ウルトラランニングでは、脚の疲労だけでなく、「まだこんなに距離が残っている」という気持ちの揺れとも向き合うことになります。そんな苦しい局面を、コートニー・ドウォルターはレースを小さな区間に分け、前向きな言葉を繰り返し、好奇心を失わずに進むことで乗り越えてきました。
この記事では、2024年に公開されたインタビューをもとに、長時間のランニングにも応用しやすい彼女の考え方を紹介します。限界を無視して走るためではなく、状況を落ち着いて捉え、次の一歩に集中するためのヒントとして取り入れてみてください。
長いレースを小さく区切る
フィニッシュまでの距離をひとまとまりで考えると、途方もなく感じることがあります。コートニーが実践しているのは、レースを管理できる大きさに分け、次のエイドステーションや峠、補給のタイミングなど、目の前の節目に集中する方法です。
考える範囲を狭めると、「あと何十kmもある」から「次のエイドまで進む」へと課題が具体的になります。計画どおりに進まないときも、次の短い区間でペース、補給、装備を見直せるため、判断を立て直しやすくなります。
短い言葉で意識を整える
苦しいとき、コートニーは「Believe(信じる)」や「Right foot, left foot(右足、左足)」といった短い言葉を繰り返すと話しています。複雑な戦略を考える余裕がない場面でも、覚えやすい言葉なら注意を「いま行う動作」へ戻せます。
「Believe」は、私がよく使うマントラです。頭の中で何度も繰り返していると、どんな状況に見えても、進み続けられると信じること以外が入り込む余地がなくなります。
自分に合う言葉は人それぞれです。「次の木まで」「姿勢を戻す」「呼吸を整える」のように、いま取るべき行動と結びついた短いフレーズを、普段のロングランから試しておくとよいでしょう。
「ペインケーブ」と向き合う
コートニーは、疲労や不快感が強まる心理的な領域を「ペインケーブ(痛みの洞窟)」と表現します。そこに入ったときは、のみを手にして洞窟を少しずつ広げるイメージを持つそうです。苦しさを消そうとするのではなく、感覚を受け止めながら、できることを一つずつ続けるための比喩です。
ただし、通常の疲労と危険な兆候を混同しないことが大切です。鋭い痛み、胸の痛み、強いめまい、意識の混乱、熱中症や重い脱水が疑われる症状がある場合は、我慢して進まず、競技を中止してスタッフや医療機関の判断を仰いでください。
暗い時間にも楽しみを見つける
コートニーの走りを特徴づけるのは、タフさだけではありません。厳しい状況でも笑顔を見せ、色鮮やかな装備を選び、長い一日そのものを楽しもうとする姿勢です。
彼女は、ウルトラレースで日が沈む瞬間には特別な感覚があると語ります。暗い山へ進むのは簡単ではありませんが、夜を越えて地形が再び見えるようになる日の出は、大きなエネルギーを与えてくれます。
つらさだけに意識が向いたら、空の色、風、応援の声、エイドで交わす短い会話など、周囲にある小さな変化へ注意を向けてみましょう。楽しさは疲労をなくすものではありませんが、レースに取り組む意味を思い出すきっかけになります。
トレーニングで実践する方法
メンタルの技術も、レース本番だけで急に使えるものではありません。安全に管理できるトレーニングの中で、次の方法を試してみましょう。
- 区間を決める:ルートを坂、補給地点、時間などで分け、一区間ごとにペースと体調を確認する。
- 自分の言葉を用意する:動作や判断につながる短いフレーズを2〜3個試し、使いやすいものを残す。
- 補給と装備を練習する:空腹、脱水、冷え、ライトの不具合は判断力にも影響するため、本番と近い条件で手順を確認する。
- 振り返りを残す:苦しくなった場面、そのとき有効だった行動、次回変えたい点を記録する。
走行距離を増やすだけでなく、負荷と回復のバランスも確認してください。トレーニング量の見方は、Suuntoでトレーニング負荷を理解し、管理する方法で詳しく紹介しています。
データを次の一歩に役立てる
長距離では、ペース、心拍数、累積上昇、ルート、経過時間などを確認すると、感覚だけに頼らず状況を整理できます。ただし、すべての数値を追い続ける必要はありません。次の区間で必要な情報を絞り、補給やペース調整など具体的な行動につなげることが重要です。
本番前には、スポーツウォッチの画面、ナビゲーション、アラート、バッテリーモードを実際のトレーニングで確認しておきましょう。強度の変化を取り入れたい場合は、Suuntoアプリでインターバルトレーニングを計画する方法も参考になります。
まとめ:遠いゴールではなく、次の一歩へ
コートニー・ドウォルターのアプローチは、苦しさを否定するのではなく、課題を小さく分け、前向きな言葉と好奇心で次の一歩へ意識を戻すことです。区間分け、セルフトーク、補給や装備の手順は、日々のロングランから練習できます。
長時間のランニングを支える機能やモデルを比較したい方は、Suuntoスポーツウォッチ一覧をご覧ください。