トレイルランニングでは、平地と同じペースを守ろうとすると、急な登りで必要以上に消耗してしまいます。登りを安定して進むには、1kmあたりのペースだけでなく、勾配、垂直速度、区間の獲得標高、心拍数などを組み合わせて運動強度を管理することが大切です。
SuuntoのGPSウォッチでは、登りを自動検出して区間ごとのデータを表示するSuuntoPlusのClimb機能や、高度・累積標高のデータを活用できます。この記事では、トレランや登山で表示される数値の意味、登りでのペース配分、坂道トレーニングへの活用方法を解説します。

トレランの登りでペース表示だけでは足りない理由
同じ6分00秒/kmでも、平地と急な登りでは身体への負荷が大きく異なります。登りで平地の目標ペースを追い続けると、序盤で心拍数が上がりすぎ、後半の走力や下りでの集中力を失う原因になります。
起伏のあるコースでは、次のデータを目的に応じて使い分けます。
- 勾配:現在の坂がどの程度急なのかを把握する
- 垂直速度:1時間あたりに何m登るペースなのかを見る
- 区間獲得標高:現在の登りで何m上昇したかを確認する
- 累積標高:アクティビティ全体で登った合計を確認する
- NGP:勾配の影響を考慮し、平地相当に調整したペースを見る
- 心拍数・ZoneSense:身体内部の負荷が上がりすぎていないかを確認する
ひとつの数値だけでペースを決めるのではなく、コースの長さ、残りの標高差、気温、補給状況、体感と合わせて判断することが重要です。
SuuntoPlus Climbとは
SuuntoPlus Climbは、アクティビティ中の登りを検出し、登り区間の情報を専用画面で確認できるSuuntoPlusスポーツアプリです。ランニングやトレイルランニングでは坂道練習の反復を把握するだけでなく、長い登りで強度を保つためにも利用できます。登山やサイクリング、スキーなどでは、垂直速度や獲得標高を見ながら進行ペースを管理できます。
対応するモデルや表示項目は、ウォッチとソフトウェアのバージョンによって異なる場合があります。使用前にSuuntoアプリのSuuntoPlus StoreでClimbが表示されるか、使用するウォッチへ追加できるかを確認してください。
Climbとルートナビゲーションは役割が異なります。Climbは現在の登り方を把握するための機能です。コース、分岐、残り距離を確認する場合は、事前にルートをウォッチへ同期し、地図・ナビゲーション画面を併用してください。
登りの画面に表示される数値の見方

① 現在の登りで獲得した標高
画面左上の「60m」は、このアクティビティ全体の累積標高ではなく、現在進んでいる1つの登りが始まってから、何m上昇したかを示しています。
たとえば、標高500mの地点から登り始め、現在地が標高560mなら、画面には約60mと表示されます。その日のスタートから合計で何m登ったかを示す「累積標高」とは別の数値です。
- 現在の登りで獲得した標高:今進んでいる登りだけの上昇量
- 累積標高:アクティビティ開始から登った標高の合計
- 登り回数:Climbが検出し、完了した登り区間の数
登りが終わると、その区間が1本として数えられます。次の登りが始まると、その新しい登りで獲得した標高が再び0m付近から増えていきます。検出条件や表示動作はGPSウォッチのモデルやソフトウェア更新によって変わる場合があります。
② 現在の勾配(%)
勾配は、水平に100m進んだときに何m上昇する傾きかを割合で示します。たとえば10%は、水平距離100mに対して約10m上昇する傾きです。ウォッチに表示される勾配は直近の移動と高度変化から算出されるため、瞬間的な一歩の傾きではありません。
数値が大きくなるほど急になりますが、路面の滑りやすさ、段差、標高、気温によっても難易度は変わります。「何%なら必ず走る」と決めず、歩いたほうが効率的な場面ではパワーハイクへ切り替えましょう。
③ NGP|坂道の負荷を平地のペースに置き換えた目安
NGP(Normalized Graded Pace)は、登り下りによる負荷の違いを考慮し、平地ならどのくらいのペースで走っている負荷に相当するかを示す目安です。
たとえば、登りを実際には1kmあたり8分で走っていても、身体には平地を1kmあたり6分で走るのと同程度の負荷がかかっている場合、NGPには約6分/kmと表示されます。実際のペースが遅くなる登りでも、運動強度が高すぎないかを判断しやすくなります。
画像ではNGPが「--」になっています。これは停止中、開始直後、移動データがまだ十分でない場合など、計算に必要な情報が揃っていないときに表示されることがあります。
NGPは、岩場、ぬかるみ、強風、標高、荷物の重さなど、すべての要因を反映するものではありません。足元の安全と体感を優先し、心拍数やZoneSenseと一緒に確認してください。
④ 垂直速度(m/h)
垂直速度は、現在のペースを1時間続けた場合に何m登るかを示す値です。たとえば600m/hなら、同じペースと条件が続けば1時間で約600m上昇する計算です。
標高差300mの登りを垂直速度600m/hで進む場合、単純計算では約30分が目安になります。ただし、斜度、路面、休憩、渋滞、疲労で速度は変わるため、到着時刻を保証する数値ではありません。自分が長く維持できる垂直速度を普段のトレーニングで把握しておくと、レースや登山の計画に活用できます。
⑤ アクティビティの継続時間
画面下部には、アクティビティの記録を開始してからの継続時間が表示されます。画像の「1:13'25」は、記録開始から1時間13分25秒が経過していることを示します。
長時間のトレイルランニングや登山では、経過時間を補給、給水、折り返し、日没までの残り時間と照らし合わせて確認します。スマートウォッチの通知を見る感覚ではなく、安全な行動計画を守るための時間情報として活用しましょう。
| 確認したいこと | 見るデータ | 使い方 |
|---|---|---|
| 坂の急さ | 勾配 | 走るか歩くか、歩幅をどの程度小さくするかを判断 |
| 登る速さ | 垂直速度 | 長い登りで維持できる登高ペースを管理 |
| 現在の登りの進み具合 | 区間獲得標高 | ルート情報の標高差と照らし合わせる |
| 起伏を考慮した走行強度 | NGP・心拍数・ZoneSense | ペース表示だけでなく身体負荷も確認 |
トレイルランニングでの活用方法
Suunto Vertical 2のようにオフラインマップと高度計を備えたモデルでは、ルートナビゲーションと登りのデータを使い分けることで、方向と運動強度の両方を確認できます。レースや長時間のトレイルでは、次のように活用します。
序盤の登りでオーバーペースを防ぐ
スタート直後は周囲のペースにつられやすいため、心拍数やZoneSenseと垂直速度を確認し、自分が長く維持できる強度を超えていないか見ます。特に長いレースでは、1つ目の登りで数分短縮することより、後半まで安定して動ける余力を残すことが重要です。
走る区間と歩く区間を切り替える
急勾配では、走り続けるよりパワーハイクのほうが心拍数を抑えながら効率よく進めることがあります。勾配だけを基準にするのではなく、心拍数、呼吸、脚の疲労、路面状況を見ながら切り替えます。
登りごとのデータを比較する
同じ坂を繰り返す練習では、登りの所要時間、垂直速度、心拍数を比較します。タイムだけが速くても心拍数が大幅に上がっていれば、同じ効率で登れたとは限りません。同程度の心拍数で垂直速度が上がっているかを見ると、登坂力の変化を追いやすくなります。
コースの方向、標高プロファイル、縮尺、ターン案内については「登山・トレイルランニングで役立つ地図・ナビゲーション画面の見方」も参考にしてください。
登山での活用方法
登山では、垂直速度と残りの標高差を組み合わせることで、山頂や峠までの所要時間を大まかに見積もれます。普段の山行で自分が無理なく維持できる垂直速度を記録しておけば、休憩、日没、天候悪化を考慮した行動計画を立てやすくなります。
ただし、ウォッチの計算値だけで到着時刻や撤退判断を決めないでください。地図上の距離、路面、鎖場、積雪、集団の速度、休憩時間、天候を含めて余裕を持った計画を立て、予定より遅れている場合は早めにルート短縮や撤退を判断します。
坂道トレーニングで登坂力を鍛える
Climbはレース中だけでなく、坂道を繰り返すトレーニングにも利用できます。目的によってメニューを変えましょう。
| 目的 | メニュー例 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| フォームとパワー | 短い坂を10〜20秒、十分に回復しながら4〜8本 | 姿勢と接地を崩さず、全力になりすぎない |
| 登坂持久力 | 2〜5分の登りを、ゆっくり下って回復しながら4〜6本 | 後半も垂直速度とフォームを維持できる強度 |
| 長い登りのペース配分 | 15〜30分以上の登りを一定強度で1〜3本 | 心拍数・ZoneSenseと垂直速度の安定 |
高強度の坂道練習は連日行わず、ウォームアップとクールダウンを確保してください。痛みがある場合や、下りでフォームを維持できないほど疲労している場合は中止します。運動習慣や競技経験に合わせて、本数と強度を調整してください。
SuuntoPlus Climbの追加・使用方法
現在のSuuntoPlusスポーツアプリは、SuuntoアプリのSuuntoPlus Storeからライブラリとウォッチへ追加します。
- Suuntoアプリで、ペアリング済みウォッチの画面を開く
- 「SuuntoPlus Store」を開き、スポーツアプリからClimbを探す
- Climbをライブラリへ追加し、「ウォッチで使用」を有効にする
- ウォッチを同期する
- ウォッチで「エクササイズ」からスポーツモードを選ぶ
- 記録開始前のオプションから「SuuntoPlus」を開き、Climbを選択する
- 記録を開始し、運動中に画面を切り替えてClimbの表示を確認する
SuuntoPlusスポーツアプリは、ウォッチへ保存できる数や、1回のアクティビティで同時に使用できる数に制限があります。公式サポートではウォッチへ保存できるスポーツアプリは最大15個、運動中に選べるスポーツアプリは1つと案内されています。モデルやソフトウェア更新によって仕様が変わる可能性があるため、使用前にアプリ内の表示を確認してください。
高度データを正確に記録するポイント
登りの検出、勾配、垂直速度、獲得標高は高度データをもとに計算されます。気圧高度計を備えたモデルは、気圧変化を利用して細かな高度変化を追跡できます。GPS高度を使用するモデルでは、短く小さなアップダウンが検出されにくい場合があります。
- 運動前にウォッチとSuuntoアプリを同期し、衛星軌道データを更新する
- 記録開始前に屋外の開けた場所でGPS測位を待つ
- 気圧センサー周辺を泥、汗、衣服でふさがない
- 急な天候変化では、気圧変動が高度表示に影響する可能性を考慮する
- 同じルートを比較するときは、なるべく同じ地点から記録を開始する
アクティビティ終了後はSuuntoアプリで高度グラフと累積標高を確認できます。累積標高を目標にする挑戦については「エベレスティングとは?累積標高8848mに挑戦するルールと準備」もご覧ください。
まとめ
トレイルランニングや登山の登りでは、平地と同じペースを追うのではなく、勾配、垂直速度、獲得標高、NGP、心拍数などを使って運動強度を管理します。SuuntoPlus Climbを使えば、現在の登り区間を認識しながら、登り方をリアルタイムで調整できます。
まずは普段のトレーニングで、自分が無理なく維持できる垂直速度や心拍数を把握しましょう。その基準があれば、レース序盤のオーバーペースを防ぎ、長い登りや登山の行動計画にもデータを役立てられます。
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オフラインマップ、高度データ、トレーニング機能を備えたモデルを比較して、自分のフィールドに合うウォッチを見つけましょう。
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