地図とコンパスを手に、道のない森を走りながら次のポイントを探す——。フィンランドで毎年開催されるユコラリレー(Jukola Relay)は、世界最大級のリレーオリエンテーリング大会です。
速く走るだけでは勝てません。地形を読み、進むルートを選び、現在地と方向を確認し続ける力が求められます。
この記事では、ユコラリレーの特徴と、2018年大会を前に世界選手権スプリント競技優勝者のマーテン・ボストロムが語った「フィンランドの窪地地形を攻略するコツ」を紹介します。オリエンテーリングだけでなく、地図とコンパスを使って森を進むときにも役立つ考え方です。

Photo: Petri Kovalainen / Suunto
ユコラリレーとは?
ユコラは、フィンランド各地で毎年開催されるオリエンテーリングのリレーイベントです。1949年に第1回大会が開催され、その後は開催地を変えながら歴史を重ねてきました。
Suuntoも、フィンランドのオリエンテーリング選手だったトゥオマス・ヴォフロネンが、より安定したコンパスを開発したことから始まったブランドです。その歩みは「スントはどこの国のブランド?フィンランド生まれの90年の歴史」で紹介しています。
イベントは、7区間をつなぐユコラリレーと、4区間をつなぐヴェンラリレーで構成されています。競技クラブだけでなく、一般のグループもチームを作って参加できます。トップチームが順位を争う一方で、多くの参加者にとっては、仲間とたすきをつなぎ、全員で完走することが大きな目標です。
ユコラリレーは夜に一斉スタートし、選手たちはヘッドランプで森を照らしながら走ります。ルートは地面に表示されているわけではありません。選手は競技用地図に記されたコントロールを順番に回り、自分で走るラインを決めます。
速さ、持久力、読図、方向感覚、そしてミスをしたときに現在地を立て直す判断力。そのすべてが試されるのが、ユコラの魅力です。
フィンランド特有の窪地地形
2018年の第70回ユコラリレーと第41回ヴェンラリレーは、フィンランド南部のラハティとホッロラで開催されました。この地域の大きな特徴は、氷河期の作用によって形成された窪地が連続する地形です。
尾根や丘は周囲より高いため、進みながら目印として見つけやすい地形です。一方、窪地は周囲より低い場所にあり、森の中では遠くから輪郭を捉えにくいことがあります。地図上でも、等高線が上りを表しているのか、下りを表しているのかを慎重に判断しなければなりません。
ボストロムは当時のテレインについて、ナビゲーションに使う特徴の多くが、普段の走行面より上ではなく下にある点が難しいと説明しました。
窪地の大きさはさまざまで、深さが数十メートルに達する場所もあります。森自体は比較的走りやすく、小径も多いため、単純に最短距離を選ぶのではなく、地形と走りやすさを組み合わせてルートを判断する必要がありました。
窪地地形を攻略する3つのポイント

Photo: Petri Kovalainen / Suunto
1.すべての窪地を直進しない
地図上の直線距離が短くても、深い窪地を何度も上り下りすれば、時間と体力を失います。窪地の底が開けていて走りやすい場合を除き、必ずしも底を突っ切る必要はありません。
目的地までの距離だけでなく、下降と登り返し、植生、地面の状態、出口の見つけやすさまで考えてルートを比べます。
2.窪地の間にある尾根を利用する
窪地と窪地の間に延びる尾根は、余計な高低差を避けながら進めるルートになることがあります。動物の踏み跡や、先に走った選手のトレースも尾根沿いにできやすいため、走りやすいラインを見つけられる可能性があります。
ただし、ほかの選手の跡が自分と同じコントロールへ向かっているとは限りません。トレースだけを追わず、地図とコンパスで自分の進行方向を確認することが重要です。
3.窪地から出る角度を決めておく
窪地へ下ると、周囲の視界が限られ、現在地を正確に特定しにくくなります。入る前に、どちら側から抜けるのか、出口から次に何を目印にするのかを決めておきましょう。
窪地の中で方向がずれたまま登り返すと、尾根へ出た時点で予定とは違う場所にいることがあります。入る前にコンパスで方向を合わせ、底でもう一度確認し、正しい角度で退出することがポイントです。
コンパスで方向を保つ
輪郭がなだらかな地形では、目立つ岩や急な尾根のような明確な目印が少なく、地形だけで現在地を一点に絞るのが難しくなります。そこで重要になるのが、コンパスをこまめに確認し、進行方向のずれを小さいうちに修正することです。
競技オリエンテーリングでは、地図を持った手の親指に装着するサムコンパスがよく使われます。地図とコンパスを同じ視野に入れやすく、走りながらでも方向を素早く確認できるためです。
Suunto AIM-6は、マーテン・ボストロムとの協力によって開発された競技向けサムコンパスです。針の安定性と視認性を重視し、方向を繰り返し確認するオリエンテーリングで使いやすい設計になっています。
ただし、コンパスを持つだけで正確に進めるわけではありません。地図の北とコンパスの針を合わせ、周囲の地形を照合しながら現在地を更新する練習が必要です。
オリエンテーリングを始めるには
オリエンテーリングは、競技経験がなくても始められます。日本各地には常設のパーマネントコースがあり、初心者向け講習会や体験クラスを用意する大会もあります。
初めて森へ入る場合は、いきなり速く走るのではなく、次の基本を一つずつ練習しましょう。
- 地図の縮尺、記号、等高線を確認する
- 地図を進行方向に合わせて持つ
- 道、尾根、沢、植生の境界など、見つけやすい特徴をつなぐ
- 現在地を見失う前に、短い間隔で地図と周囲を照合する
- 迷ったら最後に位置を確認できた場所へ安全に戻る
登山やハイキングでコンパスを使う場合は、競技とは目的や手順が異なります。「登山・ハイキングで迷わないための安全対策」も確認し、紙地図、行動計画、天候情報などと組み合わせてください。
まとめ
ユコラリレーは、森を速く走る能力だけでなく、地図から地形を想像し、その場でルートを選ぶ力が問われる大会です。
窪地が連続する地形では、すべてを直進せず、尾根を利用し、窪地から出る角度をコンパスで確認することが重要です。2018年大会に向けたボストロムの助言は、開催地が変わっても、地形を読みながら進む基本として活用できます。
競技用のサムコンパスから、ハイキングや登山に適したベースプレートコンパスまで、用途によって必要な構造や機能は異なります。活動に合ったSuuntoコンパスを選び、使い方を安全な場所で練習してからフィールドへ出かけましょう。