マラソンやトレイルランニングに向けて持久力を高めたいとき、スピード練習だけでなく欠かせないのが、一定の低〜中強度で長く動き続けるトレーニングです。ランニングでは「ロング走」や「LSD(Long Slow Distance)」と呼ばれることもあります。
長時間のトレーニングは派手ではありませんが、有酸素能力の土台をつくり、後半まで動き続ける力を養います。一方で、速く走りすぎたり、距離だけを急に延ばしたりすると、本来の目的から外れて疲労や故障につながることがあります。
この記事では、ロング走とLSDの違い、期待できる効果、適切な強度と時間、補給・回復まで、初心者にも分かりやすく解説します。

ロング走・LSDとは?
ロング走は、普段より長い時間または距離を走り、長時間動き続ける力を養うトレーニングの総称です。一定の楽な強度で行う場合もあれば、目的に応じて後半にペースを上げたり、レースペースの区間を入れたりする場合もあります。
LSDは「Long Slow Distance」の略で、会話を続けられるほど余裕のあるペースを保ち、長時間動き続ける方法です。日本ではロング走とほぼ同じ意味で使われることもありますが、LSDは特に「ゆっくり、一定の有酸素強度を保つこと」を重視します。
| 種類 | 主な目的 | 強度の目安 |
|---|---|---|
| LSD | 有酸素能力の土台づくり、長時間動くことに慣れる | 会話できる楽な強度 |
| 一定ペースのロング走 | 持久力とペース維持能力を高める | 低〜中強度 |
| 変化走・後半ペースアップ | 疲労した状態でペースを維持する練習 | 前半は楽に、後半のみ強度を上げる |
長時間トレーニングで期待できる効果
有酸素能力の土台をつくる
一定の有酸素強度で運動を続けると、筋肉が酸素を使ってエネルギーをつくる能力の向上が期待できます。スピード練習やインターバルトレーニングの効果を支える基礎としても重要です。
長時間動き続けることに慣れる
マラソン、ウルトラランニング、トレイルランニングでは、心肺能力だけでなく、脚の筋持久力、フォームの維持、集中力も必要です。長時間のセッションは、身体と気持ちの両方を競技時間に近づける機会になります。
エネルギーを効率よく使う力を養う
低〜中強度の運動では、糖質と脂質を組み合わせてエネルギーを生み出します。楽な強度で長く動く習慣は、レース後半まで限られたエネルギーを使い続けるための土台づくりに役立ちます。
適切な強度の決め方
ロング走で最も大切なのは、距離より先に強度を決めることです。初心者や有酸素能力の土台をつくりたい人は、次の目安を組み合わせて確認しましょう。
- 会話を文章で続けられる
- 呼吸をコントロールできる
- 前半から脚に強い負担を感じない
- 心拍数が主に低〜中強度の範囲に収まる
- 翌日の生活や軽い運動に大きく影響しない
心拍ゾーンを使う場合は、一般的にゾーン2付近がひとつの目安になります。ただし、心拍ゾーンは年齢だけで一律に決まるものではありません。設定方法は「心拍ゾーンとは?トレーニング強度を使い分けて持久力を高める方法」をご覧ください。
ポイント:気温、湿度、睡眠、疲労、起伏によって、同じペースでも心拍数は変わります。ロング走ではペースの数字だけに固執せず、心拍数、呼吸、体感を合わせて判断しましょう。
時間と距離の目安
適切な長さは、現在の運動習慣と目標によって異なります。最初から「30km走らなければならない」と考える必要はありません。
| レベル・目的 | 開始時の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 初心者 | 45〜60分 | 途中に歩きを入れてもよい |
| ハーフ・フルマラソンの基礎づくり | 60〜120分 | 普段の最長時間から段階的に延ばす |
| トレイル・ウルトラ | 目標と経験に応じて設定 | 時間、累積上昇、補給練習も含めて考える |
増やすときは、時間と強度を同時に大きく上げないことが重要です。まず楽な強度を維持したまま時間を少し延ばし、身体の反応を確認します。痛みや強い疲労が続く場合は、前の段階へ戻しましょう。
ロング走の実践方法
- 目的を決める:有酸素能力、長時間への慣れ、補給練習など、その日の狙いをひとつ決めます。
- 時間で計画する:信号や坂の影響を受けやすい場合は、距離より時間を基準にします。
- 前半を抑える:最初の15〜20分は、目標強度より少し楽に入ります。
- 一定の体感を保つ:坂ではペースを落とし、心拍数や呼吸が急に上がらないようにします。
- 終了後に振り返る:平均ペースだけでなく、心拍数の変化、後半の体感、補給、翌日の疲労も記録します。
トレイルでは平地と同じペースを保つ必要はありません。登りでは歩きを使い、下りでは脚への衝撃を抑え、全体の運動強度を安定させることを優先します。
水分・エネルギー補給
長時間の運動では、水分とエネルギー補給もトレーニングの一部です。必要量は運動時間、気温、発汗量、体格によって異なるため、一律の数字だけで決めず、自分に合う方法を練習中に確認しましょう。
- 出発前に水分と体調を確認する
- 暑い日は涼しい時間帯や給水しやすいコースを選ぶ
- 長時間になる場合は、レースで使う飲料や補給食を試す
- 喉の渇き、集中力の低下、ペースの急落を見逃さない
- 初めての補給方法を本番で試さない
極端な暑さや体調不良のときは、予定を短縮または中止してください。めまい、吐き気、寒気、判断力の低下などがある場合は運動を続けないでください。
ロング走でよくある失敗
毎回速く走ってしまう
調子が良い日にペースを上げ続けると、低強度の土台づくりではなく、中途半端に負荷の高い練習になりやすくなります。後半まで会話できる余裕を残しましょう。
距離を急に増やす
心肺に余裕があっても、筋肉、腱、関節が長時間の負荷に慣れているとは限りません。直近の練習量と最長時間から段階的に延ばします。
補給と装備を後回しにする
靴擦れ、衣服の擦れ、充電不足、給水不足は、時間が長くなるほど影響します。ロング走はレース用装備を確認する機会としても活用できます。
疲労が残っているのに予定を優先する
睡眠不足、痛み、安静時心拍数の変化、強い脚の重さがある日は、時間を短縮するか、ウォーキングや休養へ切り替えます。
終了後の回復もトレーニングの一部
長時間の運動による刺激は、休養と栄養を取ることで適応につながります。終了後は水分と食事を取り、睡眠時間を確保してください。翌日に強い疲労が残る場合は、完全休養またはごく軽い運動にします。
身体が刺激へ適応する仕組みについては「トレーニングで強くなるための回復とは?身体が適応する仕組み」、負荷の積み重なりは「トレーニング負荷とは?フィットネス・疲労・フォームで見る方法」も参考にしてください。
Suuntoウォッチでロング走の強度を管理する
ロング走では、経過時間、心拍数、心拍ゾーン、距離、平均ペースを同じ画面または切り替えやすい画面に設定しておくと、前半の上げすぎを防ぎやすくなります。
Suunto Runは軽さを重視して日々のランニングやロング走に取り組みたい人に、Suunto Race Sはコンパクトなサイズでトレーニング分析も活用したい人に適しています。大きな画面で複数のデータや地図を確認したい人にはSuunto Race 2、長時間のトレイルや登山を含むアウトドアではSuunto Vertical 2が選択肢になります。
対応するウォッチと心拍センサーを使う場合は、Suunto ZoneSenseの使い方を参考に、有酸素域から強度が上がりすぎていないか確認できます。使用できる機能や画面は、モデルとソフトウェアのバージョンによって異なります。
よくある質問
LSDは何分走ればよいですか?
一律の時間はありません。初心者は45〜60分程度から始め、現在の運動習慣に合わせて段階的に延ばします。経験者でも、目的や時期によって適切な時間は変わります。
ロング走は毎週必要ですか?
頻度は目標、経験、週間走行量、回復力によって異なります。週1回が一般的な例ですが、疲労が抜けない場合は間隔を広げたり、時間を短くしたりしてください。
歩きを入れても効果はありますか?
はい。初心者やトレイルランニングでは、歩きを入れて強度を安定させる方法が有効です。走り続けることより、目的の強度で予定時間を安全に動くことを優先します。
心拍数が後半に上がるのはなぜですか?
同じペースでも、体温上昇、脱水、疲労などによって心拍数が徐々に上がることがあります。心拍数が目標範囲を超え続ける場合は、ペースを落とす、歩く、給水するなどの調整を行います。
ロング走とインターバルはどちらが重要ですか?
目的が異なります。ロング走は長時間動くための有酸素能力と筋持久力、インターバルは高い強度やスピードへの対応力を主に鍛えます。片方だけに偏らず、時期と目標に合わせて組み合わせます。
まとめ|ゆっくり長く動く力が持久力の土台になる
ロング走やLSDは、速さを競う練習ではありません。余裕のある強度を保ち、長時間動くことに身体を慣らし、有酸素能力と持久力の土台をつくるトレーニングです。
まずは会話できる強度と無理のない時間から始めましょう。ペースだけでなく、心拍数、呼吸、後半の体感、補給、翌日の疲労まで確認すると、自分に合うロング走が見つけやすくなります。