ランニング中のペースや心拍数は確認していても、「同じペースなのに、なぜ今日はきついのか」「坂道や向かい風では、どの数値を目安に走ればよいのか」と迷うことがあります。そんなときに役立つ指標のひとつが、走る動作による出力をワット(W)で示すランニングパワーです。
シューズに装着するフットポッド「Stryd」を対応するSuuntoウォッチと組み合わせると、ランニングパワーに加えて、接地時間、上下動、脚のばね剛性などを運動中に確認できます。本記事では、それぞれの数値が何を示すのか、SuuntoPlusのStrydスポーツアプリを設定する方法、データをフォーム改善や強度管理に活用するときの注意点を解説します。

ランニングパワーとは
ランニングパワーは、走行中の出力をワット(W)で示す指標です。ペースが「どれくらい速く進んでいるか」を表すのに対し、パワーは、その走りを生み出すためにどの程度の出力を使っているかを捉える目安になります。
平地ではペースとパワーが似た動きをすることがありますが、登り、下り、向かい風、路面の違いなどによって関係は変わります。たとえば、登りではペースが遅くなっても、身体が出しているパワーは高くなることがあります。起伏のあるコースでペースだけを守ろうとすると、必要以上に負荷を上げてしまう場合があるため、パワーは強度管理を補う情報として活用できます。
ただし、異なる機器や計算方式の値を単純に比較するのではなく、同じセンサー、同じ装着方法、似た条件で記録した自分のデータを継続的に見ることが基本です。
パワーと心拍数・ペースの違い
| 指標 | 主に示すもの | 活用しやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ペース | 移動速度 | 平坦路、レースの目標タイム管理 | 勾配や風で同じペースの負荷が変わる |
| 心拍数 | 身体内部の反応 | 有酸素運動の強度、体調の変化 | 気温、脱水、疲労などの影響を受け、反応に遅れがある |
| ランニングパワー | 走るための外的な出力 | 坂道、変化走、一定出力のペーシング | 機器や算出方法、環境条件によって値が変わる |
パワーと心拍数は、どちらか一方を選ぶものではありません。パワーで外的な出力を確認し、心拍数や呼吸、主観的運動強度で身体の反応を見ると、その日の状態をより立体的に把握できます。トレーニング全体の疲労を振り返るときは「トレーニング負荷とは?フィットネス・疲労・フォームで見る負荷管理の基本」も参考にしてください。
Strydで確認できる主な指標

SuuntoPlusのStrydスポーツアプリでは、対応するウォッチとStrydを接続し、運動中に複数のランニング指標を確認できます。表示内容や保存されるデータは、ウォッチ、Strydの世代、ソフトウェアのバージョンによって異なる場合があります。
ランニングパワー
走行中の出力をワットで示します。坂道や変化走で、ペースとは異なる角度から強度を管理するために使えます。まずはイージーランやテンポ走など、目的が明確な練習で自分の通常値を把握しましょう。
接地時間(Ground Contact Time)
一歩ごとに足が地面へ接している時間です。一般に走行速度やピッチが変わると接地時間も変化します。短ければ常によいわけではなく、ペース、勾配、疲労、路面と合わせて判断します。
上下動(Vertical Oscillation)
走行中に身体が上下へ動く量です。上下動が大きいと前進以外の動きが増えている可能性がありますが、身長、走り方、ペースによって適切な範囲は異なります。無理に数値を下げようとしてフォームを固めないことが大切です。
脚のばね剛性(Leg Spring Stiffness)
着地時に脚へ蓄えられた弾性エネルギーを、次の一歩へ利用する特性を表す指標です。筋力や腱の特性だけでなく、ペース、路面、勾配、疲労などにも影響されます。
衝撃負荷率(Impact Loading Rate)
着地時の力がどの程度の速さで加わるかを示す指標です。原文ではけがとの関連が強く示されていますが、この数値だけでけがを予測することはできません。痛み、過去のけが、練習量、回復状況なども含めて考え、違和感が続く場合は運動を中止して専門家へ相談してください。
フォーム指標は「良い数値」を追うより変化を見る
ランニングフォームの指標には、すべてのランナーに共通する唯一の正解はありません。接地時間を短くする、上下動を小さくするなど、特定の数値だけを急に変えようとすると、自然な動きを崩す可能性があります。
次のように、条件をそろえた自分のデータを比較するのがおすすめです。
- 同じコース・同程度のペースで、数週間の変化を見る
- 前半と後半を比較し、疲労による変化を確認する
- 平地と登り、舗装路とトレイルを分けて考える
- 数値と一緒に、呼吸、脚の重さ、痛み、主観的運動強度を記録する
- 変更する要素は一度にひとつにする
たとえば同じペースで走った後半に接地時間が長くなり、上下動も増え、体感的にもフォームが崩れている場合は、疲労により動きを維持できなくなった可能性があります。1回の記録で結論を出さず、複数回の傾向を確認しましょう。
Strydのデータをトレーニングへ取り入れる方法

一定パワーで走り、坂道のオーバーペースを防ぐ
起伏のあるコースでは、同じペースを守るより、目標とするパワーの範囲を意識すると強度を安定させやすくなります。登りで数値が急上昇したらペースを落とし、下りでは足元とフォームを優先します。パワーだけで安全なペースが決まるわけではないため、心拍数や体感も併用してください。
テンポ走やインターバルで出力をそろえる
短い高強度区間では、心拍数が上がるまでに時間がかかります。パワーは出力変化へ素早く反応するため、各本の強度をそろえる目安になります。最初から高い数値を追わず、後半もフォームを維持できる範囲で設定しましょう。ワークアウトの作り方は「インターバルトレーニングのやり方|Suuntoアプリでワークアウトを作成する方法」で紹介しています。
ドリルや補強の前後を比較する
スキップ、軽いバウンディング、カーフレイズ、片脚スクワットなどは、姿勢、接地、脚の弾性を意識する補助トレーニングになります。ただし、プライオメトリクスは筋肉や腱への負荷が高いため、十分な基礎筋力と走歴がない段階で回数を増やさないでください。
ドリルを行った直後だけでなく、数週間後に同じ条件で走ったときのパワー、接地時間、上下動と体感を比較します。数値の改善よりも、痛みなく安定して走れることを優先しましょう。
StrydをSuuntoで使う設定方法
Stryd公式の2026年1月更新情報では、Suunto Run、Suunto Raceシリーズ、Suunto Verticalシリーズなど、複数のSuuntoウォッチとの連携が案内されています。対応状況は更新されるため、使用前にStrydの互換性情報と、SuuntoアプリのSuuntoPlus StoreでStrydが表示されるかを確認してください。
- Suuntoアプリでペアリング済みウォッチの画面を開く
- 「SuuntoPlus Store」を開く
- スポーツアプリから「Stryd」を探し、ライブラリとウォッチへ追加する
- ウォッチを同期する
- ウォッチでランニングなどのスポーツモードを選ぶ
- 記録開始前のオプションから「SuuntoPlus」→「Stryd」を有効にする
- Strydが検出されるまで待ってから記録を開始する
- 運動中に画面を切り替え、Strydのデータを確認する
メニュー名や同時に使用できるSuuntoPlusスポーツアプリの数は、ウォッチとソフトウェアによって異なる場合があります。運動前にウォッチ、Suuntoアプリ、Strydのファームウェアを最新状態へ更新しておくと安心です。
SuuntoアプリとStrydアプリの同期
運動後のデータをStryd PowerCenterで分析する場合は、SuuntoアカウントとStrydアカウントを接続します。
- Strydアプリの「Settings(設定)」を開く
- 「Connected Accounts(接続済みアカウント)」を選ぶ
- 「Import from Suunto」を選び、Suuntoアカウントとの接続を許可する
接続後に記録した、パワーデータを含むランニングはStryd側へ同期できます。過去の記録が自動転送されない場合や、Suuntoの記録ファイルに含まれない高度なStryd指標を補完したい場合は、Strydポッド本体に保存されたデータをStrydアプリへ取り込む「Offline Sync」が必要になることがあります。分析前にデータがそろっているか確認してください。
Strydが接続できない場合の確認ポイント
- Strydを軽く動かし、センサーを起動する
- SuuntoPlus StoreからStrydがウォッチへ追加されているか確認する
- 運動開始前にStrydスポーツアプリを選択しているか確認する
- Strydアプリ、Zwift、別のウォッチなどがBluetooth接続していないか確認する
- スマートフォン上でStrydアプリを完全に終了してから再接続する
- ウォッチ、Suuntoアプリ、Strydを更新し、再同期する
- 別のStrydを拾った場合は、スポーツアプリを選び直す
StrydのBluetooth接続は、ほかの端末やアプリが先に使用しているとウォッチから検出できない場合があります。近くのスマートフォンやトレーニングアプリとの接続状況も確認してください。
まとめ|パワーとフォーム指標を同じ条件で比較しよう
ランニングパワーは、ペースや心拍数とは異なる角度から走行強度を確認できる指標です。StrydとSuuntoを組み合わせれば、パワーだけでなく、接地時間、上下動、脚のばね剛性などを運動中に確認し、走り終えた後も分析できます。
大切なのは、理想とされる数値をそのまま追うことではありません。同じセンサーと似た条件で自分の変化を見ながら、体感、心拍数、疲労、痛みの有無と合わせて判断しましょう。対応するSuunto RunやSuunto Raceシリーズなどを使えば、日々のランニングデータとStrydの指標を手元で確認し、目的に合わせたトレーニングへつなげられます。