海を泳ぎ、マウンテンバイクで急坂を登り、最後はトレイルを走る——XTERRA(エクステラ)は、自然の地形を舞台に行われるオフロード・トライアスロンです。舗装路中心のトライアスロンとは異なり、路面や天候の変化に対応する技術と判断力が問われます。
2018年、カナダ出身のSuuntoアスリートでプロXTERRA選手のカーステン・マドセンは、ハワイ・マウイ島で開催される世界選手権への3度目の挑戦を前にしていました。過去2回はいずれもDNF(途中棄権)。それでも彼は、失敗を分析し、登坂力、補給、テーパリングを見直して再びスタートラインへ向かいます。本記事では、当時のインタビューをもとに、XTERRAの特徴とマドセンのレース戦略を紹介します。

XTERRAとは?
XTERRAは、スイム、マウンテンバイク(MTB)、トレイルランニングを連続して行うオフロード・トライアスロンです。湖や海でのスイムに続き、舗装されていないコースをMTBで走り、最後に自然の起伏を生かしたトレイルを走ります。
| 比較項目 | XTERRA | 舗装路中心のトライアスロン |
|---|---|---|
| バイク | MTBで未舗装路や急登・急下降を走る | ロードバイクで舗装路を走る |
| ラン | 起伏や路面変化のあるトレイル | 舗装路が中心 |
| 求められる力 | 持久力に加え、バイク操作、登坂力、路面判断 | 一定ペースを維持する持久力と空力効率 |
| レース展開 | 天候や路面状況による変化が大きい | 比較的ペースを計画しやすい |
なかでもマウイ島で行われた当時のXTERRA世界選手権は、波のあるスイム、暑さのなかでの急なバイクコース、さらに起伏のあるランが続く過酷な舞台でした。2018年当時、マドセンは「一回のストローク、一回のペダリング、一歩一歩を自分で勝ち取るようなレース」と表現しています。
2度のDNFから世界選手権へ再挑戦
マドセンはロード・トライアスロンとクロスカントリーMTBを経験した後、オフロード・トライアスロンへ転向しました。2014年にプロとなり、2018年のインタビュー時点ではXTERRAの主要大会で4勝、カナダ国内選手権で3勝。2016年と2018年にはパンアメリカンツアーの総合3位に入っています。
しかし、マウイ島での世界選手権は別格でした。2016年と2017年に出場したものの、結果はいずれもDNF。原因は同じではなかったからこそ、彼は単に練習量を増やすのではなく、コースの要求に合うよう準備を変えました。再挑戦で重要だったのは、過去の結果を失敗のまま終わらせず、「次に変えるべき要素」へ分解することでした。
急登に備えるパワーウェイトレシオ
マウイ島のバイクコースに備え、マドセンが重視したのがパワーウェイトレシオです。これは、体重1kgあたりにどれだけのパワーを出せるかを示す考え方。急な登りでは、絶対的な出力だけでなく、自分の体重をどれだけ効率よく上へ運べるかが影響します。
彼は体重を落としながらバイクの出力を高め、さらに急登を想定したトレーニングに取り組みました。ポイントは、ただ軽くなることではありません。健康や回復を損なわず、必要な出力を維持・向上させることです。体重調整を行う場合は短期間で無理に減らさず、競技特性と体調を踏まえて専門家の助言を受けることも大切です。
オフロード・トライアスロンの補給戦略
2018年当時、マドセンはバイク用ボトルとジェルを組み合わせ、エイドステーションの手前でジェルを摂って水で流し込む計画を立てていました。同程度の時間のロード・トライアスロンより、XTERRAではジェルをひとつ多く用意するのが彼の基本だったといいます。
ただし、補給計画を最も左右するのは天候でした。暑さが厳しければ、発汗量や水分・電解質の必要量も変わります。原文のカロリー数や個数はマドセン個人の例であり、そのまま誰にでも当てはまる基準ではありません。レース本番で初めて試すのではなく、長時間の練習で飲みやすさ、胃腸との相性、携帯方法まで確認しておく必要があります。
レース前は「やりすぎない」

レースに向けて練習量を落とし、疲労を抜く期間をテーパリングと呼びます。マドセンは本番の約12日前から「少ないほうがよい」という側に立ち、トレーニングをするたびに「これはレースの助けになるのか、それとも妨げになるのか」と自分に問いかけていました。
世界選手権へ出場する一般選手にも、レース直前にフルコースを試走しないよう助言しています。会場入りが遅くなった場合、焦ってすべてを確認しようとすれば、積み重ねてきた練習の成果を疲労で失いかねません。レース週は水分補給、普段どおりの食事、ストレスを抑えること、休息を優先する——シンプルですが、長距離移動を伴う大会ほど重要な考え方です。
レース前の判断基準:不安を消すための練習ではなく、本番で力を出すための行動になっているかを考えましょう。
体調不良から立て直す力
このシーズン、マドセンにとって最大の後退は、ITUクロス・トライアスロン世界選手権後の細菌感染症でした。好調に仕上げたにもかかわらず、7月のほぼ1か月間、思うように動けない状態が続いたと振り返っています。
それでも、「健康に戻れば、自分の力を証明する機会はまだある」と考えました。前向きな視点に加え、両親や家族の支えが難しい時期を乗り越える助けになったといいます。計画どおりに進まないとき、焦って失った練習を取り戻すのではなく、まず回復し、次の機会へ目標を組み直すことも競技力の一部です。
マドセンは2018年を、それまでで最も多くレースに出場し、最も遠くまで旅したシーズンと表現しました。そのなかで掲げた目標は、「強度を持ってレースをすること」と「レースの喜びを見つけること」。順位だけではなく、自分がコントロールできる行動へ意識を戻すことが、安定したシーズンにつながりました。
まとめ:変化に対応する準備がレースを支える
XTERRAは、スイム、MTB、トレイルランニングの能力を単純に足し合わせるだけでは攻略できません。急登に合った出力、天候に応じた補給、レース直前に休む判断、そして予期せぬ体調不良から計画を立て直す力が必要です。マドセンの再挑戦が示すのは、過去の失敗を隠すのではなく、次の準備を具体化する材料として使う姿勢でした。
当時マドセンが使用していたのはSuunto 9です。現在は、スイム、サイクリング、ランニングなど複数種目の記録とトレーニング負荷の振り返りに対応するSuuntoのスポーツウォッチが、レースまでの積み重ねを一つの流れとして確認する助けになります。機能や対応するデータ項目はモデルやソフトウェアのバージョンによって異なるため、使用前に各製品ページやユーザーガイドをご確認ください。