山を登り、風をつかんで飛び、飛べなければ再び歩く。Red Bull X-Alps(レッドブル・エックスアルプス)は、徒歩とパラグライダーだけでアルプスを進む「ハイク&フライ」のアドベンチャーレースです。
必要なのは体力や飛行技術だけではありません。天候、地形、空域、疲労を読みながら、いつ飛び、どこに着陸し、どこから再び離陸するかを判断し続けます。本記事では大会の仕組みを解説し、2019年に発表された1,138kmのルートから、そのスケールと難しさを振り返ります。

Red Bull X-Alpsとは?

Red Bull X-Alpsは、世界各地から選ばれたトップクラスのパラグライダーパイロット兼アドベンチャーアスリートが、アルプスを横断するレースです。2003年に始まり、原則として2年ごとに開催されています。
選手が前へ進む手段は、自分の足とパラグライダーのみです。まず飛び立てる場所まで歩いて登り、上昇気流や風を利用して距離を伸ばします。飛行条件が整わないときや着陸後は、パラグライダーを含む装備を背負って再び徒歩で進みます。このスタイルが「ハイク&フライ」です。
| 要素 | X-Alpsで求められること |
|---|---|
| 徒歩 | 装備を背負い、離陸地点やターンポイントまで長距離・大きな標高差を進む |
| 飛行 | 風、上昇気流、雲、地形、空域を読み、安全に飛行・着陸する |
| ルート判断 | 飛行距離だけでなく、着陸後の登り返しや次の離陸地点まで考える |
| 回復 | 限られた休息時間で食事、睡眠、身体のケアを行う |
コースやターンポイント、細かな競技規則は開催年ごとに変わります。観戦ではGPSによるライブトラッキングを通じて、選手が歩いているのか飛んでいるのか、どのルートを選んだのかをリアルタイムで追えることも大きな魅力です。
なぜX-Alpsは過酷なのか

パラグライダーなら徒歩より速く進めるように見えます。しかし、飛べるかどうかは天候と地形に左右されます。雨、強風、低い雲、雪に覆われた山では、上昇気流を利用できないことがあります。飛行を断念すれば、選手は装備を背負い、谷から次の山へ何時間も歩かなければなりません。
着陸地点の選択も戦略です。進行方向へ少しでも遠く飛ぶことだけを考えると、深い谷に降りて大きく登り返す場合があります。次に飛び立てる斜面、道路、気象の変化まで読み、空と地上をひとつのルートとして組み立てる必要があります。
さらにアルプスには、氷河、高峰、複雑な谷、飛行制限空域があります。長時間の持久力に加え、疲労した状態でも安全に関わる判断の質を落とさないことが重要です。X-Alpsは専門的な飛行技術と山岳経験を持つ選手のための競技であり、一般の登山やパラグライダーで再現できる挑戦ではありません。
2019年大会は1,138km・13ターンポイント

ここから紹介するのは、2019年に開催された第9回大会のルートです。オーストリアのザルツブルクからモナコまで、直線距離で1,138km。32人の選手が13のターンポイントを通過しながら、オーストリア、ドイツ、イタリア、スイス、フランスの5か国を進みました。
前年大会よりターンポイントが大幅に増え、アルプスを南北に5回横断するジグザグのルートでした。距離だけを見ても長大ですが、実際の移動距離は選手が選ぶ飛行経路や徒歩ルートによって変わります。2019年当時、ベテラン選手のポール・グシュルバウアーは、残雪が多い山域では上昇気流が発達せず、標高2,500m付近を徒歩で越える可能性にも触れていました。
2019年大会の数字
距離:1,138km/選手:32人/参加国:20か国/ターンポイント:13地点/通過国:5か国
これらは2019年大会の情報です。現在の大会も徒歩とパラグライダーで進む基本コンセプトを受け継いでいますが、距離、ルート、参加人数、競技規則は開催年によって異なります。
2019年ルートを象徴する難所

序盤:空港周辺の制限空域を避ける
ザルツブルクをスタートした選手は、パラグライダーを背負って標高1,288mのガイスベルクへ登ります。その後の区間では山を越えながら、ザルツブルク空港周辺の制限空域を避ける必要がありました。最短距離だけでは決められない、X-Alpsらしいルート判断が序盤から始まります。
ドイツからイタリアへ:雪、氷河、強風
アシャウからイタリアのクロンプラッツへ向かう区間では、雪に覆われた山々や氷河、ドロミテの地形、強風が選手を待ち受けます。着地点を誤って谷へ降りれば、標高2,275mのターンポイントまで長い登り返しが必要です。飛行技術と、その後の徒歩区間を見通す判断が一体になります。
ティトリス周辺:飛べなければ高所まで歩く
スイスのティトリスへ向かう区間は、悪天候の影響が大きい場所でした。飛べない場合は徒歩で高所のターンポイントへ向かわなければならず、主催者が定めたアクセス条件によってルート選択も複雑になります。
アイガー、モンブラン、モンテ・ヴィーゾ
後半には、アルプスを代表するアイガーやモンブランを通過します。山頂へ立つのではなく、GPSで指定された仮想シリンダーを通過したり、定められた側から山を回り込んだりする課題が設定されました。さらにイタリアのモンテ・ヴィーゾ周辺では、複雑な山と谷を読みながら進む必要がありました。
フィニッシュ直前:低い山にも潜む落とし穴
計時上の最終地点は、標高709mのフランス・ペイユ。これまでの高峰と比べれば低く見えますが、手前には丘が連なり、上昇気流を読み違えると着陸して徒歩へ切り替えることになります。その先、モナコの地中海に浮かぶフロートが2019年大会のセレモニアルフィニッシュでした。
個人競技に見えて、チームで挑むレース

実際に歩き、飛ぶのは選手自身ですが、X-Alpsは一人だけで完結する競技ではありません。各選手には公式サポーターがつき、気象とルートの情報整理、戦略、食事、移動、身体とメンタルのケアなどを支えます。
選手は上空や山中で刻々と変化する状況を見ながら、サポートチームから得た情報と現地の感覚を照合します。速く進むルートが、必ずしも最後まで進み続けられるルートとは限りません。翌日の天候、補給、睡眠、身体の状態まで含めて選択する点に、アドベンチャーレースとしての奥深さがあります。
ライブトラッキングでは、同じターンポイントを目指す選手が別々の谷や尾根を選ぶ場面も見られます。単純な順位だけでなく、「なぜそのルートを選んだのか」を想像しながら追うと、観戦のおもしろさが増します。
Suuntoが支えた2019年の挑戦

2019年大会に合わせて登場したSuunto 9 Baro Red Bull X-Alps Limited Editionは、当時のルート距離にちなみ1,138本が用意された限定モデルでした。これは2019年当時の製品であり、現在のモデルではありません。
長大な山岳ルートでは、現在地、予定ルート、標高、行動時間を把握し、記録を途切れさせないことが重要です。ただし、GPSウォッチは天候、地形、飛行可否を自動的に判断するものでも、安全を保証するものでもありません。競技では専門機器、公式情報、サポートチーム、選手自身の経験を組み合わせて判断します。
現在の長距離アウトドアでは、Suunto Vertical 2がオフラインマップ、ルートナビゲーション、長時間のGPS記録に対応しています。地図とルートは役割が異なるため、出発前に必要な地図エリアと予定ルートの両方を準備しておくことが大切です。操作方法は「Suunto Verticalシリーズでオフラインマップを使う方法」と「SUUNTOの地図・ナビゲーション画面の見方」で詳しく紹介しています。
まとめ:一歩と一度の飛行をつなぐ冒険
Red Bull X-Alpsは、徒歩とパラグライダーを交互に使うだけのレースではありません。山を読み、空を読み、疲労と向き合い、サポートチームとともに次の一手を決め続ける冒険です。
2019年の1,138kmルートは、制限空域、雪と氷河、強風、複雑な谷、着陸後の登り返しを組み合わせ、ハイク&フライの厳しさとおもしろさを鮮明に示しました。大会ルートが変わっても、自分の足で高度を稼ぎ、風に乗り、また歩き始めるというX-Alpsの本質は変わりません。
山での長時間行動では、事前のルート計画と現地での確認を重ねることが基本です。Suuntoのアウトドアウォッチは、オフラインマップ、ナビゲーション、標高、行動記録をひとつの手元で確認し、次の判断に必要な情報を整理する助けになります。
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