トライアスロンのスイムでは、力任せに泳ぐよりも、水の抵抗を抑えながら一定のリズムを保つことが大切です。ところが、いつも同じ泳ぎを繰り返しているだけでは、自分のフォームの癖になかなか気づけません。
そこで取り入れたいのが、動きを一つずつ意識する「スイムドリル」です。この記事では、クロールのフォームと泳ぎの効率を見直す5つのドリルを紹介します。各ドリルの目的、やり方、注意点に加え、25mプールで実践できる練習メニューもまとめました。

トライアスリートにスイムドリルが役立つ理由
スイムドリルとは、ストローク全体のうち一つの動きに焦点を当てて反復する練習です。リカバリー時の腕の運び、入水の位置、キャッチの感覚、身体の回転、キックなどを切り分けることで、普段の泳ぎでは見過ごしやすい課題を確認できます。
トライアスロンでは、スイムの後にバイクとランが続きます。スイムだけで力を使い切らないためにも、余計な力みや水の抵抗を減らし、安定したフォームで泳ぐことが重要です。ただし、ドリルは速さを競う練習ではありません。まずは短い距離で、正しい動きを丁寧に再現しましょう。
これから競技を始める人や、3種目の距離・練習の全体像を確認したい人は、「トライアスロンとは?距離・種目・初心者が知っておきたい基本」もあわせてご覧ください。
フォームを整える5つのスイムドリル

1.フィンガーチップ・ドラッグ|腕を力まず前へ運ぶ
フィンガーチップ・ドラッグは、リカバリー中の指先を水面に軽く触れさせながら前へ運ぶドリルです。肘を適度に高く保ち、肩や腕に余計な力を入れずに入水位置まで運ぶ感覚を身につけます。
- 通常のクロールで泳ぎ始めます。
- 水上に出た腕の指先を、水面に軽く触れさせます。
- 脇を締めすぎず、肘から先を自然に前へ運びます。
- 肩幅の延長線上を目安に、静かに入水します。
注意点:肘を無理に高く上げるのではなく、肩をすくめずに楽に動かせる範囲で行います。指先を強く水に押しつけると腕が止まりやすいため、水面をなぞる程度にしましょう。
2.フィスト・ドリル|前腕で水をとらえる
両手を軽く握って泳ぐことで、手のひらだけに頼らず、手から前腕までを使って水をとらえる感覚を確かめるドリルです。通常のクロールに戻したとき、手のひらにかかる水圧の違いも感じやすくなります。
- 親指を強く握り込まず、両手で軽くこぶしを作ります。
- 腕全体を大きく振り回さず、前腕で水を後方へ送る意識で泳ぎます。
- 25m泳いだら手を開き、通常のクロールで25m泳ぎます。
注意点:こぶしを固く握ると肩や前腕まで緊張します。推進力が落ちるのは自然なので、速さよりも水をとらえる位置と感覚に集中してください。
3.ジッパー・ドリル|身体の回転を整える
リカバリーする腕の親指を、腰から脇へ向かって身体の横に沿わせるドリルです。体幹を軸に左右へ回転する感覚と、腕を身体の近くでリラックスして運ぶ動きを確認できます。
- プルを終えた親指を腰の横へ近づけます。
- 服のジッパーを引き上げるように、親指を体側に沿わせて脇へ運びます。
- 身体を横へ回転させながら肘を前へ送り、腕を伸ばして入水します。
注意点:腕だけを持ち上げず、胸と腰が一緒に回る感覚を意識します。身体を反らせたり、入水する手が頭の中心線を越えたりしないようにしましょう。
4.キャッチアップ・ドリル|ストロークを長く保つ
片方の手が前方でもう片方の手に追いついてから、次のプルを始めるドリルです。前方へ伸びる姿勢を確認し、ストロークが急いで短くなるのを防ぎます。
- 片腕を前に伸ばしたまま、反対の腕で1ストロークします。
- 戻ってきた手が前の手にそろってから、反対側のプルを始めます。
- 頭を上げず、身体を長く保って左右交互に繰り返します。
注意点:前で長く止まりすぎると、腰や脚が沈みやすくなります。実際の泳ぎより意図的に間を作る練習ですが、胸を軽く水へ預け、体勢を崩さないことを優先しましょう。
5.キック・ドリル|姿勢とリズムを安定させる
トライアスロンのスイムでは、キックだけで大きな推進力を得ようとすると脚が疲れ、後のバイクやランに影響することがあります。一方で、脚が沈むと水の抵抗が増えるため、姿勢とリズムを支える効率的なキックは必要です。
- ビート板を軽く持ち、腕を前方へ伸ばします。
- 足首の力を抜き、股関節から小さく脚を動かします。
- 膝は自然に曲がる程度にし、水面を大きくたたかないようにします。
- 一定のリズムを保ち、身体が水平に近い位置にあるか確認します。
注意点:「膝を絶対に曲げない」と考えると脚全体が固くなります。膝下だけで蹴らず、股関節からしなやかに動かすことを意識しましょう。腰や膝に痛みが出る場合は中止してください。
25mプールでできる実践メニュー
5つのドリルを一度に試すなら、次の約950mのメニューが目安です。距離や休憩時間は泳力と体調に合わせて調整してください。
| パート | 内容 | 距離 |
|---|---|---|
| ウォームアップ | 楽なクロール。呼吸と姿勢を整える | 200m |
| ドリル | 5種目×50m。各50mは「ドリル25m+通常のクロール25m」 | 250m |
| メイン | 100m×4本。フォームを崩さず泳げる強度で、各本の間に20〜30秒休憩 | 400m |
| クールダウン | ゆっくり泳いで呼吸を整える | 100m |
ドリルの直後に通常のクロールを入れるのがポイントです。練習した動きを普段のストロークにどうつなげるかを確かめながら泳ぎましょう。
ドリルを効果的に行うポイント
- 一度に直すのは一つ:「肘の位置」「前腕の感覚」など、その日のテーマを決めます。
- 速さより動きを優先する:フォームが崩れたら距離を短くし、休憩を増やします。
- 通常のクロールと交互に行う:ドリルの感覚を実際の泳ぎへ移しやすくなります。
- 定期的に撮影や指導を活用する:自分の感覚と実際の動きが一致しているとは限りません。可能であれば、コーチに見てもらいましょう。
- 安全な環境で行う:泳力に不安がある場合は、監視員や指導者のいるプールで練習してください。パドルやフィンなどの器具は施設のルールを確認して使用します。
プールでフォームを整えた後に海や湖へ移行する場合は、波、流れ、水温、視界など別の要素への準備も必要です。詳しくは「オープンウォータースイミングのコツ8選|初心者向け練習・準備ガイド」も参考にしてください。
Suuntoでスイムの変化を振り返る
フォームの感覚は主観的ですが、距離、ペース、ラップなどの記録を残すと、同じ強度で泳いだときの変化を振り返りやすくなります。対応するSuuntoスポーツウォッチでプールスイムを記録し、ドリルを行った日、意識したポイント、泳いだ後の感覚をメモしておくのもよいでしょう。
ただし、ウォッチが認識する距離やストロークなどは、泳法、ターン、停止、ドリルの動きによって実際と異なる場合があります。数値だけでフォームの良し悪しを判断せず、一定期間の傾向と自分の感覚を合わせて確認してください。利用できるスイム指標や操作方法はモデルによって異なるため、使用するウォッチのユーザーガイドも確認しましょう。
スイムだけでなく、バイクとランを含めて記録するための機能は、「トライアスロン用ウォッチの選び方|スイム・バイク・ランを1台で記録するには」で詳しく紹介しています。
まとめ
フィンガーチップ・ドラッグ、フィスト、ジッパー、キャッチアップ、キックの5つは、それぞれ異なる動きに焦点を当てるドリルです。すべてを完璧にこなす必要はありません。自分の課題に合うものを選び、短い距離から通常のクロールへつなげることが大切です。
ドリルで動きを確認し、通常のクロールで再現し、記録と感覚を振り返る。この流れを続けることで、トライアスロンの3種目を見据えた、無理の少ないスイムフォームを育てていきましょう。Suuntoのスポーツウォッチなら、日々のスイムとバイク、ランを一つのトレーニング履歴として振り返れます。