GPSウォッチで距離、時間、ペースを確認して、「今日は速かった」「今月はたくさん走った」で終わっていませんか。記録した数字は、それだけでも達成感を与えてくれます。しかし、トレーニングを改善するには、数字を身体にどんな負荷がかかったかという視点につなげることが重要です。
特にトレイルランニングでは、同じペースでも登り、下り、路面、標高によって負荷が変わります。本記事では、GPSウォッチの基本データからトレーニングの意味を読み取り、次の練習へ生かす方法を解説します。
距離やペースの先にある「身体への負荷」を読み取ると、記録を次のトレーニングへ生かせます。写真:zooom.at/bergermarkus.com
GPSウォッチの「記録」と「分析」は何が違う?
原文に登場するウルトラランニングコーチ、ジェイソン・クープは、多くのランナーがウォッチから得られる情報を十分に活用していないと指摘しています。
距離、時間、ペース、上昇量、心拍数は「何が起きたか」を示す記録です。そこから、運動がどれくらいきつかったか、どの能力に刺激が入ったか、回復にどの程度時間が必要かを考えることで、初めてトレーニングの判断材料になります。
一つの数字だけで良し悪しを決めない。
ペース、心拍数、高低差、主観的なきつさ、体調を組み合わせて見ることで、その日のトレーニングをより正確に理解できます。
まず確認したい5つの基本データ
| データ | 分かること | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 時間・距離 | 運動量の基本 | 急激な増加が続いていないか確認する |
| ペース | 移動速度とペース配分 | 坂、路面、風、停止時間の影響を受ける |
| 心拍数 | 身体内部の運動強度 | 暑さ、疲労、睡眠、計測状態でも変化する |
| 上昇・下降 | コースの垂直方向の負荷 | 距離だけでは表れない負荷として見る |
| 主観的運動強度 | 本人が感じたきつさ | 数値と感覚のずれも大切な情報になる |
心拍数から「同じペースでも違う負荷」を読み取る
ペースは身体の外側で起きた結果、心拍数は身体がどれだけ働いたかを見る手掛かりです。例えば同じ5kmを同じペースで走っても、暑い日、疲労がある日、登りが多いコースでは心拍数が高くなることがあります。
心拍ゾーンを使うと、低強度の持久走、高強度のインターバルなど、トレーニングの目的に合った強度だったかを振り返りやすくなります。ただし、手首心拍は装着状態や寒さ、腕の動きなどの影響を受ける場合があります。高い精度が必要なトレーニングでは、対応する胸部心拍センサーも選択肢です。
糖質や脂質など、運動強度によって使われるエネルギーがどう変化するかは、身体を動かす3つのエネルギー供給機構で解説しています。
トレイルランニングではペースだけを比べない
舗装路のランニングでは、同じコースや平坦な路面ならペースを比較しやすい一方、トレイルでは路面、斜度、標高、天候によって速度が大きく変わります。そのため、1kmあたりのペースが遅いだけで「調子が悪かった」と判断すると、実際の負荷を見誤ります。
登りでは速度が落ちても、心肺への負荷は高くなることがあります。写真:zooom.at/bergermarkus.com
トレイルの振り返りでは、次の組み合わせで見てみましょう。
- 時間と距離に加えて、累積上昇・下降を確認する
- 登り区間の心拍数と主観的なきつさを見る
- 同じコース、似た天候、近い装備条件で比較する
- ペースが遅くても、予定した低強度を維持できたか確認する
登りと下りの負荷を分けて考える
クープは、登りや平坦区間で生じる心肺への負荷と、下りで大きくなりやすい筋骨格系への負荷を分けて考えることを提案しています。
登りでは心拍数や呼吸の変化から有酸素能力への刺激を捉えやすくなります。一方、下りは心拍数が低くても、着地衝撃やブレーキ動作によって脚に大きな負担がかかる場合があります。翌日の大腿部の筋肉痛や動きにくさも含めて記録すると、下りへの適応を判断しやすくなります。
登りのペースが改善しているかだけでなく、同じ程度の下降量を走った後の筋肉痛や回復時間が変化しているかも確認しましょう。
1回の記録から、トレーニング負荷と回復へ
一つのアクティビティを分析したら、次は数週間の流れで見ます。Suuntoアプリでは、トレーニングストレススコア(TSS)などを使って、運動時間と強度を組み合わせた負荷を確認できます。
TSSは異なる種類のトレーニングを共通の尺度で振り返るための目安ですが、疲労や故障を完全に予測する数字ではありません。睡眠、体調、筋肉痛、仕事や生活上のストレスも一緒に考えます。詳しい見方は、SuuntoアプリのTSSとは?トレーニング負荷の見方をご覧ください。
データを次の練習へ生かす5分間の振り返り
- 目的を確認:今日は低強度、テンポ走、登りの強化など、何を狙ったか
- 基本データを見る:時間、距離、ペース、心拍数、上昇・下降を確認
- 感覚を追加:きつさ、脚の状態、補給、天候を短くメモ
- 目的との差を見る:予定より強すぎなかったか、必要な刺激が入ったか
- 次の行動を決める:予定どおり進める、負荷を下げる、回復日を増やす
毎回すべての項目を細かく分析する必要はありません。目的に関係する2〜3項目を選び、同じ方法で継続して比較するほうが変化を捉えやすくなります。
目的に合うSUUNTOウォッチで記録する
長時間のGPS記録、オフラインマップ、トレーニング分析に対応するSuunto Vertical 2
- Suunto Run:軽量で、日々のランニングやインターバルトレーニングを記録したい人に
- Suunto Race 2:レースや体系的なトレーニングに取り組み、見やすい画面でデータを確認したい人に
- Suunto Vertical 2:登山や長距離トレイルで、長時間記録とオフラインマップを重視する人に
モデル名の違いより大切なのは、目的に必要なデータを継続して記録し、Suuntoアプリで同じ視点から振り返ることです。
まとめ:数字を集めるだけでなく、次の判断につなげよう
GPSウォッチのデータは、速かったか遅かったかを判定するだけのものではありません。距離、ペース、心拍数、上昇・下降、主観的なきつさを組み合わせることで、身体にどんな負荷がかかり、次に何をすべきかを考えられます。
まずは次のアクティビティで、「目的」「心拍数」「主観的なきつさ」の3つを振り返ってみましょう。シンプルな習慣を続けることが、記録をトレーニングの改善へ変える第一歩です。