの登りを確認する |
| クライムガイダンス | 登りの距離、標高差、勾配を確認してペースを管理する |
| 心拍数・パワー | 序盤のオーバーペースや後半の変化を把握する |
| ルートナビゲーション | 周回ルートと補給拠点をウォッチ上で確認する |
| バッテリーモード | 想定される挑戦時間に合わせてGPS記録を準備する |
| ストームアラーム | 急な気圧低下を、天候と継続可否を見直す合図にする |
クライムガイダンスの見方は、登山・トレイルで役立つSUUNTOクライムガイダンス、長時間記録の準備は、SUUNTOのバッテリーモードの選び方で解説しています。
挑戦当日のチェックリスト
- 公式認定を狙う場合は最新ルールを確認した
- ルートの利用規則と天気を確認した
- 必要な周回数と余裕分を計算した
- ウォッチとライト、予備電源を充電した
- 食料、水分、電解質、着替えを周回別に準備した
- 自転車・シューズ・装備を点検した
- サポート担当と中止基準を共有した
- 緊急連絡先と退出方法を確認した
よくある質問
エベレスティングはランニングでもできますか?
現在は徒歩・ランニングを含む挑戦も行われています。ただし、認定カテゴリや提出条件は変更される場合があるため、公式認定を目指す場合は最新ルールを確認してください。
複数日に分けてもエベレスティングになりますか?
Full Everestingの公式ルールでは、睡眠を挟まない一度の連続したアクティビティとして行います。個人の目標として複数日に分ける場合は、公式認定とは分けて楽しみましょう。
GPSウォッチの累積標高が8,848mなら達成ですか?
個人のチャレンジでは進捗の目安になります。公式認定では記録方法や提出先の条件があるため、事前に公式ルールを確認し、計測誤差を考えて余裕を持って超える計画にしてください。
まとめ
エベレスティングは、一つの坂を繰り返し登り、1回のチャレンジで累積標高8,848m以上を目指す壮大な挑戦です。Fullへ進む前にQuarterやHalfで、坂、装備、補給、身体の反応を確認しましょう。
成功の鍵は、序盤を抑えたペース、下りの安全、継続できる補給、天候への対応です。SUUNTOで累積標高や登りを確認しながら、自分とサポートチームで決めた中止基準を守って挑戦してください。