閾値心拍数(LTHR)は、ランニングやサイクリングで高い強度を一定時間維持するときの心拍数の目安です。自分の閾値心拍数を知ると、心拍ゾーンをより自分に合わせて設定し、テンポ走や閾値トレーニングの強度を管理しやすくなります。この記事では、測定方法、数値の見方、トレーニングへの活用方法を解説します。

閾値心拍数(LTHR)とは?
閾値心拍数とは、閾値付近の運動強度で身体を動かしているときの心拍数です。持久系トレーニングでは一般に、乳酸閾値心拍数(Lactate Threshold Heart Rate:LTHR)を指します。
簡単に言えば、「きついけれど、一定時間は安定して維持できる強度」で運動しているときの心拍数です。ランナーやサイクリストは、個人に合った心拍ゾーンの設定、テンポ走や閾値走の強度管理、ペースやパワーと組み合わせたパフォーマンス分析に利用できます。
ただし、閾値は身体の状態が突然切り替わる一点ではなく、運動強度の上昇に伴って反応が変化していく領域です。LTHRも絶対的な境界線や、超えてはいけない上限ではありません。
乳酸閾値そのものの仕組みや、LT1・LT2、乳酸閾値を高めるトレーニングについては、乳酸閾値(LT)とは?測定方法と高めるトレーニングで詳しく解説しています。
最大心拍数・安静時心拍数との違い
| 指標 | 意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 最大心拍数 | 運動中に到達し得る最も高い心拍数の目安 | 最大心拍数基準の心拍ゾーン設定 |
| 安静時心拍数 | 休息している状態での心拍数 | 心拍予備量の計算、日々の状態確認 |
| 閾値心拍数(LTHR) | 閾値付近の持続的な高強度運動での心拍数 | 閾値基準の心拍ゾーン設定、テンポ走や閾値走の管理 |
最大心拍数と安静時心拍数の意味や測り方は、安静時心拍数と最大心拍数の基本も参考にしてください。
閾値心拍数を測定・推定する方法

閾値心拍数を知る方法には、フィールドテスト、対応デバイスによる推定、ラボでの測定があります。日常のトレーニングでは、フィールドテストやウォッチによる推定が取り入れやすい方法です。
1. 30分間のフィールドテスト
ランニングでは、30分間のタイムトライアルからLTHRを推定する方法があります。これは、ある程度のトレーニング経験があり、きつい強度を安定して維持できるランナー向けのテストです。
- 十分にウォームアップします。
- 30分間、最後まで維持できる範囲で最大限に近い一定強度で走ります。
- 走行中の心拍数とペースを記録します。
- 最後の20分間の平均心拍数を、閾値心拍数の推定値として使用します。
- 30分間全体の平均ペースを、閾値ペースの参考値として確認します。
序盤から飛ばしすぎると、後半に大きく失速して正しく評価しにくくなります。できるだけ平坦で交通量が少なく、一定ペースを保ちやすい場所を選びましょう。より安定した心拍データを取りたい場合は、対応する胸部心拍ベルトの使用も選択肢になります。
このテストは負荷が高いため、ランニングを始めたばかりの方、体調が優れない方、運動に関する健康上の不安がある方には適していません。痛み、めまい、強い息苦しさなどを感じた場合は、すぐに中止してください。
2. Suuntoウォッチによる推定
対応するSuuntoウォッチでは、蓄積されたトレーニングデータをもとに、閾値心拍数や閾値ペースの推定値を確認できます。対応モデルでは、VO₂maxや予測レースタイムなどとあわせて「進捗」ウィジェットに表示されます。
表示される項目や必要なデータ量は、ウォッチのモデルやソフトウェアバージョンによって異なります。十分なデータが蓄積されていない場合は、すぐに推定値が表示されないことがあります。
3. SuuntoPlusの閾値テスト
対応するSuuntoウォッチでは、SuuntoPlusのランナー向け閾値テストを利用できます。ガイドに沿ってランニングテストを行い、セッション中の心拍数とペースから、乳酸閾値心拍数と閾値ペースの目安を確認します。
SuuntoPlusで利用できるテストや実施時のポイントは、Suuntoでできるフィットネステストで紹介しています。
4. ラボで測定する
より詳しく身体の反応を確認したい場合は、専門施設で運動強度を段階的に上げながら血中乳酸などを測定します。フィールドテストやウォッチの推定値は日常の強度管理に役立ちますが、ラボ測定と同じものではありません。
閾値心拍数の数値をどう見る?
例えば、ランニングの推定LTHRが170bpmだったとします。これは、そのテスト条件において、閾値付近で走るときの心拍数が170bpm前後だったことを示します。
ただし、170bpmという数字だけで体力レベルを判断したり、すべての高強度トレーニングで必ず170bpmを目指したりすることはできません。閾値心拍数を超えた瞬間に運動を中止する必要があるという意味でもありません。
心拍数とペース・パワーを一緒に見る
閾値心拍数は、同じテストで得られたペースやパワー、呼吸、体感強度と組み合わせて確認します。心拍数は身体の反応を示し、ペースやパワーは身体が外へ出した運動量を示します。
例えば、同じ条件で行った2回のテストでLTHRがどちらも170bpm前後でも、閾値ペースが1kmあたり5分00秒から4分45秒へ上がっていれば、同程度の心拍反応でより速く走れるようになったと考えられます。
数値が高いほど優れているわけではない
LTHRには個人差があり、数値の高さだけで他のランナーと持久力を比較することはできません。重要なのは、同じ測定方法と近い条件で、自分の心拍数、ペース、パワー、体感がどのように変化したかを見ることです。
VO₂maxは最大酸素摂取量、FTPはサイクリングで一定時間維持できるパワーの目安です。それぞれ異なる指標であるため、VO₂maxやFTPの数値をそのまま閾値心拍数へ変換することはできません。
閾値心拍数をトレーニングに活用する方法

1. 自分に合った心拍ゾーンを設定する
最大心拍数だけを基準にしたゾーンが体感と合わない場合、LTHRを基準に心拍ゾーンを設定する方法があります。ランナーによって閾値へ到達する心拍数は異なるため、自分の測定値を使うことで、低強度の日と閾値付近で走る日を分けやすくなります。
心拍ゾーンの計算方法やSuuntoウォッチでの設定については、心拍ゾーンの計算・設定方法をご覧ください。メニューや設定できるゾーンタイプは、モデルやソフトウェアによって異なります。
2. 閾値走や長めのインターバルを管理する
閾値走や長めのクルーズインターバルでは、最後まで維持できる強度で始めることが重要です。心拍数はペースを上げてから遅れて反応するため、開始直後に目標心拍数へ届かせようとして急にペースを上げないでください。
最初は管理できるペースで入り、心拍数が自然に目標範囲へ上がるのを待ちます。その後は心拍数だけでなく、呼吸や脚の感覚から、最後まで維持できる強度かを判断します。
心拍数が上がり続けているのにペースが落ち、体感も急にきつくなる場合は、ペースを下げるか、反復を早めに終えることを検討しましょう。気温、湿度、コースの起伏、疲労の影響もあわせて確認します。
3. 同じ心拍数でのペース変化を追う
トレーニングの進歩は、LTHR自体が上がったかどうかだけでは判断できません。同じような条件の複数セッションを比較し、近い心拍数でペースやパワーが向上しているかを確認します。
- 同じLTHR付近で、以前より速いペースを維持できる
- 同じペースを、以前より低い心拍数で走れる
- 同じ強度の後半でも、ペースの低下が小さい
- 同じセッションを、以前より余裕のある体感で終えられる
一度だけの変化ではなく、近い条件で同じ傾向が続くかを見ましょう。ゾーンと体感が継続的に合わなくなった場合は、同じ方法で再テストします。
4. 心拍数を追いすぎない
次のようなトレーニングや条件では、閾値心拍数だけで強度を決めないことが大切です。
- 短いインターバルや坂道ダッシュ:心拍数の上昇が遅れるため、設定した時間、ペース、パワー、フォームを優先する
- 起伏のあるコース:登り始めに心拍数が低くても急加速せず、下りで目標心拍数を保つために無理にペースを上げない
- 暑さや強い疲労がある日:通常のペースや心拍数を無理に再現せず、体感に合わせて強度を下げる
- レース:距離と目標タイムに合ったペース配分を優先し、長いレースの序盤からLTHR付近まで上げない
閾値心拍数が変わる理由

推定された閾値心拍数は、測定方法、競技種目、データの品質、測定時のコンディションによって変化します。また、運動中の実際の心拍数も、環境や身体の状態から影響を受けます。
- 測定方法やデバイス:ラボ、フィールドテスト、デバイス推定では計算方法が異なります。センサーのずれや信号の途切れも結果へ影響します。
- 競技種目:ランニングとサイクリングでは心拍数の反応が異なるため、可能であれば競技別にテストとゾーン設定を行います。
- 環境:気温、湿度、標高、風、コースの起伏などによって心拍数は変化します。
- 身体の状態:睡眠、ストレス、疲労、体調不良、カフェイン、回復状態なども心拍数へ影響します。
- 心拍ドリフト:長時間運動では、同じペースやパワーでも心拍数が徐々に上がることがあります。暑さや水分不足が影響する場合もあります。
再テストするときは、できる範囲でコース、時間帯、気象条件、使用するセンサー、テスト前の疲労状態をそろえましょう。
閾値心拍数についてよくある質問
閾値心拍数と最大心拍数の違いは?
最大心拍数は、運動中に到達し得る最も高い心拍数の目安です。閾値心拍数は、一定時間持続できる高い運動強度での心拍数を示します。意味が異なるため、両者の間にすべての人へ当てはまる固定の比率はありません。
トレーニング中に閾値心拍数を超えてもよいですか?
高強度インターバル、レース中のペースアップ、坂道の反復などで、一時的にLTHRを超えることはあります。LTHRはトレーニング強度を考える基準であり、すべての運動で超えてはいけない上限ではありません。
閾値心拍数は高いほど持久力が高いですか?
数値が高いほど持久力が高いとは限りません。LTHRには個人差があり、他の人との能力比較には適していません。同じ条件で、LTHR付近のペースやパワーが向上しているかを確認しましょう。
閾値心拍数はどれくらいの頻度で更新しますか?
体力が大きく変化したときや、近い条件で行った複数のトレーニングで、設定したゾーンと体感が継続的に合わなくなったときに再テストします。一度の変動や数拍程度の違いだけで、すぐに設定を変更する必要はありません。
最大心拍数基準とLTHR基準で心拍ゾーンが違うのはなぜ?
基準にする心拍数と、各ゾーンへ適用する割合が異なるためです。同じ「ゾーン2」「ゾーン4」という名称でも、計算方法によって心拍数の範囲が変わります。トレーニングプランがどの方式を使っているか確認し、ウォッチの設定とそろえましょう。
まとめ
閾値心拍数(LTHR)は、閾値付近の高い運動強度を一定時間維持するときの心拍数です。フィールドテスト、対応するSuuntoウォッチの推定、SuuntoPlusの閾値テスト、ラボ測定などから確認できます。
LTHRは高いほど優れている数値ではありません。心拍数だけを追うのではなく、ペース、パワー、呼吸、体感強度、環境、回復状態と組み合わせ、近い条件での長期的な変化を確認することが大切です。
SuuntoのスポーツウォッチとSuuntoアプリを活用すれば、心拍数、ペース、心拍ゾーン、トレーニング負荷を記録し、閾値トレーニングと低強度トレーニングのバランスを継続的に振り返れます。