ランニング中にウォッチを見て、「心拍数が160、170まで上がっているけれど大丈夫?」「ほかの人より心拍数が高いのはなぜ?」と気になったことはありませんか。
ランニング中の心拍数には、すべての人に共通する「正常値」はありません。年齢、最大心拍数、走力、ペース、気温、疲労、睡眠、トレーニング経験などによって大きく変わります。
大切なのは、単純に「心拍数が高い・低い」と判断するのではなく、その日のトレーニング目的に対して適切な運動強度になっているかを見ることです。
この記事では、ランニング中の心拍数の目安、高くなる原因、心拍数を下げる方法、心拍ゾーンや心拍ベルトを使ったトレーニングへの活用方法を解説します。

ランニング中の心拍数の目安は?
ランニング中の心拍数に、すべての人へ当てはまるひとつの正常値はありません。
例えば同じ150bpmで走っていても、最大心拍数が190bpmの人と170bpmの人では、身体にとっての運動強度が異なります。
ランニング中の心拍数を見るときは、主に、
- 最大心拍数
- 年齢
- トレーニング経験
- 現在の走力
- その日のトレーニング目的
- 気温や湿度
- 疲労・睡眠・体調
などを合わせて考える必要があります。
「何bpmなら正常か」ではなく、「自分にとってその心拍数がどの程度の運動強度なのか」を見ることが基本です。
心拍数160〜170bpmは高すぎる?
「走るとすぐ160bpmになる」「170bpmまで上がる」という人もいます。
しかし、160〜170bpmという数字だけで高すぎるとは判断できません。
例えば最大心拍数が200bpmのランナーにとって170bpmは最大心拍数の85%ですが、最大心拍数が175bpmなら約97%です。
同じ170bpmでも意味が大きく異なります。
さらに、インターバルトレーニングで170bpmまで上がることと、会話できる程度のイージーランのつもりなのに170bpmになっていることも同じではありません。
心拍数は、その日の運動目的とセットで判断しましょう。
最大心拍数を基準に考える
心拍数から運動強度を判断するときの基本となるのが最大心拍数です。
簡易的な推定式としてよく知られているのが、
最大心拍数 ≒ 220 − 年齢
という計算方法です。
例えば40歳なら、
220 − 40 = 180bpm
が推定最大心拍数になります。
ただし、これはあくまで年齢から算出した目安です。
実際の最大心拍数には大きな個人差があり、「220−年齢」が自分の正確な最大心拍数になるとは限りません。
最大心拍数の設定が実態より低ければ、ウォッチ上では簡単に高い心拍ゾーンへ入ってしまいます。
逆に最大心拍数を高く設定しすぎていれば、実際には高強度なのに低いゾーンとして表示されることがあります。
ランニングの目的によって適正心拍数は変わる
すべてのランニングを同じ心拍数で走る必要はありません。
トレーニングにはそれぞれ目的があります。
| トレーニング | 心拍数の傾向 | 主な目的 |
|---|---|---|
| リカバリーラン | 低い | 回復・軽い有酸素運動 |
| イージーラン・Zone 2 | 低〜中程度 | 有酸素能力の土台づくり |
| テンポ走 | 中〜高い | 高めの強度を持続する能力 |
| 閾値トレーニング | 高い | 乳酸閾値付近の能力 |
| インターバル | 非常に高い | VO2max・高強度能力 |
イージーランの日に心拍数が高いならペースを見直す必要があるかもしれませんが、高強度インターバルなら心拍数が大きく上がること自体は自然です。
「心拍数を低くすること」自体がランニングの目的ではありません。
目的に合った強度で走れているかを見るために心拍数を使います。
数字だけでなく呼吸と体感を見る
ランニングの強度は、ウォッチに表示される心拍数だけで判断する必要はありません。
簡単に使えるのがトークテストです。
走りながら比較的楽に会話を続けられるなら、低い運動強度である可能性があります。
一方、短い言葉しか話せないほど呼吸が激しくなっているなら、かなり高い運動強度になっています。
例えばウォッチでは低い心拍ゾーンになっているのに、呼吸が非常に苦しく、長時間続けられない場合は、最大心拍数や心拍ゾーンの設定が自分に合っているか確認してみましょう。
逆に、ウォッチでは高いゾーンになっているのに体感として非常に楽なら、測定値や設定を確認する価値があります。
ほかの人ではなく自分の過去データと比べる
ランナー同士で心拍数を比べても、それほど意味がないことがあります。
最大心拍数や安静時心拍数には個人差があるからです。
比較するなら、過去の自分と比べましょう。
例えば同じルートを同じような気候条件で走ったとき、
- 同じペースを以前より低い心拍数で走れる
- 同じ心拍数でも以前より速く走れる
ようになっていれば、有酸素能力やランニング効率が向上している可能性があります。
1回の最高心拍数よりも、数週間〜数か月にわたるペースと心拍数の関係を見る方がトレーニングの変化を理解しやすくなります。
ランニング中の心拍数が高くなる原因
「いつものペースなのに、今日は心拍数が高い」ということもあります。
心拍数は走る速さだけで決まるものではありません。
1. イージーペースが今の自分には速すぎる
多くのランナーが「いつものジョギングペース」をイージーペースだと考えます。
しかし、イージーランはペースではなく運動強度で考える必要があります。
現在の有酸素能力に対してペースが速すぎれば、自分ではゆっくり走っているつもりでも心拍数が高くなります。
特にランニングを始めたばかりの時期は、ジョギングでも心拍数が上がりやすいことがあります。
2. 有酸素能力の土台がまだ発達途中
ランニング経験が少ない場合、同じペースでも身体が多くのエネルギーを必要とし、心拍数が上がりやすくなることがあります。
低強度ランニングを継続すると、身体は少しずつ持久運動へ適応していきます。
やがて同じペースを、以前より低い心拍数で走れるようになることがあります。
3. 暑さ・湿度
暑い環境では身体が熱を逃がすために皮膚への血流を増やすため、同じペースでも心拍数が高くなることがあります。
湿度が高い場合も、汗による体温調節が難しくなり、生理的負荷が大きくなります。
暑い日は普段のペースにこだわらず、心拍数や体感に合わせて強度を下げることも大切です。
4. 脱水
長時間のランニングで水分が失われると、同じ運動強度でも心拍数が徐々に上昇することがあります。
特に暑い環境やロングランでは、気温や運動時間に合わせて水分補給を考えましょう。
5. 睡眠不足・疲労
十分に回復できていない日は、いつものペースでも身体への負荷が高く感じられることがあります。
心拍数だけでなく、睡眠、HRV、脚の重さ、主観的な疲労感なども合わせて確認しましょう。
6. 坂道や荒れた路面
登り坂ではペースが遅くても運動強度は高くなります。
トレイルや砂地など走りにくい路面でも、平坦な舗装路よりエネルギーを使うため、同じペースでも心拍数が高くなることがあります。
7. カフェインや心理的ストレス
カフェインの摂取量や緊張、心理的なストレスなども心拍数に影響する場合があります。
心拍数がいつもと違うときは、ランニングそのものだけでなく、その日の環境や生活も振り返ってみましょう。
手首心拍の数値が高く表示されることもある
身体の状態だけでなく、測定方法によって心拍数の表示が変わることもあります。
スポーツウォッチの手首式光学心拍計は、皮膚を通して血流の変化を読み取り、心拍数を推定します。
手軽に使える一方で、
- ウォッチの装着位置
- ストラップの締め具合
- 腕の動き
- 気温
- 肌との接触状態
- 急激なペース変化
などの影響を受ける場合があります。
体感では楽なのに心拍数だけ急に大きく跳ね上がるなど、数値に違和感がある場合は、まずウォッチの装着状態を確認してみましょう。

より安定した心拍記録を取りたい場合は、胸部心拍ベルトと比較する方法もあります。
特にテンポ走やインターバルのように強度が大きく変化するトレーニングでは、胸部心拍ベルトが役立ちます。
心拍ゾーンをランニングに活用する
心拍数をトレーニングへ活用するときに便利なのが心拍ゾーンです。
一般的な5ゾーンモデルでは、低強度のゾーン1から最大に近いゾーン5まで、運動強度を段階的に分けます。

例えば、
- Zone 1〜2:リカバリー、イージーラン、ロングランなど
- Zone 3〜4:テンポ走や閾値トレーニングなど
- Zone 5:高強度インターバルなど
といった使い分けができます。
ただし、心拍ゾーンの計算方法には最大心拍数、心拍予備量(HRR)、乳酸閾値心拍数(LTHR)など複数の方法があります。
そのためこの記事ではゾーン1〜5の詳細な説明は行わず、専用記事で詳しく解説しています。
▶︎ 心拍ゾーンとは?ゾーン1〜5の意味・計算方法・トレーニングへの使い方
ランニング中の心拍数を下げる方法
イージーランやZone 2のつもりなのに心拍数が高い場合、まずできるのは運動強度を下げることです。
ペースを落とす
現在のペースにこだわらず、呼吸と心拍数が落ち着くまでペースを下げてみましょう。
低強度トレーニングでは、「1km○分で走る」ことより、狙った運動強度に収めることを優先します。
ラン&ウォークを使う
ゆっくり走っても心拍数が高い場合は、短いウォーキングを挟んでも構いません。
ランニング初心者や、暑い日の低強度トレーニングにも使える方法です。
十分にウォームアップする
スタート直後からペースを上げず、身体が温まるまでゆっくり走ります。
その後、トレーニング目的に合った強度へ徐々に上げていきます。
その日のコンディションに合わせる
暑さ、湿度、睡眠不足、疲労がある日は、普段より心拍数が高くなることがあります。
そのような日に普段と同じペースを維持する必要はありません。
ペースではなく運動強度を揃えると考えると、トレーニングを調整しやすくなります。
長期的に同じペースを低い心拍数で走るには?
「もっと低い心拍数で速く走れるようになりたい」なら、1回のランニングで心拍数を無理に抑えるよりも、長期的なトレーニングを考えましょう。
低強度ランニングを継続する
Zone 2を中心とした低強度トレーニングは、有酸素能力の土台づくりに使われます。
長期的にトレーニングを続けることで、同じペースをより低い心拍数で維持できるようになる可能性があります。
▶︎ ゾーン2ランニングとは?心拍数の目安・効果・やり方を初心者向けに解説
トレーニング負荷を少しずつ増やす
急に走行距離や高強度トレーニングを増やすのではなく、身体が適応できる範囲で段階的に負荷を高めます。
長期的なトレーニング負荷を見る指標としてCTLを利用する方法もあります。
▶︎ CTLとは?トレーニング負荷の見方と上げ方|ATL・TSBとの違いも解説
低強度だけでなく強度に変化をつける
有酸素能力の土台ができてきたら、目的に応じてテンポ走やインターバルなどを取り入れます。
例えばテンポ走では、イージーランより高い「ややきつい」強度を一定時間維持し、比較的高いペースを持続する能力を鍛えます。
▶︎ テンポ走とは?ペース・心拍数・効果・練習メニューを初心者向けに解説
回復をトレーニングの一部として考える
高強度トレーニングを重ねても、十分に回復できなければパフォーマンスは上がりにくくなります。
睡眠、HRV、疲労感、安静時心拍数などを確認し、必要に応じてトレーニング強度を調整しましょう。

Suuntoでランニング中の心拍数を活用する
Suuntoスポーツウォッチを使うと、ランニング中に現在の心拍数や心拍ゾーンを確認できます。
しかし、心拍数の本当の価値はランニング中の数字を見ることだけではありません。
Suuntoアプリでは、ランニング後に、
- 心拍数
- 心拍ゾーン
- ペース
- ケイデンス
- トレーニング負荷
- 長期的な変化
などを組み合わせて振り返ることができます。

例えば、同じランニングコースを定期的に走っているなら、
「同じ心拍数でどれくらい速く走れるようになったか」
あるいは、
「同じペースをどれくらい低い心拍数で走れるようになったか」
を比較できます。
1回の最高心拍数だけを見るよりも、こうした長期的な変化を見る方がトレーニングの進歩を把握しやすくなります。
Suunto Runでは手首心拍アルゴリズムもアップデート
Suuntoでは、ランニング時の心拍計測精度の改善も継続しています。
2026年8月にはSuunto Run向けに、Suuntoが独自開発した新しい手首心拍アルゴリズムを公開しました。
Suunto社内の比較テストでは、基準となる心拍計測デバイスに対して5bpmを超える誤差が発生したデータポイントが、従来アルゴリズムと比べて約45%減少しています。
なお、これはSuuntoによる社内テストの結果であり、実際の測定精度はユーザー、運動、装着状態、環境などによって異なります。
手首心拍を利用するときは、ウォッチが運動中に動かない程度に安定して肌へ密着するよう装着することも重要です。
手首心拍と心拍ベルトをどう使い分ける?
普段のランニングなら、手首心拍は非常に手軽です。
ウォッチひとつで走り始められ、そのまま心拍ゾーンやトレーニング負荷を記録できます。
一方、胸部心拍ベルトは心臓の電気信号を検出して心拍数を測定します。
特に、
- インターバルトレーニング
- テンポ走
- 急な登りを含むトレイルランニング
- 心拍数の急な変化を細かく確認したいとき
- ZoneSenseを利用するとき
には、胸部心拍ベルトを組み合わせるメリットがあります。
普段のランニングは手首心拍、より詳しく強度を分析したい日は心拍ベルトという使い分けでも構いません。
心拍数だけでは分からない強度をZoneSenseで見る
心拍数はランニング強度を判断する便利な指標ですが、同じ心拍数なら身体の負荷も常に同じとは限りません。
例えば、疲労がある日、暑い日、長時間走った後では、同じ150bpmでも身体内部の反応が異なる場合があります。
Suunto ZoneSenseは、対応する胸部心拍ベルトから得られる一拍ごとのR-R間隔データを解析し、運動中の身体の反応から強度を捉える機能です。
ZoneSenseでは運動強度を主に、
- 有酸素領域
- 無酸素領域
- VO2max領域
として確認できます。
つまり、通常の心拍ゾーンが「設定した心拍数の範囲に今どこまで入っているか」を見るのに対して、ZoneSenseでは「身体が実際にどの強度で反応しているか」を見ることができます。
通常の心拍ゾーンとZoneSenseは競合するものではなく、組み合わせて利用できます。
▶︎ 心拍ベルトで運動強度がわかる?Suunto ZoneSenseの仕組みと使い方
▶︎ Suunto ZoneSenseと心拍ベルトの使い方|対応機種・仕組み・よくある質問
心拍数が高いときに無理をしない方がよいケース
ランニング中に心拍数が高くなること自体は、運動強度や環境によって起こります。
ただし、数値だけでなく身体の状態にも注意してください。
普段とは明らかに違う動悸や、胸の痛み、失神・失神しそうな感覚、強い息苦しさなどがある場合は、トレーニングを続けることを優先せず、必要に応じて医療機関へ相談してください。
スポーツウォッチの心拍計測はトレーニングをサポートするための機能であり、医療機器による診断を置き換えるものではありません。
まとめ|心拍数は「高い・低い」より、その意味を見る
ランニング中の心拍数には、誰にでも共通する正常値はありません。
160bpmや170bpmという数字だけを見て、高すぎる・低すぎると判断することはできません。
心拍数を見るときは、
- 自分の最大心拍数
- 心拍ゾーン
- その日のトレーニング目的
- ペース
- 呼吸・体感強度
- 暑さや湿度
- 睡眠や疲労
- 長期的な心拍数とペースの変化
を組み合わせて考えることが大切です。
イージーランで心拍数が高すぎるなら、まずペースを落とす。必要なら歩く。疲れているならトレーニング自体を調整する。
そして長期的には、低強度トレーニングを継続しながら、目的に応じてテンポ走や高強度トレーニングを組み合わせます。
心拍数は「低くすること」が目的ではなく、自分の身体がランニングにどう反応しているかを理解するための指標です。
Suuntoウォッチや心拍ベルトで記録を積み重ね、自分自身の過去データと比較しながらトレーニングに活かしていきましょう。
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ランニングの心拍数をSuuntoで記録する
ランニング中の心拍数をトレーニングに活かすには、1回の数値だけを見るのではなく、ペースや心拍ゾーンと一緒に継続して記録することが重要です。
ランニングを軽快に記録するならSuunto Run 2
Suunto Run 2は、日々のランニングやトレーニングデータを記録したいランナー向けの軽量スポーツウォッチです。
ランニング中の心拍数やペースを確認し、終了後はSuuntoアプリでトレーニングの変化を振り返ることができます。
心拍データをさらに詳しく取りたいなら心拍ベルト
テンポ走やインターバルのような強度変化の大きいトレーニングで、より安定した心拍データを取りたい場合は、胸部心拍ベルトを組み合わせる方法があります。
また、Suunto ZoneSenseを利用する場合にも、対応する胸部心拍ベルトが必要です。