山を楽しむ人が、山を守るためにできること。キリアン・ジョルネの環境保全への挑戦

SuuntoRunSeptember 30 2020

山を走る。登る。歩く。

私たちは自然の中で過ごすことで、日常では得られない景色や感覚に出会うことができます。

しかし、そのフィールドである山岳環境そのものが、少しずつ変化しています。

氷河の後退、気候変動、生息環境の変化、生物多様性の損失。

世界中の山を長年走り続けてきたキリアン・ジョルネ(Kilian Jornet)は、その変化を自分自身の目で見てきたアスリートのひとりです。

そして彼は、山を楽しむだけでなく、自分を育ててくれた自然に何かを返したいと考えるようになりました。

その思いから生まれたのが、山岳環境を守るための「Kilian Jornet Foundation」です。

今回はキリアンの取り組みを通して、山を楽しむ私たちが自然とどう向き合えるのかを考えてみましょう。

山とともに育ったキリアン・ジョルネ

キリアン・ジョルネにとって、山は単なる競技の舞台ではありません。

彼はスペイン・ピレネー山脈の山小屋で育ち、幼い頃から山を歩き、走り、スキーをしながら成長しました。

その後、トレイルランニングやスキーマウンテニアリングで世界トップクラスのアスリートとなり、世界各地の名峰で記録に挑戦してきました。

しかし、本人にとって山にいる理由は、記録を作るためだけではありません。

山そのものが、自分にとってもっとも自然でいられる場所。

だからこそ、その環境が変わっていく姿を無視することができなかったのです。

山岳環境保全活動に取り組むキリアン・ジョルネ

© Matti Bernitz

長年山にいるからこそ見えた環境の変化

キリアンは、長年にわたって山を登り、氷河を横断してきました。

その中で目の当たりにしてきたのが、気候変動による自然環境の変化です。

氷河の後退、気温の上昇、生息環境の変化。

同じ山へ何度も訪れるからこそ、「以前とは違う」という変化が見えてきます。

次の世代も山で遊び、健全な地球で暮らせるようにするために、私たち一人ひとりに役割があります。

自然環境の問題というと、あまりに大きなテーマで、自分ひとりが何かをしても変わらないように感じるかもしれません。

しかしキリアンが考えたのは、だからこそ自分にできることから始めるということでした。

Kilian Jornet Foundationとは?

そこでキリアンが立ち上げたのが、Kilian Jornet Foundationです。

財団が目指しているのは、山岳環境を未来へ残していくこと。

そのために、大きく3つの方向から活動しています。

  • 研究:山岳環境の変化を科学的に理解する
  • 直接的なアクション:環境保全につながる具体的な活動を支援する
  • 教育:自然環境について知り、行動する人を増やす

キリアン自身も、子どもの頃から自然を守ることの重要性を教わり、自分にできることを続けてきたといいます。

しかし個人だけでできることには限界があります。

そこで研究者や団体、環境保全に取り組む人々を支援し、より大きな変化につなげようと考えたのです。

最初のテーマは「氷河の後退」

Kilian Jornet Foundationが最初のプロジェクトとして選んだテーマが、氷河の後退でした。

高山帯を頻繁に訪れる人にとって、氷河の変化は気候変動を実感しやすい現象のひとつです。

そこで財団は、スイス・チューリッヒ大学を拠点とするWorld Glacier Monitoring Service(WGMS)と協力することになりました。

WGMSは長年にわたり、世界各地の氷河の変動について標準化された観測データを蓄積しています。

財団からの支援は、研究者が使用する測定機器や研究活動、学校向けの教育プログラムなどに活用されました。

雪山と野生動物が暮らす山岳生態系

© Kilian Jornet Foundation

山を守るというと、ゴミ拾いや植樹のような直接的な活動をイメージしがちです。

しかし、まず何が起きているのかをデータによって理解することも、環境を守るための重要な一歩です。

自然を守るために、小さな行動から始める

気候変動や生物多様性の問題は、非常に大きなテーマです。

一人の登山者やランナーが、すぐに状況を大きく変えられるわけではありません。

しかし、財団が重視している考え方のひとつが、小さな行動の積み重ねです。

例えばアウトドアを楽しむ私たちにも、日常の中でできることがあります。

  • 登山道から必要以上に外れず、植生への負担を減らす
  • 自分が持ち込んだゴミは必ず持ち帰る
  • 野生動物との距離を保つ
  • 公共交通や乗り合わせなど、移動方法について考える
  • 地域のルールや保全活動について知る
  • 環境保全に取り組む団体や活動を支援する

どれも大きなアクションではないかもしれません。

それでも、アウトドアを楽しむ人が増えれば増えるほど、一人ひとりの行動が自然環境に与える影響も大きくなります。

アウトドアを楽しむ人だからこそできること

自然の中で遊ぶことと、自然を守ることは別々のものではありません。

トレイルランニングでも登山でも、私たちは自然環境があるからこそ、そのアクティビティを楽しめます。

だからこそ、まずは自分が遊んでいるフィールドに興味を持つことが大切です。

どんな植物が生えているのか。

どんな動物が暮らしているのか。

なぜこの場所では登山道から外れてはいけないのか。

地域ではどんな環境保全活動が行われているのか。

自然について知ることで、同じ山を歩いていても見えるものが変わってきます。

自然の中を走ることをきっかけに環境保全について考える、

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