たった一度の呼吸で、水深100mの世界へ。
酸素ボンベを使わず、自分の身体と呼吸だけで海の深くへ潜っていくフリーダイビング。
世界トップクラスの選手たちは、100mを超える深さに挑戦します。しかし、このスポーツで重要なのは、単純な肺活量や筋力だけではありません。
深く潜るために必要なのは、むしろ身体と心をリラックスさせること。
世界最高峰のフリーダイビング大会のひとつ「Vertical Blue(バーティカル・ブルー)」と、Suuntoアンバサダーとして長年フリーダイビング界を牽引してきたウィリアム・トゥルブリッジ(William Trubridge)の挑戦から、奥深いフリーダイビングの世界を覗いてみましょう。
フリーダイビングとは?
フリーダイビングは、スキューバダイビングのように呼吸用のタンクを使わず、一呼吸で水中へ潜るダイビングです。
人間が息を止めて水中へ潜る行為そのものには長い歴史があります。魚介類を採るために海へ潜る文化は世界各地に存在し、現在では水中世界を楽しむレクリエーションから、深さや距離を競う競技までさまざまなスタイルがあります。
「息を止めて、どれだけ深く潜れるか」というシンプルな行為だからこそ、身体能力だけではなく、呼吸、心拍、精神状態、そして自分自身の身体への理解が重要になります。
フリーダイビングの仕組みや、水中で人間の身体に起きる変化についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
▶︎ 図解でわかるフリーダイビング|一呼吸で潜る身体の仕組み
世界最高峰の大会「Vertical Blue」
世界中からトップフリーダイバーが集まる大会のひとつが、Vertical Blueです。
この記事の元となった2021年大会は、新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以降、久しぶりに開催された大規模な国際フリーダイビング大会でした。
世界各地で移動や海でのトレーニングが制限された期間を経て、トップアスリートたちが再び同じ海へ集結。
大会を主催していたのが、Suuntoアンバサダーであり、自身も世界トップクラスのフリーダイバーとして活躍してきたウィリアム・トゥルブリッジです。
当時ウィリアムは、世界記録保持者をはじめ、記録更新を狙える選手が数多く集まる大会になると期待していました。
実際、トレーニングでは100m級のダイブが珍しくないほど、世界トップレベルの選手たちは深い領域へ挑んでいました。
舞台はディーンズ・ブルー・ホール
Vertical Blueの舞台となるのは、バハマ・ロングアイランドにあるDean's Blue Hole(ディーンズ・ブルー・ホール)。
岸からすぐ近くに深い水域が広がる独特の環境で、世界のトップフリーダイバーたちが深度記録へ挑戦してきた場所です。
水面から一本のラインが深いブルーの中へ伸び、そのラインに沿ってダイバーが潜降していきます。
観客から見れば非常に静かな競技です。
しかし水中では、水圧、浮力、酸素消費、耳抜き、身体のリラックスなど、さまざまな要素をコントロールしながら、ダイバーは自分自身と向き合っています。

深度競技にはどんな種目がある?
フリーダイビングの深度競技には、潜り方によっていくつかの種目があります。
コンスタント・ウェイト(CWT)
フィンまたはモノフィンを使い、自分の泳力で潜降・浮上する種目です。深度競技を代表する種目のひとつです。
コンスタント・ウェイト・ウィズアウト・フィン(CNF)
フィンを使わず、腕と脚の力だけで潜降・浮上します。
ウィリアム・トゥルブリッジが長年世界トップレベルで競ってきた種目で、推進力を生み出すフィンがないため、高度な泳法と効率的な酸素利用が求められます。
フリー・イマージョン(FIM)
垂直に張られたロープを手でたぐりながら潜降・浮上する種目です。
フィンキックを使わないため、身体の動きや呼吸、耳抜きなどに集中しながら深度を目指します。
Vertical Blueでは、こうした異なる種目で世界トップクラスのダイバーたちが限界へ挑戦します。
水深100mでは身体に何が起こる?
世界トップクラスになると、フリーダイバーは100m級の深さへ到達します。
深くなるにつれて水圧は増し、肺の容積も小さくなっていきます。一方、人間の身体には水中環境へ対応するための「ダイブ反射」と呼ばれる生理的反応があります。
顔が水に浸かることで心拍が低下し、酸素消費を抑えようとする反応などが起こります。
深い領域では浮力も変化するため、トップダイバーは途中から大きく泳がず、身体をリラックスさせながら沈んでいく「フリーフォール」に入ります。

しかし、深く潜った後には当然、同じ距離を水面まで戻らなければなりません。
特に浮上の終盤は酸素が少なくなっているため、競技では厳格な安全管理と専門的なトレーニングが不可欠です。
フリーダイビングは自己流で深度を追求するスポーツではありません。挑戦する場合は、適切な講習を受け、安全管理された環境とバディシステムのもとで行うことが重要です。
深く潜るために必要なのは「リラックス」
100mもの深さを目指す競技と聞くと、「強い身体」や「大きな肺活量」が最も重要だと思うかもしれません。
しかし、ウィリアムが語っていたのは、それとは少し違う側面でした。
深度フリーダイビングでは、リラックスした状態でいることがパフォーマンスにとって非常に重要です。
Vertical Blue 2021の開催準備では、パンデミックに伴う渡航・健康上の制限によって、ウィリアム自身の運営業務も大幅に増加しました。
大会の約1か月前まではトレーニングが順調に進み、フリー・イマージョンで世界記録への挑戦が見えるところまで来ていたといいます。
ところが大会運営の仕事とストレスが増えるにつれ、十分なトレーニングと回復の時間を確保することが難しくなりました。
筋力を使い切るのではなく、余計な力を抜き、限られた酸素を効率的に使う。
フリーダイビングは、「頑張ること」と同じくらい「力を抜くこと」が重要なスポーツなのです。
フリーダイビングでデータを記録する意味
フリーダイビングでは感覚だけでなく、自分のダイブを客観的に振り返ることも大切です。
例えば、
- どのくらいの深度まで潜ったのか
- 水中に何分いたのか
- どのくらいの速度で潜降・浮上したのか
- 水面でどのくらい休息したのか
といった情報を記録しておけば、ダイブ後に自分のパフォーマンスを振り返る材料になります。
「今日は深く潜れた」という結果だけを見るのではなく、そこに至るまでのプロセスを記録する。
これはランニングやサイクリングなどのトレーニングと同じように、自分自身を理解するためのひとつの方法です。
Suuntoで水中の冒険を記録する
Suuntoは長年にわたり、ダイバーが水中で必要な情報を確認し、ダイブを記録するための製品を開発してきました。
現在は、ダイビングだけでなく陸上でのスポーツや日常のトレーニングまでひとつのデバイスで記録したい人向けのSuunto Oceanと、ダイビング機能に特化したSuunto Nauticシリーズがあります。
ダイビングも陸上スポーツも楽しむなら「Suunto Ocean」
Suunto Oceanは、ダイブコンピューターとGPSスポーツウォッチの機能をひとつにまとめたモデルです。
フリーダイブモードでは、水中ビューと水面ビューを使ってダイブを確認でき、深度、ダイブタイム、上昇・下降速度などに関するアラートにも対応しています。
さらに、ランニング、サイクリング、アウトドアなど115種類以上のスポーツモードに対応。海の中だけでなく、普段のトレーニングまでひとつのウォッチで記録できます。
フリーダイビングだけに限定せず、水中と陸上の両方でアクティブに過ごしたい人に適した選択肢です。
水中機能に集中したいなら「Suunto Nautic S」
スポーツウォッチとしての日常機能より、ダイビングに必要な機能へ集中したい場合は、Suunto Nautic Sも選択肢です。
コンパクトなボディにダイビング向け機能を搭載し、スキューバダイビングだけでなく、フリーダイビング、シュノーケリング、マーメイディングにも対応しています。
Suunto OceanとNauticシリーズの違いや、自分に合ったダイブコンピューターを確認したい方はこちらも参考にしてください。
▶︎ Suunto Nautic / Nautic Sの機能と違いを見る
まとめ|深さを競うだけではない、フリーダイビングの魅力
一呼吸で海へ潜る。
フリーダイビングというスポーツのルールは、とてもシンプルです。
しかし深く潜ろうとすればするほど、自分の呼吸、身体、精神状態と向き合う必要があります。
世界最高峰の選手たちが集うVertical Blueでさえ、重要なのはただ力いっぱい泳ぐことではありません。
力を抜き、身体の状態を理解し、自分自身をコントロールする。
そしてダイブを記録し、振り返り、次の挑戦につなげていく。
競技として深度を追求する人にも、海の中を静かに探索することを楽しむ人にも、フリーダイビングにはそれぞれの楽しみ方があります。
次に海へ入るときは、水面の下に広がる世界を、いつもとは少し違う視点で覗いてみてはいかがでしょうか。
Images: © Daan Verhoeven