「ウルトラマラソンは、毎週何十時間も走れる特別な人の競技」「山の近くに住んでいなければ練習できない」。そんなイメージから、挑戦する前に諦めていませんか。
ウルトラマラソンは、一般にフルマラソンの42.195kmを超える距離を走る競技です。距離だけを見ると途方もなく感じますが、求められるのはスピードや才能だけではありません。トレーニングの継続、ペース配分、補給、装備、そして状況に対応する判断力が重要です。
本記事では、ウルトラランニングの指導で知られるジェイソン・クープの考え方をもとに、初心者が抱きやすい4つの誤解を解説します。
ウルトラマラソンでは、速さだけでなく長時間動き続けるための準備が重要です。
ウルトラマラソンとは?ロードとトレイルの違い
ウルトラマラソンには、舗装路を走る大会と、山道や未舗装路を走るウルトラトレイルがあります。代表的な距離は50km、50マイル、100km、100マイルなどですが、時間制で走行距離を競う大会もあります。
同じ距離でも、累積標高、路面、気温、標高、エイド間隔によって難易度は大きく変わります。大会を選ぶときは距離だけで判断せず、コースプロフィール、関門時刻、必携装備、過去の完走率まで確認しましょう。
誤解1:ウルトラには膨大な練習時間が必要
原文でジェイソン・クープが最初に挙げたのは、「毎週18時間や24時間もトレーニングしなければならない」という思い込みです。長い距離への適応には一定の練習量が必要ですが、距離や時間を増やせば増やすほど、同じ割合で能力が伸びるわけではありません。
仕事や家庭と両立するランナーは、確保できる時間の中で練習の目的を明確にすることが大切です。
- 無理のない頻度で走る習慣を作る
- 会話できる程度の低強度ランで持久力の土台を作る
- 大会に近づいたら、長時間動く練習を段階的に取り入れる
- 疲労が大きいときは、距離を増やすより回復を優先する
長時間練習を一度こなすことより、継続できる負荷を積み重ねること。
急激な走行距離の増加は、故障や疲労の蓄積につながります。現在の経験と体調から段階的に伸ばしましょう。
誤解2:山で練習しなければウルトラを走れない
山岳レースに出るなら、実際の登り下りや不整地に慣れる練習は有効です。しかし、日常的に山へ行けないからといって、挑戦できないわけではありません。クープは、まず心肺持久力という土台を高めることが重要だと説明しています。
山へ行ける日は実地練習に使い、平日は身近な環境で基礎を積み上げましょう。写真:Philipp Reiter
平地のランニングに加えて、坂道、階段、傾斜を付けたトレッドミル、筋力トレーニングを活用できます。下りでは筋肉に独特の負荷がかかるため、山岳レースを目指す場合は、本番までに安全な環境で下りの技術と脚の耐久性も確認してください。
重要なのは「山へ行った回数」ではなく、出場する大会の特性に対して足りない要素を把握し、身近な環境で代替しながら、実地練習の機会を計画することです。
誤解3:ウルトラを走るには特別な才能が必要
高いVO2maxやマラソンのスピードがあれば有利な場面はありますが、それだけでウルトラの結果が決まるわけではありません。長時間のレースでは、ペース戦略、補給、装備選び、トラブル対応、精神的な粘りなど、複数の能力が結果を左右します。
つまり、短い距離で圧倒的に速くなくても、準備と判断によって自分の強みを生かせます。特に初心者は、他の選手のスピードではなく、自分が無理なく維持できる強度を知ることから始めましょう。
身体が糖質や脂質をどうエネルギーに変えるかを理解したい方は、身体を動かす3つのエネルギー供給機構も参考にしてください。
誤解4:自分には制限時間内の完走は無理
ウルトラでは、登りやエイドで歩くことは珍しくありません。ただし、「歩けば誰でも関門に間に合う」という意味ではありません。関門の設定、コースの高低差、路面、天候、休憩時間によって必要なペースは変わります。
挑戦を現実的にするには、目標大会の情報から逆算します。
- スタートから各関門までの距離と制限時間を確認する
- 累積標高と路面を含めて、区間ごとの所要時間を予測する
- エイド、着替え、トイレに使う時間も計算に入れる
- 似た条件の練習で、歩きを含む平均ペースを確認する
- トラブルに備えて時間の余裕を持たせる
まず50kmなど比較的短いウルトラから経験を積み、自分に合う距離を探す方法もあります。完走だけを唯一の成功にせず、準備の過程や安全に撤退する判断も経験として捉えましょう。
初めてのウルトラマラソンに向けて準備したいこと
4つの誤解を解いたうえで、初挑戦までに確認したい項目を整理します。
- コース:距離、累積標高、路面、関門、エイド、必携装備を確認する
- ペース:心拍数や主観的運動強度を使い、序盤のオーバーペースを防ぐ
- 補給:本番で使う食べ物と飲み物を長時間練習で試す
- 装備:シューズ、バックパック、ライト、ウェアを本番前に使い込む
- ナビゲーション:ルートをウォッチへ同期し、分岐やコースアウト時の操作を練習する
- 回復:練習量だけでなく、睡眠、食事、休養まで計画する
トレイル大会に向けた練習の組み立て方は、トレイルランニングのトレーニング方法と大会準備もあわせてご覧ください。補給の基本は、運動する人のための食事・栄養ガイドで解説しています。
SUUNTOでウルトラの準備を可視化する
ウルトラに向けた準備では、1回の長い練習だけでなく、数週間のトレーニング負荷、回復、累積標高を継続して見ることが重要です。Suuntoアプリでは、アクティビティの距離、時間、心拍数、上昇・下降などを振り返り、自分が積み上げてきた内容を確認できます。
Suunto Vertical 2は、長時間のGPS記録、オフラインマップ、ルートナビゲーションに対応し、ウルトラトレイルのトレーニングから本番まで活用できます。事前にルートを同期し、ナビゲーション画面、バッテリーモード、補給や装備の運用を練習で確認しておきましょう。
UTMBの特徴や楽しみ方については、UTMBとは?距離・魅力と日本で楽しむ方法も参考にしてください。
まとめ:ウルトラは、準備を積み重ねる競技
ウルトラマラソンは簡単な競技ではありません。しかし、膨大な練習時間、山に住む環境、特別な才能がなければ挑戦できないわけでもありません。自分の生活に合う練習を継続し、大会の条件に合わせて足りない要素を補うことで、スタートラインは現実的な目標になります。
まずは出場したい大会を一つ選び、距離、累積標高、関門、必要装備を確認してみましょう。具体的な条件が分かれば、漠然とした「自分には無理」を、取り組める準備へ変えられます。